46 / 68
44 市街地の様子
しおりを挟む
厨房に行ったウェイターが申し訳なさそうな顔で戻ってきました。
「料理長は本店に行って今は居ません。もしよろしければ来週にはこちらに戻りますので、またご来店ください」
私は名前を告げて連絡を貰おうかとも思いましたが、ここで本名を名乗るわけにもいきません。
そうなると私がオサシミやワサビ、ソイソースを知っているというのも拙いような気がして、まるで初めてのような顔で料理の説明を受けました。
私と副所長は慣れているのでオサシミを喜んでいただきましたが、王都で暮らす騎士たちは、生の魚が苦手なようで、お付き合い程度で止めてしまいました。
みんなお腹がいっぱいになったようで、今日は早めに帰って明日からの活動に備えることになりましたが、私は今日という一日が勿体なくて帰る気になれません。
「良ければ王宮の近くまで行ってみますか?」
副所長が気を使って声を掛けてくれました。
ジョアンとエスメラルダも頷いてくれたので、その言葉に甘えることにしました。
護衛の騎士が三名ついてきてくれます。
ノース国の繫華街はとても賑わっていて、人通りも多いので迷子にならないように、ジョアンとエスメラルダの手を引いて歩きました。
〈ローゼリア、ちょっとこの通りを覗くから、アレクに送ってみてくれる?〉
エスメラルダが声を掛けてきました。
〈どうしたの?何か気になるの?〉
〈明日からは私だけで情報を送るでしょ?ローゼリアが送るのとどのくらい精度が違うか把握しておきたいから
〈わかったわ〉
私はアレクに話しかけてテストの件を話しました。
〈ではエスメラルダだけで送ってみるね〉
〈わかった。ああ、見えるね。輪郭だけならはっきり見える〉
〈では私を通して送ってみるね〉
〈ああ、これは凄いな。鮮明に見えるよ。その建物の外壁は煉瓦なんだね。エスメラルダだけでは素材までは分からなかったけど〉
〈まあ建物の配置や道が分かれば問題ないものね。明日からはエスメラルダが送るからアレクも頑張ってね〉
テストは成功と言っていいでしょう。
「どう?疲れる?」
エスメラルダに聞きました。
「うん」
「頑張れる?」
「うん」
エスメラルダは笑って頷きました。
私の手を離してその場にしゃがんでいたジョアンが副所長に話しかけました。
「これ」
「ん?何かな?ああ、これは煉瓦の欠片だね。どこから落ちてきたのかな。この壁かな」
「揺れた?」
「そうだね、最近地震でもあったのかな」
そう言うと副所長は近くでおしゃべりをしていた女性に話しかけました。
急に話しかけられた女性たちは少し驚いていましたが、丁寧に答えています。
「ジョアン、去年大きな地震があった時も、相当揺れたらしいけど、最近小さい揺れが何度かあったようだね。この煉瓦は角が丸くなっていないから、最近落ちたのだと判断できる」
「亀裂?」
「そうかもしれない。余震かな、それとも前震?」
「水温と水位は?」
「早急に調べさせよう」
副所長とジョアンは先に宿舎に戻ることになりました。
護衛騎士が一名付き添って、私たちは残った二人の騎士に守られながら王宮周辺まで行きました。
ノース国の王宮の周辺は公園になっていました。
王宮の周りは人口の川で囲まれていて、東西南北にそれぞれ架かる橋を通らなくてはいけない作りです。
護衛で来てくれたアンナお姉さまが言いました。
「これはなかなか守りの堅い城ですね。正門以外の橋は狭いので攻めにくいです。こういう作りにしたのは何度か城攻めにあったのかもしれません」
「皇后陛下に聞けば分かるかも知れないですね。聞いてみましょうか?」
「いいえ、歴史書を調べれば分かることですから。今回は目的だけに絞りましょう」
「そうですね」
「大丈夫、エヴァン様はご無事ですよ」
私は力強く頷きました。
皆さんが私を気遣ってくれるのは嬉しいのですが、足手まといにはなりたくありません。
もっとしっかりしなくちゃと改めて思いました。
城を囲む川の流れを見ていると、急に脳内に声が響きました。
〈ローゼリア、アランは確保した。明日兄上たちが宿舎に行く手筈だから、処遇を話し合ってくれ〉
〈わかりました〉
私はもしかしたらエヴァン様がいるかもしれない王宮を見ながら、彼の無事を祈りました。
ふっと風が吹き、川沿いに植えられた柳の枝を揺らします。
その木陰には密かな愛を育んでいるのでしょうか、人目を忍ぶように語り合うカップルの姿がありました。
長く伸びた柳の枝に隠れていたのに、いたずらな風が二人の中を邪魔したようです。
女性の肩に手を置いた男性の横顔が、夕日に照らされてはっきりと見えました。
「エヴァン様!」
私は口に手を当てて後ずさってしまいました。
アンナお姉さまが後ろから支えてくれます。
「声を出してはいけません」
アンナお姉さまが私の耳元で言いました。
私の心臓がバクバクと音を立てているのが分かります。
あれがエヴァン様だとすると女性は誰なのでしょう?
まさか…マリア王女?
エスメラルダが私の手を放して柳の木の方に歩いて行きました。
まるで少女が木の下に咲く野花を見ているような自然さで、カップルに近寄っています。
〈そこで待っていて〉
エスメラルダからの言葉に私は頷くしかありませんでした。
アンナお姉さまがずっと私を抱きしめていてくれます。
二人はエスメラルダに気づかず、見つめ合ってずっと会話をしています。
エスメラルダは立ち上がるとわざとカップルの視界に入りました。
私は駆け寄って本当にエヴァン様なのか確かめたい衝動を押さえきれませんが、アンナお姉さまは手を緩めてはくれません。
二人と目を合わせたエスメラルダが、今しがた摘んだ野花を女性に渡してこちらに向かって駆けてきました。
「違う」
エスメラルダがそう言って私の手を握ります。
「エヴァン様じゃないの?ねえ!どうなの?」
「違う。ローゼリア、エヴァンじゃない」
「そう…ごめんなさい」
こんな小さな子供に当たり散らす私はダメな大人です。
「帰ろう」
エスメラルダは泣きそうな私の頬に手を伸ばして、優しく言いました。
「料理長は本店に行って今は居ません。もしよろしければ来週にはこちらに戻りますので、またご来店ください」
私は名前を告げて連絡を貰おうかとも思いましたが、ここで本名を名乗るわけにもいきません。
そうなると私がオサシミやワサビ、ソイソースを知っているというのも拙いような気がして、まるで初めてのような顔で料理の説明を受けました。
私と副所長は慣れているのでオサシミを喜んでいただきましたが、王都で暮らす騎士たちは、生の魚が苦手なようで、お付き合い程度で止めてしまいました。
みんなお腹がいっぱいになったようで、今日は早めに帰って明日からの活動に備えることになりましたが、私は今日という一日が勿体なくて帰る気になれません。
「良ければ王宮の近くまで行ってみますか?」
副所長が気を使って声を掛けてくれました。
ジョアンとエスメラルダも頷いてくれたので、その言葉に甘えることにしました。
護衛の騎士が三名ついてきてくれます。
ノース国の繫華街はとても賑わっていて、人通りも多いので迷子にならないように、ジョアンとエスメラルダの手を引いて歩きました。
〈ローゼリア、ちょっとこの通りを覗くから、アレクに送ってみてくれる?〉
エスメラルダが声を掛けてきました。
〈どうしたの?何か気になるの?〉
〈明日からは私だけで情報を送るでしょ?ローゼリアが送るのとどのくらい精度が違うか把握しておきたいから
〈わかったわ〉
私はアレクに話しかけてテストの件を話しました。
〈ではエスメラルダだけで送ってみるね〉
〈わかった。ああ、見えるね。輪郭だけならはっきり見える〉
〈では私を通して送ってみるね〉
〈ああ、これは凄いな。鮮明に見えるよ。その建物の外壁は煉瓦なんだね。エスメラルダだけでは素材までは分からなかったけど〉
〈まあ建物の配置や道が分かれば問題ないものね。明日からはエスメラルダが送るからアレクも頑張ってね〉
テストは成功と言っていいでしょう。
「どう?疲れる?」
エスメラルダに聞きました。
「うん」
「頑張れる?」
「うん」
エスメラルダは笑って頷きました。
私の手を離してその場にしゃがんでいたジョアンが副所長に話しかけました。
「これ」
「ん?何かな?ああ、これは煉瓦の欠片だね。どこから落ちてきたのかな。この壁かな」
「揺れた?」
「そうだね、最近地震でもあったのかな」
そう言うと副所長は近くでおしゃべりをしていた女性に話しかけました。
急に話しかけられた女性たちは少し驚いていましたが、丁寧に答えています。
「ジョアン、去年大きな地震があった時も、相当揺れたらしいけど、最近小さい揺れが何度かあったようだね。この煉瓦は角が丸くなっていないから、最近落ちたのだと判断できる」
「亀裂?」
「そうかもしれない。余震かな、それとも前震?」
「水温と水位は?」
「早急に調べさせよう」
副所長とジョアンは先に宿舎に戻ることになりました。
護衛騎士が一名付き添って、私たちは残った二人の騎士に守られながら王宮周辺まで行きました。
ノース国の王宮の周辺は公園になっていました。
王宮の周りは人口の川で囲まれていて、東西南北にそれぞれ架かる橋を通らなくてはいけない作りです。
護衛で来てくれたアンナお姉さまが言いました。
「これはなかなか守りの堅い城ですね。正門以外の橋は狭いので攻めにくいです。こういう作りにしたのは何度か城攻めにあったのかもしれません」
「皇后陛下に聞けば分かるかも知れないですね。聞いてみましょうか?」
「いいえ、歴史書を調べれば分かることですから。今回は目的だけに絞りましょう」
「そうですね」
「大丈夫、エヴァン様はご無事ですよ」
私は力強く頷きました。
皆さんが私を気遣ってくれるのは嬉しいのですが、足手まといにはなりたくありません。
もっとしっかりしなくちゃと改めて思いました。
城を囲む川の流れを見ていると、急に脳内に声が響きました。
〈ローゼリア、アランは確保した。明日兄上たちが宿舎に行く手筈だから、処遇を話し合ってくれ〉
〈わかりました〉
私はもしかしたらエヴァン様がいるかもしれない王宮を見ながら、彼の無事を祈りました。
ふっと風が吹き、川沿いに植えられた柳の枝を揺らします。
その木陰には密かな愛を育んでいるのでしょうか、人目を忍ぶように語り合うカップルの姿がありました。
長く伸びた柳の枝に隠れていたのに、いたずらな風が二人の中を邪魔したようです。
女性の肩に手を置いた男性の横顔が、夕日に照らされてはっきりと見えました。
「エヴァン様!」
私は口に手を当てて後ずさってしまいました。
アンナお姉さまが後ろから支えてくれます。
「声を出してはいけません」
アンナお姉さまが私の耳元で言いました。
私の心臓がバクバクと音を立てているのが分かります。
あれがエヴァン様だとすると女性は誰なのでしょう?
まさか…マリア王女?
エスメラルダが私の手を放して柳の木の方に歩いて行きました。
まるで少女が木の下に咲く野花を見ているような自然さで、カップルに近寄っています。
〈そこで待っていて〉
エスメラルダからの言葉に私は頷くしかありませんでした。
アンナお姉さまがずっと私を抱きしめていてくれます。
二人はエスメラルダに気づかず、見つめ合ってずっと会話をしています。
エスメラルダは立ち上がるとわざとカップルの視界に入りました。
私は駆け寄って本当にエヴァン様なのか確かめたい衝動を押さえきれませんが、アンナお姉さまは手を緩めてはくれません。
二人と目を合わせたエスメラルダが、今しがた摘んだ野花を女性に渡してこちらに向かって駆けてきました。
「違う」
エスメラルダがそう言って私の手を握ります。
「エヴァン様じゃないの?ねえ!どうなの?」
「違う。ローゼリア、エヴァンじゃない」
「そう…ごめんなさい」
こんな小さな子供に当たり散らす私はダメな大人です。
「帰ろう」
エスメラルダは泣きそうな私の頬に手を伸ばして、優しく言いました。
44
あなたにおすすめの小説
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
婚約破棄された私は、号泣しながらケーキを食べた~限界に達したので、これからは自分の幸せのために生きることにしました~
キョウキョウ
恋愛
幼い頃から辛くて苦しい妃教育に耐えてきたオリヴィア。厳しい授業と課題に、何度も心が折れそうになった。特に辛かったのは、王妃にふさわしい体型維持のために食事制限を命じられたこと。
とても頑張った。お腹いっぱいに食べたいのを我慢して、必死で痩せて、体型を整えて。でも、その努力は無駄になった。
婚約相手のマルク王子から、無慈悲に告げられた別れの言葉。唐突に、婚約を破棄すると言われたオリヴィア。
アイリーンという令嬢をイジメたという、いわれのない罪で責められて限界に達した。もう無理。これ以上は耐えられない。
そしてオリヴィアは、会場のテーブルに置いてあったデザートのケーキを手づかみで食べた。食べながら泣いた。空腹の辛さから解放された気持ちよさと、ケーキの美味しさに涙が出たのだった。
※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開や設定は、ほぼ変わりません。加筆修正して、完成版として連載します。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
【完結】すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ
エレインたちの父親 シルベス・オルターナ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる