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45 もっと強くならないと
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帰宅するとジョアンが副所長と一緒に居間にいました。
「お帰り、どうでしたか?奇麗なお城でしょう?」
「そうですね。あそこにエヴァン様がいるかもしれないのですよね」
「ローゼリア」
ジョアンがソファーに座り込んだ私を抱きしめました。
肩が少し震えています。
そうでした、辛いのは私だけでは無かったのです。
確かに私は婚約者を失いかけていますが、彼は最愛の兄を失いかけているのです。
先ほどのエスメラルダへの態度といい、ジョアンへの配慮の無さといい、私は自分が情けなくて悲しくなってきました。
「ごめんね、ジョアン、エスメラルダもホントにごめん」
二人を抱き寄せて泣きながら謝りました。
子供たちは私を責めることもせず、じっと抱きしめ返してくれました。
私たちは明日に備えて早く眠ることにしました。
翌朝一番でルーカス王配とカーティス皇太子が宿舎に来ました。
ワンド地質調査研究所はイーリス国に所属しているので、お二人が激励のために訪問するというのは自然な事です。
お二人が居間に落ち着くと、すぐに遠隔会議が始まりました。
〈ダメだな。のらりくらりと躱しやがって話にならん〉
皇太子殿下の言葉を私が伝えます。
〈エヴァンは?父上が気にしている〉
〈あと一日待ってちょうだい〉
皇后陛下の声が聞こえ、私はほぼ同時通訳に集中しました。
〈監視が厳しくて叔母上にさえ会いに行けない〉
サミュエル殿下の声が入りました。
〈ワイドルにいるマリアの思い人は押さえたよ。どうする?〉
〈こちらに来させてマリアを揺さぶる餌にしよう。絶対に逃げられないよう手配するよ〉
〈分かった、それはルーカス兄上に任せよう。できればその時に軍の配備もできないかな〉
〈ワイドルの軍隊は既に国境に集結させてある。それとレジスタンスのリーダーと接触でたと今朝報告があった〉
〈いいね、兄上たちは動けないだろうからジョアンとローゼリアで対応するよ。王立図書館で会えるように計らってくれる?〉
ルーカス王配が私の顔を見て微笑みました。
〈分かった。それはこちらで動こう。ノースの国王が息を止める前に決着したいな〉
〈明日から一週間でそこの市街地図の詳細版を作るよ。攻め込むルートが確定したら、物資の供給を開始してほしい。ところでそのリーダーってのは信用できるのかな?〉
〈会ってみないと分からんが、私たちが会うわけにもいかないだろ?ジョアンに頼るしかないな〉
〈ローゼリアも同席するから、僕も観察して見極めるよ〉
〈ほんとお前たちって便利だよな。お前たちが揃っていたらどこの国でも落とせるんじゃないか?〉
〈それは無理だろうね〉
〈なぜ?凄い力だぜ?〉
〈やる気の問題〉
〈ははは…乾いた笑いしか出んな〉
〈では予定通り兄上たちには牽制を続けて貰って、反乱軍の蜂起が決まったら国境まで撤退してね。なるべく戦力を分散させたいから、国境付近で小競り合いも予定意通りで頼みま〉
〈了解だ。あとはエヴァンの消息だけが懸念材料だな〉
〈叔母上、よろしくお願いします〉
〈任せなさい。レジスタンス側への資金提供は私の私財から出すから心配しないで。もともと彼らの血税だもの、返すだけよ。私の侍女頭を動かすから〉
〈わかりました。よろしくお願いします〉
その後はそれぞれがやることの確認などを話し、会議は修了しました。
〈ローゼリア、図書館に行こう。皇太子殿下の口利きがあれば牽制になる〉
「なるほど、では行きましょう。エスメラルダも頑張って」
「うん」
子供たちは通常運転のテンションで立ち上がりました。
私もこのくらい落ち着かなくては!
副所長は調査員とエスメラルダを連れて市街地に向かいました。
ジョアンの話によると、あと数回の地震で崩壊する恐れのある建物も多いのだとか。
副所長はそちらも併せて調査すると言っていました。
私たちはカーティス皇太子とルーカス王配に同行してもらって王宮図書館に入りました。
他国とはいえ二人の王族が来たのですから、図書館内は大混乱でした。
司書長と王宮侍従長が並んで亜一冊してくれます。
「この者たちは我が国が誇る地質調査研究所の次世代を担う優秀な人材だ。こちらはジョアン・シラー子爵令息、こちらの女性はガヴァネスのマリー・ヤング女史だ。二人は調査内容の精査のためにこちらの図書館を使用する。便宜を図ってもらいたい」
「承知しました。何なりとお申し付けくださいませ。専用の部屋をご用意いたしましょう」
私は慌てて言いました。
「それには及びません。様々な図書を閲覧する必要がありますので、むしろ一般席の方が都合が良いのです」
「そうですか、わかりました。いつでもお声掛けください」
司書長は納得していましたが、侍従長は冷静な目で私たちを見ていました。
きっと私たちの身元確認をするのでしょうね。
王宮に戻られるお二人を見送り、私たちは早速閲覧を開始しました。
私はジョアンが選んだ本をドレックの顔を意識しながらゆっくりと眺めるのがお役目です。
ジョアンは私の横で、本を眺めているふりをしながら深い思考に入っていきました。
〈ローゼリア、文字が見えにくいから目で追わないで。漠然と全体を眺める感じで頼む〉
ドレックの声が聞こえました。
〈こんな感じ?〉
〈そうそう。いい感じだね〉
私は一頁ずつ景色のように眺め、ドレックからの指示でページを捲っていきます。
彼の記憶領域に限界はないようですが、私の集中力には限界があります。
本当はミセスサリバンを頼りたいところですが、そちらの通信回路はエスメラルダが使用中です。
〈ローゼリア、休憩しよう。昼食でもとってくれば?〉
〈そうね、少し目が痛いわ〉
私とジョアンは司書長に声を掛けて、王宮職員の食堂に案内して貰いました。
さすがに二人だけにはしてもらえず、司書長と侍従長が一緒です。
「お帰り、どうでしたか?奇麗なお城でしょう?」
「そうですね。あそこにエヴァン様がいるかもしれないのですよね」
「ローゼリア」
ジョアンがソファーに座り込んだ私を抱きしめました。
肩が少し震えています。
そうでした、辛いのは私だけでは無かったのです。
確かに私は婚約者を失いかけていますが、彼は最愛の兄を失いかけているのです。
先ほどのエスメラルダへの態度といい、ジョアンへの配慮の無さといい、私は自分が情けなくて悲しくなってきました。
「ごめんね、ジョアン、エスメラルダもホントにごめん」
二人を抱き寄せて泣きながら謝りました。
子供たちは私を責めることもせず、じっと抱きしめ返してくれました。
私たちは明日に備えて早く眠ることにしました。
翌朝一番でルーカス王配とカーティス皇太子が宿舎に来ました。
ワンド地質調査研究所はイーリス国に所属しているので、お二人が激励のために訪問するというのは自然な事です。
お二人が居間に落ち着くと、すぐに遠隔会議が始まりました。
〈ダメだな。のらりくらりと躱しやがって話にならん〉
皇太子殿下の言葉を私が伝えます。
〈エヴァンは?父上が気にしている〉
〈あと一日待ってちょうだい〉
皇后陛下の声が聞こえ、私はほぼ同時通訳に集中しました。
〈監視が厳しくて叔母上にさえ会いに行けない〉
サミュエル殿下の声が入りました。
〈ワイドルにいるマリアの思い人は押さえたよ。どうする?〉
〈こちらに来させてマリアを揺さぶる餌にしよう。絶対に逃げられないよう手配するよ〉
〈分かった、それはルーカス兄上に任せよう。できればその時に軍の配備もできないかな〉
〈ワイドルの軍隊は既に国境に集結させてある。それとレジスタンスのリーダーと接触でたと今朝報告があった〉
〈いいね、兄上たちは動けないだろうからジョアンとローゼリアで対応するよ。王立図書館で会えるように計らってくれる?〉
ルーカス王配が私の顔を見て微笑みました。
〈分かった。それはこちらで動こう。ノースの国王が息を止める前に決着したいな〉
〈明日から一週間でそこの市街地図の詳細版を作るよ。攻め込むルートが確定したら、物資の供給を開始してほしい。ところでそのリーダーってのは信用できるのかな?〉
〈会ってみないと分からんが、私たちが会うわけにもいかないだろ?ジョアンに頼るしかないな〉
〈ローゼリアも同席するから、僕も観察して見極めるよ〉
〈ほんとお前たちって便利だよな。お前たちが揃っていたらどこの国でも落とせるんじゃないか?〉
〈それは無理だろうね〉
〈なぜ?凄い力だぜ?〉
〈やる気の問題〉
〈ははは…乾いた笑いしか出んな〉
〈では予定通り兄上たちには牽制を続けて貰って、反乱軍の蜂起が決まったら国境まで撤退してね。なるべく戦力を分散させたいから、国境付近で小競り合いも予定意通りで頼みま〉
〈了解だ。あとはエヴァンの消息だけが懸念材料だな〉
〈叔母上、よろしくお願いします〉
〈任せなさい。レジスタンス側への資金提供は私の私財から出すから心配しないで。もともと彼らの血税だもの、返すだけよ。私の侍女頭を動かすから〉
〈わかりました。よろしくお願いします〉
その後はそれぞれがやることの確認などを話し、会議は修了しました。
〈ローゼリア、図書館に行こう。皇太子殿下の口利きがあれば牽制になる〉
「なるほど、では行きましょう。エスメラルダも頑張って」
「うん」
子供たちは通常運転のテンションで立ち上がりました。
私もこのくらい落ち着かなくては!
副所長は調査員とエスメラルダを連れて市街地に向かいました。
ジョアンの話によると、あと数回の地震で崩壊する恐れのある建物も多いのだとか。
副所長はそちらも併せて調査すると言っていました。
私たちはカーティス皇太子とルーカス王配に同行してもらって王宮図書館に入りました。
他国とはいえ二人の王族が来たのですから、図書館内は大混乱でした。
司書長と王宮侍従長が並んで亜一冊してくれます。
「この者たちは我が国が誇る地質調査研究所の次世代を担う優秀な人材だ。こちらはジョアン・シラー子爵令息、こちらの女性はガヴァネスのマリー・ヤング女史だ。二人は調査内容の精査のためにこちらの図書館を使用する。便宜を図ってもらいたい」
「承知しました。何なりとお申し付けくださいませ。専用の部屋をご用意いたしましょう」
私は慌てて言いました。
「それには及びません。様々な図書を閲覧する必要がありますので、むしろ一般席の方が都合が良いのです」
「そうですか、わかりました。いつでもお声掛けください」
司書長は納得していましたが、侍従長は冷静な目で私たちを見ていました。
きっと私たちの身元確認をするのでしょうね。
王宮に戻られるお二人を見送り、私たちは早速閲覧を開始しました。
私はジョアンが選んだ本をドレックの顔を意識しながらゆっくりと眺めるのがお役目です。
ジョアンは私の横で、本を眺めているふりをしながら深い思考に入っていきました。
〈ローゼリア、文字が見えにくいから目で追わないで。漠然と全体を眺める感じで頼む〉
ドレックの声が聞こえました。
〈こんな感じ?〉
〈そうそう。いい感じだね〉
私は一頁ずつ景色のように眺め、ドレックからの指示でページを捲っていきます。
彼の記憶領域に限界はないようですが、私の集中力には限界があります。
本当はミセスサリバンを頼りたいところですが、そちらの通信回路はエスメラルダが使用中です。
〈ローゼリア、休憩しよう。昼食でもとってくれば?〉
〈そうね、少し目が痛いわ〉
私とジョアンは司書長に声を掛けて、王宮職員の食堂に案内して貰いました。
さすがに二人だけにはしてもらえず、司書長と侍従長が一緒です。
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