513 / 526
第19話:ノヴァルナ包囲網
#21
しおりを挟むサンザーが敵にも聞こえるように、全周波数帯通信で名乗りを上げたのは無論、敵のBSIを一機でも多く自分に引き付けるためである。自分を買いかぶるわけではないが、ウォーダ家BSI部隊総監を討ち取れば、どのような一兵卒であっても一夜で、自分の植民星系を得る事も可能となる。そして敵が一機でも多く自分に喰いつけば、味方の負担が多少なりとも軽くなると考えたのだ。
すると案の定、アザン・グラン軍のBSIユニットや、ASGULが『レイメイFS』に群がって来る。
フォーメーションはいつも通りだが、九機にまで減っていた“ハンター中隊”の親衛隊仕様『シデン・カイXS』が、超電磁ライフルを手に、『レイメイFS』をぐるりと取り囲んだ。
「敵将カーナル・サンザー=フォレスタ! 討ち取って名を上げるぞ!!」
「おお!」
あらゆる方向から突っ込んで来る、アザン・グラン軍の無数のBSIユニットとASGUL。これを迎撃するウォーダ軍のBSI部隊。飛び交う超電磁ライフルの銃弾、煌めくポジトロンパイクの刃。これらに視線をひとわたり回し、サンザーはニヤリと肉食獣的な笑みを浮かべる。理屈は抜きにして、武人の血が滾る光景だからである。
しかしアザン・グラン軍のパイロットが、サンザーの元へ辿り着くのは至難の技だった。サンザーの周囲には、群がって来る敵機を待ち受ける、ウォーダ軍のBSI部隊がいたからだ。
「ここから先へは、通さんぞ!!」
親衛隊仕様『シデン・カイXS』に乗る、とあるウォーダ軍BSI中隊指揮官の一人が、自分の中隊に命令を下す。
「全機、撃てぇ!!」
六機ずつ三段に並んで壁を作った、十八機の『シデン・カイ』が超電磁ライフルを一斉発射する。サンザーの『レイメイFS』を直接狙おうとしていた、アザン・グラン軍の『ハヤテ』が三機と、攻撃艇形態にあるASGULの『ヴェーガル』が六機、瞬く間に砕け散った。
だがアザン・グラン軍BSI部隊は止まらない。数を頼んで一気に、サンザーごと飲み込んでしまうつもりに違いない。次弾を放ったところで、中隊長機から新たな命令が出る。
「全機、近接戦闘!」
バックパックのハードポイントからポジトロンパイクを掴み取り、身構える指揮官機。突破しようとする敵の『ハヤテ』が目前だ。相手もポジトロンパイクを手にしている。「行くぞ!」と声を発し、ウォーダ軍中隊長は機体を加速させた。瞬時に間合いが詰まって、両機はポジトロンパイクを打ち合わせる。
バチバチと真空の宇宙でも音が聞こえて来そうなほど、大量の火花が飛び散る両機のポジトロンパイク。その上下左右でも『シデン・カイ』と『ハヤテ』が、激しい近接戦闘を繰り返す。これをすり抜け、アザン・グラン軍ASGULの『ヴェーガル』部隊が、『レイメイFS』を目指した。
そしてこれを阻止するために立ち塞がったのが、“ハンター中隊”九機の『シデン・カイXS』だ。矢継ぎ早に超電磁ライフルを撃ち放ち、正確無比な狙いで次々と『ヴェーガル』を撃破してゆく。それでも『ヴェーガル』の数は多く、何機かが“ハンター中隊”の狙撃を免れたものが、『レイメイFS』に攻撃を仕掛けた。
攻撃艇形態の『ヴェーガル』三機が、別々の方向から『レイメイFS』に接近、ブラストキャノンを連射して来る。さらにその後方に五機の『ヴェーガル』。二重包囲を企んでいるようだ。
だがそもそもブラストキャノンのビームが、『レイメイFS』を捉えきれない。サンザーの巧みな操縦が、ロックオンしているはずの『レイメイFS』に、ビームを命中させないでいるのだ。
「くそっ! なんで当たらない!?」
焦りの声を発する『ヴェーガル』のパイロット。ビームを躱しながら宇宙空間で急停止した『レイメイFS』は、急速な斜め縦回転で機体を翻し、やり過ごした相手に、右腕一本で構えた超電磁ライフルを放つ。
「うあああっ!!」
航過後の僅か数秒の直線飛行が仇となり、サンザーの銃撃を背後から受けたパイロットは、爆散する自分の『ヴェーガル』のコクピット内で、断末魔の叫び声を上げた。
だが狙撃のため一瞬、動きを止めたのは『レイメイFS』も同じである。この隙を逃さず、残る七機の『ヴェーガル』は一斉に間合いを詰めて来る。全機が機体を半回転させて、近接戦闘モードの人型に変形。ポジトロンランスを手にして、『レイメイFS』に突きかかって行った。
ただカーナル・サンザー=フォレスタも、このような敵の動きが、読めぬ男ではない。いや、むしろ誘っていたと言ってもよかった。右手のライフルを頭上に軽く放り上げた次の瞬間、大きく雄叫びを発する。
「おおおおおおおおおお!!!!」
発声と同時に左手の大型十文字ポジトロンランスを、大きく振り回した。その旋回は絶妙なタイミングで繰り出され、間合いを詰めて来ていた、七機の『ヴェーガル』のうち、あるものは鋭い穂先で、あるものは太い鑓の柄で、六機を一撃で仕留める。そして残る一機は鑓の石突き側で、機体を突き砕いた。
▶#22につづく
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
獅子の末裔
卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。
和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。
前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる