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第19話:ノヴァルナ包囲網
#22
しおりを挟むASGULの『ヴェーガル』が次々と撃破されているところに、今度は五機の親衛隊仕様『ハヤテGC』が向かって来る。元は六機の一個小隊であったものが、一機を喪失した結果の五機だ。その失った一機はサンザーの直掩に付いている、“ハンター中隊”の『シデン・カイXS』と、相討ちとなっていた。
五機の『ハヤテGC』は素早く散開し、『レイメイFS』を取り囲む。五機とも上級者向けのポジトロンランスを装備しており、合わせてその動きを見たサンザーは、五機が手練れ揃いだと感じ取った。
「鑓勝負か、面白い!」
サンザーはそう言い、『レイメイFS』が握る大型十文字ポジトロンランスを、ピタリと構える。ポジトロンランスという得物は、人型形態に変形した際のASGULの武器でもあったが、こちらは長さが短く、斬撃力・刺突力ともに大きくはない。
「かかれ!」
リーダーと思しき男が指示を出し、五機の『ハヤテGC』が思い思いの方向から突撃して来る。こういった場合、サンザーは敵反応を目視する事無く、重力子ジェネレーターの出力表示だけを見詰める。BSHO乗りならではのサイバーリンク深度の深さで、『レイメイFS』の近接警戒センサーが送って来る、全方位からの敵情報を直接脳に取り込んでいるからだ。いわゆる“心眼によって敵との間合いを計る”、というやつだ。
一番真っ先に仕掛けて来る、左後ろからの敵機とのタイミングを呼吸で合わせ、相手のポジトロンランスの穂先が、バックパックを貫く寸前の紙一重の差で、機体を素早く右旋回させてやり過ごす。
すると最初の一機の刺突を躱した『レイメイFS』に、右斜め下から二機同時に『ハヤテGC』が襲い掛かった。一機は刺突、もう一機は鑓の柄による打撃狙いのようだ。
警告音がヘルメット内に響く中、サンザーは即座に操縦桿とフットペダルを操作して、機体を横滑りさせながら小さく鑓を旋回させる。
二機からの刺突と打撃をひとまとめに弾き返す『レイメイFS』。だがその二機を乗り越えるようにして、新たな『ハヤテGC』が突撃して来た。初めの三機は牽制であり、この二機が本命だったらしい。
しかしカーナル・サンザー=フォレスタという武将。かつてノヴァルナのBSIパイロットの教官を、務めただけの事はあった。サンザーもこの二機が攻撃の本命だと見抜いており、ポジトロンランスの高速連続突きをカウンターで放つ。頭部から胸部を細切れにされた二機が、爆発しながら『レイメイFS』の左右を通り過ぎた。
そしてサンザーは当然、いつまでも一ヵ所に留まらない。二機の『ハヤテGC』が爆発した破片を巻き散らした時には、『レイメイFS』はすでに位置を変え、最初の最初の敵機が突き出したポジトロンランスを、十文字型の穂先で絡め取っていた。そのまま敵のポジトロンランスを奪い取るサンザー。鑓を失った『ハヤテ』は即座にクァンタムブレードを起動、サンザーの機体に斬りかかろうとする。
だが相手の刃より速く、『レイメイFS』は蹴りを繰り出した。爪先が敵機の手首にヒットし、斬撃の軌道を変える。そして流れるような動きで、絡め取っていた敵のポジトロンランスを、掴み取って投擲した。その一撃は敵BSIユニットの右寄りの胸元から、バックパックまで刺し貫いて火球に変える。
さらにこの時『レイメイFS』は、早くも機体に捻り込みを掛け、残る二機の敵の鑓を回避中であった。息を合わせつつも僅かな時間差を置いた、敵の連携攻撃によって、胸の装甲版に斜めの傷を負う。
瞬時に振り返り、第二撃の刺突を放って来る二機の『ハヤテ』。サンザーは『レイメイFS』の持つ鑓を、高速回転させて打ち払った。敵の二機はそこから、二手に分かれようとする。
しかしこれを読んでいるサンザー。操縦桿を一気に倒し、フットペダルを踏み込んで、機体を後退させるとポジトロンランスを半回転、真後ろへ突き込んだ。その穂先は、サンザーの背後に回り込もうとしていた敵機の進路上に到達。停止が間に合わずに、『ハヤテ』は自ら穂先に突き刺さっていった。
すると前方の最後の一機は急加速。上から振りかぶって、鑓の柄で打撃を放って来る。これを左の前腕部で防ぐ『レイメイFS』。BSHOの機体強度をあてにした、あまり褒められた防御手段ではないが、敵パイロットも技量が高く、ここは致し方ない。ゴン!…と機体が揺れ、左腕前腕部のダメージ警報が出る。後ろに突き刺した『ハヤテ』から鑓を引き抜き、反撃に出ようとするサンザー。
ところがここで敵の新手が現れる。攻撃艇形態で急速接近して来る。二機のASGUL『ヴェーガル』だ。速度を落とさず真っ直ぐ迫って来てビームを連射する。微かに苦笑いを浮かべて、機体を大きく翻すサンザー。ポジトロンランスを使ったレベルの高い戦いに、水を差された感があったからだ。
ただ現状は、戦いを楽しんでいられる状況ではない事も確かだ。敵もここを突破するため、必死なのである。間合いを取ったサンザーは、超電磁ライフルを構え、二機のASGULに向けてトリガーを引いたのだった………
▶#23につづく
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