銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第19話:ノヴァルナ包囲網

#21

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 サンザーが敵にも聞こえるように、全周波数帯通信で名乗りを上げたのは無論、敵のBSIを一機でも多く自分に引き付けるためである。自分を買いかぶるわけではないが、ウォーダ家BSI部隊総監を討ち取れば、どのような一兵卒であっても一夜で、自分の植民星系を得る事も可能となる。そして敵が一機でも多く自分に喰いつけば、味方の負担が多少なりとも軽くなると考えたのだ。

 すると案の定、アザン・グラン軍のBSIユニットや、ASGULが『レイメイFS』に群がって来る。
 フォーメーションはいつも通りだが、九機にまで減っていた“ハンター中隊”の親衛隊仕様『シデン・カイXS』が、超電磁ライフルを手に、『レイメイFS』をぐるりと取り囲んだ。

「敵将カーナル・サンザー=フォレスタ! 討ち取って名を上げるぞ!!」

「おお!」

 あらゆる方向から突っ込んで来る、アザン・グラン軍の無数のBSIユニットとASGUL。これを迎撃するウォーダ軍のBSI部隊。飛び交う超電磁ライフルの銃弾、煌めくポジトロンパイクの刃。これらに視線をひとわたり回し、サンザーはニヤリと肉食獣的な笑みを浮かべる。理屈は抜きにして、武人の血が滾る光景だからである。

 しかしアザン・グラン軍のパイロットが、サンザーの元へ辿り着くのは至難の技だった。サンザーの周囲には、群がって来る敵機を待ち受ける、ウォーダ軍のBSI部隊がいたからだ。

「ここから先へは、通さんぞ!!」

 親衛隊仕様『シデン・カイXS』に乗る、とあるウォーダ軍BSI中隊指揮官の一人が、自分の中隊に命令を下す。

「全機、撃てぇ!!」

 六機ずつ三段に並んで壁を作った、十八機の『シデン・カイ』が超電磁ライフルを一斉発射する。サンザーの『レイメイFS』を直接狙おうとしていた、アザン・グラン軍の『ハヤテ』が三機と、攻撃艇形態にあるASGULの『ヴェーガル』が六機、瞬く間に砕け散った。
 だがアザン・グラン軍BSI部隊は止まらない。数を頼んで一気に、サンザーごと飲み込んでしまうつもりに違いない。次弾を放ったところで、中隊長機から新たな命令が出る。

「全機、近接戦闘!」

 バックパックのハードポイントからポジトロンパイクを掴み取り、身構える指揮官機。突破しようとする敵の『ハヤテ』が目前だ。相手もポジトロンパイクを手にしている。「行くぞ!」と声を発し、ウォーダ軍中隊長は機体を加速させた。瞬時に間合いが詰まって、両機はポジトロンパイクを打ち合わせる。
 
 バチバチと真空の宇宙でも音が聞こえて来そうなほど、大量の火花が飛び散る両機のポジトロンパイク。その上下左右でも『シデン・カイ』と『ハヤテ』が、激しい近接戦闘を繰り返す。これをすり抜け、アザン・グラン軍ASGULの『ヴェーガル』部隊が、『レイメイFS』を目指した。

 そしてこれを阻止するために立ち塞がったのが、“ハンター中隊”九機の『シデン・カイXS』だ。矢継ぎ早に超電磁ライフルを撃ち放ち、正確無比な狙いで次々と『ヴェーガル』を撃破してゆく。それでも『ヴェーガル』の数は多く、何機かが“ハンター中隊”の狙撃を免れたものが、『レイメイFS』に攻撃を仕掛けた。

 攻撃艇形態の『ヴェーガル』三機が、別々の方向から『レイメイFS』に接近、ブラストキャノンを連射して来る。さらにその後方に五機の『ヴェーガル』。二重包囲を企んでいるようだ。
 だがそもそもブラストキャノンのビームが、『レイメイFS』を捉えきれない。サンザーの巧みな操縦が、ロックオンしているはずの『レイメイFS』に、ビームを命中させないでいるのだ。

「くそっ! なんで当たらない!?」

 焦りの声を発する『ヴェーガル』のパイロット。ビームを躱しながら宇宙空間で急停止した『レイメイFS』は、急速な斜め縦回転で機体を翻し、やり過ごした相手に、右腕一本で構えた超電磁ライフルを放つ。

「うあああっ!!」

 航過後の僅か数秒の直線飛行が仇となり、サンザーの銃撃を背後から受けたパイロットは、爆散する自分の『ヴェーガル』のコクピット内で、断末魔の叫び声を上げた。
 だが狙撃のため一瞬、動きを止めたのは『レイメイFS』も同じである。この隙を逃さず、残る七機の『ヴェーガル』は一斉に間合いを詰めて来る。全機が機体を半回転させて、近接戦闘モードの人型に変形。ポジトロンランスを手にして、『レイメイFS』に突きかかって行った。

 ただカーナル・サンザー=フォレスタも、このような敵の動きが、読めぬ男ではない。いや、むしろ誘っていたと言ってもよかった。右手のライフルを頭上に軽く放り上げた次の瞬間、大きく雄叫びを発する。

「おおおおおおおおおお!!!!」

 発声と同時に左手の大型十文字ポジトロンランスを、大きく振り回した。その旋回は絶妙なタイミングで繰り出され、間合いを詰めて来ていた、七機の『ヴェーガル』のうち、あるものは鋭い穂先で、あるものは太い鑓の柄で、六機を一撃で仕留める。そして残る一機は鑓の石突き側で、機体を突き砕いた。




▶#22につづく
 
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