銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第20話:薪の上に臥して苦き胆を嘗める

#06

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 オウ・ルミル宙域セークモートン星系第六惑星の、赤黒い第三衛星を背後に、幾つもの閃光が走る。ウーサルマ星系まで後退を開始したばかりの、ウォーダ軍第6と第33艦隊の合同部隊に、例の艦をモノトーンに塗り分けた、所属不明艦隊が横合いから射撃を行い始めた閃光である。

「敵に捕捉されました。第29及び第30宙雷戦隊、被害甚大です!」

 後退の指揮を執るスーゲット=アーチに、艦隊参謀が苦衷の表情で報告する。第29と第30の二個宙雷戦隊は、第6艦隊の主力である宇宙空母群の右舷側を守る位置にあり、所属不明艦隊からの攻撃に対する盾となっているのだ。だが彼等を救援する事は出来ない。後方からはさらに大戦力のアザン・グラン軍が迫っていて、そちらを振り切る事を、優先する必要があるからだ。

 すると艦隊参謀に続いて、通信参謀がアーチに報告する。

「第29、30宙雷戦隊より連絡。“ワレニ構ワズ、撤退ヲ続ケラレタシ”との事であります!」

 これを聞いて、第33艦隊旗艦の宇宙戦艦『ゼーローグ』の艦橋で、戦術状況ホログラムの前に立つアーチは拳を握り締めた。後退中の部隊は、敵のBSI部隊は引き離したものの、本格攻勢に出たアザン・グラン軍の攻撃で、大半の艦が損傷を受けている。
 そして損傷の大きな艦は、まだ無事な仲間を逃がすため、速度を落として反転。その場で留まって敵の足止めを始めていた。無論それが自分達にもたらす結果を、理解した上での決意である。

 一方、カーナル・サンザー=フォレスタ率いる第6艦隊BSI部隊は、ヴェルージ=ウォーダ率いる第35艦隊BSI部隊が合流。第五衛星の地表に降り立って、敵のBSI部隊を迎え撃っていた。第五衛星は地表の凹凸が激しい岩石衛星となっており、これを遮蔽物にして少しでも有利な状況を作ろうとしている。

 灰白色の砂を重力子で巻き上げながら、真空の第五衛星地表を高速ホバリングして来る、三機の所属不明BSIユニット。その進行方向正面には十文字ポジトロンランスを右手に、サンザーの乗る『レイメイFS』が立っていた。
 三機の敵BSIは、先頭の一機が超電磁ライフルを放ち、後続する二機が薙刀型の“ポジトロングレイブ”を下段に構えて、『レイメイFS』へ向かう。

 軽く左へ右へ機体をスライドさせ、サンザーは敵の銃弾を紙一重で躱した。達人ならではの見切り技は、ここまでの戦いの疲労が蓄積していても、衰える事を知らない。
 
 とその直後、『レイメイFS』の背後の岩陰に潜んでいた、ヴェルージ=ウォーダの『シデン・カイXSーTS』が身を乗り出し、超電磁ライフルを一連射する。
 先頭の一機が直撃を喰らって爆発。そして後続していた二機の内、一機が左大腿部を撃ち抜かれ、もんどりうって転倒した。

 だが残る一機は健在だ。前を行く僚機の転倒で、大量に舞い上がった砂煙を突っ切り、間合いが詰まった『レイメイFS』に、“ポジトロングレイブ”で上段から
斬りかかって来る。
 しかしサンザーは慌てない。右手一本で『レイメイFS』が握る、大型十文字ポジトロンランスをザクリとひと突き、そのまま脇へ投げ捨てる。その間に大腿部を撃ち抜かれていたBSIが、重力子ホバリングと衛星の重力の小ささを利用して、強引に機体を立て直し、攻撃を続行しようとする、だがサンザーはそちらには眼もくれず、降下して来た新手の所属不明機の一団に、機体を向けた。その背後で機体を立て直したばかりの敵が、サンザーを援護するヴェルージから、とどめの銃撃を喰らって爆散する。

 そして胸部から上を失った敵のBSIユニットが、衛星の地表に崩れ落ちた時にはもう、サンザーの『レイメイFS』は新手の敵の中へ突入していた。

「おおおおおおお!!」

 敵集団の真ん中で、大型十文字ポジトロンランスの端を握って大きく旋回。サンザーの方から突っ込んで来るとは思わなかったのか、反応の遅れた二機が、腹部を切り裂かれて動かなくなる。
 しかもサンザーの鑓から逃れて、距離を置こうとした敵機には、荒れ地の岩陰に潜んだ、ヴェルージやサンザー配下のBSI部隊から次々と狙撃されて、破壊されていった。

 しかしやはり敵の数は圧倒的である。まるで雨が降るように、新手の敵BSIが大量に降下して来はじめる。今度はアーザイル軍の『イカズチ』や、アザン・グラン軍の『ハヤテ』の姿も多く見られる事から、ウォーダ軍の第35艦隊や、第6・第33合同艦隊と戦っていたBSI部隊も、駆けつけて来たのだろう。彼等の中には敵将サンザーを討ち取って、巨大な名声と莫大な報償を求める者も多いに違いない。

「これはまた凄い人気だな。誰か有名スターでも、来ておるのか?」

 わざとらしくとぼけて見せるサンザー乗せた『レイメイFS』は、ポジトロンランスを、ずん!…と衛星の地表に突き立て、仁王立ちになる。これを見ていたヴェルージ=ウォーダは、自分達の超電磁ライフルの銃弾が、ほとんど尽きている事から、配下のBSI部隊に命じた。

「ここから先は、冥府の門をくぐるまで格闘戦だ。みなサンザー殿のもとへ急げ」




▶#07につづく
 
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