銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#08

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 マーディンとザラヌラ、そしてそれぞれが率いる『トルーパーズ』と、“五十三家”先行部隊が死闘を続けている間にも、BSHO『ザンゲツMI』に乗るイディモス=モティガン直卒の、“五十三家”本隊百四十五機は“イチ姫輿入れ艦隊”へ接近中であった。

 この辺りはジャルミス暗黒星雲の中でも、特に星間ガスが濃密な箇所であり、渦巻く黒い星間ガスの長い柱が幾つも枝分かれして、まるで多頭竜の巣のような様相を呈している。その星間ガスの柱の内部では、猛烈な稲妻が多発しており、さらにはこれから恒星系になろうという、ぼんやりと赤黒く光るガスの塊も、朧月の如く背後に浮かんで、この星間ガスの濃密な空間の禍々しさ演出しているかのようだ。

“迎撃の第二陣がいるなら、この辺りだな…”

 イディモスはコクピット内の中空に浮かべた戦術状況ホログラムで、自軍の位置を確認しながら胸の内で呟いた。この指揮官の予想では、ウォーダ家の武将トゥ・シェイ=マーディンが初手の迎撃部隊にいた事から、迎撃部隊の全体指揮をノヴァルナ・ダン=ウォーダ自身が執っており、マーディンの隊を第一陣として、そこから“輿入れ艦隊”の間に第二陣、そしてBSHOに乗ったノヴァルナが、艦隊の直掩に付いているとしていたのだ。

 するとイディモスの意思にタイミングを合わせたように、前衛を務める攻撃艇小隊の一つから、敵発見の報が入る。

「こちら861。識別不明のBSI部隊発見。近い」

 通信とリンクして、『ザンゲツMI』の戦術状況ホログラムが更新され、ウォーダ家の迎撃部隊第二陣らしきマーカーが複数表示された。イディモスの本隊から見て、左側やや下方である。向こうもこちらに気付いたようで、敵のマーカーは一斉に動き出し始める。方向は当然ながらこちら向きだ。

「敵の数は…二十一? 親衛隊とノヴァルナ公の機体を、合わせた数と同じか…」

 イディモスは、接近して来る敵BSI部隊の機数を正しく数えて、はて?…という眼をした。二十一と言えば、ノヴァルナ自身の乗るBSHOと、『ホロウシュ』と呼ばれる親衛隊のBSIユニットを合わせた、総数だからだ。これでは“輿入れ艦隊”に、直掩隊がいなくなる計算になる。

 まさか、機数だけ揃えた囮ではあるまいか…と眉をひそめるイディモス。データによれば“輿入れ艦隊”を編制している『クォルガルード』型戦闘輸送艦は、巡航艦並みに速力が高いとされている。BSI部隊を囮にして俊足を生かし、濃密な星間ガスも利用して、襲撃部隊を振り切る作戦も充分あり得る。『クォルガルード』型戦闘輸送艦の搭載可能機数を全て合わせると、あと三機ほどは余裕があるはずとなっており、ノヴァルナは最後の砦として、まだ残っていると考えるべきかも知れない。

「攻撃艇部隊は次の戦闘には加わらず、敵艦隊の捜索に専念せよ」

 イディモスらの目的は、あくまでもイチ姫の確保である。そのイチ姫の乗った艦を発見する事は、最優先事項であった。発見したBSI部隊が直掩隊であろうが、囮であろうが、まずイチ姫の乗る艦の居場所を知らなければならない。そのためにイディモスは、BSIユニットとの交戦力が低い宇宙攻撃艇隊をすべて、『クォルガルード』の捜索に回したのである。

 だがその時であった。

「アッハハハハハ!」

 全周波数帯通信で“コーガ衆”の間にも響き渡る高笑い。そしてセンサー画面のウォーダ軍BSI部隊反応内で、力強く輝き始める金色の“流星揚羽蝶”紋。『センクウ・カイFX』とそれを駆る、ノヴァルナ・ダン=ウォーダ以外の何物でもない。挨拶代わりの超電磁ライフルが一発唸る。その銃撃は命中こそしなかったが、ASGUL隊の真ん中を突き抜け、慌てた『ゼグロン』が編隊を乱した。

「ノヴァルナ公!?」

 困惑の声を上げるイディモス。ノヴァルナが出て来るなら、それは直掩隊指揮官として、“輿入れ艦隊”に張り付く形になると読んでいたからだ。そうであるからこの単独行動同然の迎撃部隊第二陣を、囮と考えたのである。

「来やがれザコ共! 俺の可愛い妹にゃ、指一本触れさせねぇぜ!!」

 挑発的な言葉を口にして、『センクウ・カイFX』をさらに加速させるノヴァルナ。それに続く機体は各々に独自のカラーリングが施された、親衛隊仕様の『シデン・カイXS』。ノヴァルナの親衛隊『ホロウシュ』に間違いない。全機があっという間に迫って来た。

「全機、ブレイク!」

 イディモスは配下の味方機を散開させる。ノヴァルナと『ホロウシュ』の接近速度の速さに、そうせざるを得ないからだ。だが一方で、“コーガ五十三家”の前線指揮官としての、冷静な判断力は失っていない。配下の中の一人を呼び出す。

「サキュラス=ヴァン」

「はっ!」

 名前を呼ばれて応じたのは、イカのような頭を持つ、スクイド星人のパイロットであった。“五十三家仕様”の、『ミツルギCCC』に搭乗している。

「おまえは『CCCトリプルシー』を率いて離脱。攻撃艇隊がイチ姫のふねを発見次第、そちらの確保を行え」

「了解しました」

 イチ姫より敵将ノヴァルナを討ち取れば、それで全ては決まり、個人的に褒美も思いのまま…と思うのが、戦国の世の一般兵の考え方だ。しかし“五十三家”は、プロフェッショナルの集団だった。ロッガ家より下された命令は“イチ姫を捕えよ”であり、そちらを優先して、主力となる『ミツルギCCC』十機を差し向けたのである。



▶#09につづく
 
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