銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#09

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「ノヴァルナ公は自分が相手をする!」

 イディモスはそう告げて、『ザンゲツMI』を『センクウ・カイFX』へ向け、加速させた。ノヴァルナを討ち取って名を上げようという功名心ではない。最も戦闘力が高い自分が、『センクウ・カイFX』の相手をして戦闘を長引かせ、分離した別動隊の“輿入れ艦隊”襲撃を、間接支援するためだ。

 そのノヴァルナはすでに『ホロウシュ』を従え、“五十三家”配下の量産型『ミツルギ』及び、ASGULの『ゼグロン』と戦闘を開始している。

「コンウォール、バルタ、アイノッカ。これまで通りでいい。死ぬんじゃねーぞ!」

 ノヴァルナは敵編隊との距離を詰めながら、新たに『ホロウシュ』に加えた三名に、通信で呼び掛けた。ナグティス=コンウォール、クロヴィス=バルタ、カディントン=アイノッカ。この三名は先日のドボラ城攻略戦で、一時的にノヴァルナの指揮下に入った第1戦隊直掩隊の『スレイヤー中隊』から、技量を評価されて抜擢されたパイロットである。戦隊司令官として昇進・転出したナルマルザ=ササーラとヨヴェ=カージェス、そしてヨリューダッカ=ハッチの後釜で、ノヴァルナ自身が戦いぶりを見て、コンピューターに記録しておいたものだ。

 ノヴァルナの言葉に「御意!」と応じた三名は、むしろ先陣を切り、思い思いのコースを取って敵集団へ突撃を掛ける。この三機を目掛けてコーガのASGULの一団、十二機が立ち向かって来た。旋回しながら超電磁ライフルを放つ三機。だが手練れのコーガ衆は、ASGULであっても手強い。攻撃艇形態のままクルクルと機体をスクロールさせ、なおかつ複雑な針路を取って散開した。しかもその散開した敵機を追尾すると、別の敵機が複数で包囲しようとして来る。

 誘導弾を発射し、人型に変形せずビームを放ちながら、次々と一撃離脱で襲い掛かるASGULの『ゼグロン』。三人は機体を翻し、迫る誘導弾を超電磁ライフルで撃破して、敵機に照準を定める。しかし狙った敵機の後方を続くもう一機が、これを阻止する射撃を放って来た。しかも後退して回避すると、さらにもう一機が追随してビームを発射。間一髪で機体脇腹を掠めていく。

 敵のASGULの巧妙な動きを見て、コンウォールはバルタとアイノッカに通信を入れた。

「奴等は連携が取れている。こっちも組んでいくぞ!」

 声を合わせて「おう」と応じるバルタとアイノッカ。元から同じ中隊にいた三人であるから、息もすぐに合わせられる。三機の『シデン・カイXS』は集まって、相互支援のフォーメーションを組むと、たちまち敵を撃破し始めた。
 
 新加入の三機が高い技量を見せつけて戦い始めると、以前からの『ホロウシュ』メンバーも黙ってはいられない。

「俺達もフォーメーションでいくぞ!」

「スリーバイスリーだよな!?」

「遅れるなよ!」

 三機一組が三組で相互支援を行うスリーバイスリーの戦術は、敵の方が数的優位に立った戦場で、最も有効となる。ノヴァルナが命じなくとも、自分達で判断した『ホロウシュ』達はフォーメーションを組み直し、敵編隊に立ち向かって行った。

 対する“コーガ衆”のBSI部隊も、やはり連携を取って迎え撃つ。高度な連携を取る小隊同士の戦いは、絡み合った糸のような複雑なコースを描き、個々の機体のコクピットでは、ロックオン警報が鳴りやまない。
 だがそうなると、今度は機体のスペックの差がものを言い出す。『ホロウシュ』の機体は新型の親衛隊仕様『シデン・カイXS』であるのに対し、コーガの一般兵は量産型『ミツルギ』と簡易型ASGULの『ゼグロン』。その差がやがて、少ない方の『ホロウシュ』をして、多い方のコーガ衆一般兵を圧し始めた。

 ただコーガ衆の目的はここでも、ウォーダ軍の足止めである。圧されながらも撃破を回避する事で、『ホロウシュ』に時間を消費させていた。そこに『センクウ・カイFX』と『ザンゲツMI』だ。ノヴァルナの方も、相手編隊の中にBSHOの反応を発見したからには、自分が相手取らなければならないと感じ、機体を差し向けていた。

「ノヴァルナ公。一戦所望!」

 全周波数帯通信でノヴァルナに呼びかけるイディモス。ノヴァルナは不敵な笑みで呼びかけに応じる。

「おう。誰だ!?」

「“コーガ五十三家”前線筆頭。イディモス=モティガン!」

 イディモスは名乗りを終える前に、超電磁ライフルを『センクウ・カイFX』へ向けて一連射した。無論当たらない。不規則旋回で全ての銃弾を躱したノヴァルナは、ライフルでの反撃は行わず、ポジトロンパイクを手にした。相対速度が速すぎてライフルを構える余裕がないからだ。
 パイクを握り取ると『ザンゲツMI』はもう眼の前。実際には距離は三千キロほどで見えはしないが、超高速の宇宙戦闘では“眼の前”だ。

 すれ違いざまに放った両機の斬撃は恐ろしく鋭い。ところが互いに打ち付け合った刃は火花を散らし、あらぬ方向へ向けて、虚しく宙を掻き切っただけであった。そこから機体を翻し、『センクウ・カイFX』が百八十度の急旋回を行うと、正面から対峙する形となった『ザンゲツMI』に、ノヴァルナの口許の歪みが大きくなる。



▶#10につづく
 
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