銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#12

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 密集した八隻の『クォルガルード』型戦闘輸送艦が放つ、峻烈な防御火箭によって、二十七機の攻撃艇『マシエフ』は一気に、ほぼ半数の十五機にまでうち減らされた。だが余裕を見せられるような状況ではない。CIWSのビームを回避して射点を得た『マシエフ』が、搭載していた対艦誘導弾を発射したからだ。

 宇宙攻撃艇が搭載できる誘導弾は二本、計三十本の誘導弾が襲い掛かる。攻撃艇から誘導弾へ標的を変えた、近接迎撃用ブラストキャノンの砲塔が激しく旋回し、艦隊は必死の防戦に入った。『クォルガルード』の周囲を守る、七隻の同型艦の至近距離で対艦誘導弾が三つ、四つと火球に変わる。

 するとこの攻防中に、さらなる攻撃艇が数機ずつ出現した。いずれも索敵部隊の残りで、離れた位置にいたものが遅れて集まって来たのだ。総数で三十三機。

「方位155プラス43より、敵攻撃艇3!」

「方位049マイナス52より、敵攻撃艇6!」

「敵攻撃艇発見。方位083マイナス09、機数5!」

 期せずしてあらゆる方向から、時間差のある攻撃を受ける形となった“輿入れ艦隊”。これに対し艦隊は二度目の迎撃誘導弾の発射を行う。今度は各艦四発、計三十二本の発射だが、見るからに少ない。敵の総数が不明のままであるから、そう簡単に全ての誘導弾を、一斉発射出来ないでいるのである。
 しかも今回の迎撃誘導弾で、撃破できた攻撃艇は二機しかいなかった。先に到着して、対艦誘導弾を発射し終えた攻撃艇が味方を援護。新たに現れた僚機を狙う誘導弾を、破壊していったからだ。この辺りの連携も、さすがは“コーガ五十三家”の配下であった。後続で現れた攻撃艇が、次々と対艦誘導弾を発射し始める。

「撃破しろ。何としても『クォルガルード』を守るのだ!」

「艦をもっと旗艦に寄せろ!」

 旗艦『クォルガルード』を護衛する艦の艦長が、口々に強く命じ、全方位に向けた防御火箭が峻烈な光を放つ。しかしついに、対艦誘導弾を被弾した艦が出る。

「『ヴェルガルード』被弾!」

 それは『クォルガルード』型戦闘輸送艦二番艦の、『ヴェルガルード』だった。『クォルガルード』の左舷側の護衛に付き、激しく防御砲火を放っていたが、左舷後部に誘導弾の直撃を受けたのである。閃光が起こり、粉々になった外殻装甲版が宇宙を舞う。
 さらに『クォルガルード』の上方を護衛していた、六番艦『フェルガルード』も艦の上部中央に命中弾を喰らった。こちらは運が悪く、装甲が弱い航行用センサー集合箇所への被弾だ。内部を抉るような、大きな火柱が上がる。
 
 被弾艦は増える。四番艦で密集陣形の前衛として、一隻だけやや前方を進んでいた『ディルガルード』が、対艦誘導弾を二本同時に喰らってしまったのだ。一本は艦の前方底部で、物資備蓄庫への被弾のため大きな被害ではない。だがもう一本は後部機関部付近に命中し、深刻なダメージを与えた。四基ある対消滅反応炉のうちの二基が、対消滅爆発の危険を感知して緊急停止したのである。

 推進力が低下した『ディルガルード』は、ジャルミス暗黒星雲の重力勾配に影響され、みるみる速力が落ち始めると、ほどなくして後方にいた『クォルガルード』と六隻の護衛艦に追いつかれた。『ディルガルード』の艦長は、すかさずオペレーターに旗艦への伝達を命じる。

「我に構わず、前進されたし」

 これを受け、残る七隻は速力の落ちた『ディルガルード』を置き去りに、その脇を航過していく。周囲には雲霞のように纏わりつく敵の攻撃艇。それらを少しでも引き付けようと、『ディルガルード』は自艦の防御も放置して、残る七隻への攻撃を続けている、敵の攻撃艇へ砲火を浴びせた。そこへ接近して来た一隻の敵の攻撃艇が、“余計な事はするな”と言わんばかりに、『ディルガルード』へ対艦誘導弾を発射する。
 この一撃も『ディルガルード』の機関部付近に命中。『ディルガルード』は艦を包むエネルギーシールドを、消失してしまった。シールドを失っってしまうと、通常のビーム兵器や対機動兵器誘導弾でも、大きな損害を被るようになる。そういった艦が敵の勢力圏に取り残されるとは、どういう事かは何をかいわんやだった。

 だがそれは残る方も、置き去りにする方も承知の上の話である。『クォルガルード』に乗るマグナー准将は、短い電文を送った。


機を見て投降されたし。幸運を祈る―――


 ただコーガ家の攻撃艇部隊も、目的は違えていない。『ディルガルード』が戦闘力を失ったと見るや、これを放置。残る七隻への攻撃を優先した。彼等の目的はあくまでも、イチ姫の乗った艦を停船させる事であり、それについては完全に、意思統一が出来ていたからである。
 そして攻撃艇部隊に与えられていた任務は、“輿入れ艦隊”の捜索・発見と、その防御力を削いでおく事だった。『ミツルギCCC』からなる、BSI部隊が到着するまでの―――

「新たな敵反応を感知。方位106プラス35、距離7千。これは…これは攻撃艇ではありません。反応が小さすぎます」

 “準ステルスモード”を作動させた『ミツルギCCC』は、センサー反応が極めて小さい事は前述の通りである。BSI別動隊を率いるサキュラス=ヴァンは、味方の攻撃艇部隊に呼び掛けた。

「攻撃艇部隊は帰還せよ。あとは我々でやる。ご苦労だった」




▶#13につづく
 
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