銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#13

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 サキュラス=ヴァンは配下の九機に散開を命じる。

「全機、ブレイク。まずは護衛艦を引き剥がす」

 即座に攻撃体勢に入る十機の『ミツルギCCC』。超電磁ライフルに装填しているのは、全て対艦徹甲弾だ。光学測定でウォーダ側も接近して来たのが、BSIユニットである事を知る。

「敵はBSIユニット。ロッガ家のGFB‐63『ミツルギ』の、特殊仕様機だと思われます!」

 迫り来る新たな脅威。艦隊は攻撃艇部隊との交戦で、迎撃誘導弾を消耗し始めている。それに機動性に富んだBSIユニットは、CIWSでも補足が難しい相手である。しかも操縦するパイロットはいずれも“コーガ五十三家”であり、CIWSの猛烈な砲火も全機が、スルスルと難なく回避して間合いを詰めて来た。

 するとまず、すでに攻撃艇の誘導弾を喰らっていた、『ヴェルガルード』が二発の対艦徹甲弾を受け、急激に速力を落として戦列から脱落する。その様子を見送りながら、参謀の一人が苦々しげな声を発した。

「くそっ。敵は、こいつらが本命か!」

 さらに後衛に就いていた、八番艦『スラベガルード』にも命中弾がある。だがこちらは、右舷に開いた破孔からスパークを放ちながらも、どうにか護衛位置を維持していた。しかし陣形が崩れて来たのは確かで、続いて下方を守っていた『グレナガルード』に三発の徹甲弾が命中する。

 拡大していく損害。だが艦隊を指揮するマグナー准将の表情には、変化がない。それは何かのタイミングを、注意深く見計らっているようでもある。

 だが被弾した『グレナガルード』に、さらに二発の徹甲弾が命中する光景を見るフェアンは、表情を変えないわけにはいかなかった。ここまでの戦いがすべて、自分をアーザイル家に送り届けようとしている兄ノヴァルナ達と、それを奪おうと目論むロッガ家コーガ衆の戦いであるからだ。

“また誰かが傷付き、命を失っていくんだ………”

 舷側から火柱を噴き出す『グレナガルード』の映像に、フェアンは奥歯をきつく噛みしめる。

「どうしてなの…」

 俯き加減で思わず呟くフェアンの言葉が耳に入り、隣に座るマリーナは妹の横顔を覗き込むようにして「なにが?」と、静かに問い掛けた。

「あたしがナギの所へ行くだけなのに…どうしてみんな、こんなに争わなきゃならないの…どうして?」

「イチ…」

 無論、フェアンとて星大名家の姫であるから、自分の立場というものは理解している。しかし愛する相手のもとへ嫁ぐために、これだけの犠牲が出るのは、不条理に過ぎるというものだった。

「こんなに誰かが争うのなら…苦しむのなら…あたし、笑顔になれないよ!」

 膝の上に乗せた拳を握り締め、フェアンは絞り出すような声で告げた。これまで自分自身は戦いとは無縁…とはいかなかったフェアンだが、少なくとも自分が、それらの戦いの中心であった事は無い。それだけに味方であれ敵であれ、自分のために誰かの人生が大きく狂い、或いは終わってしまうのは耐え難い。

 フェアンはマリーナを振り向いて、懊悩する表情で問うた。

「マリーナ姉様ねえさま。あたし、本当にこれでいいの?」

「イチ…」

 自由奔放で優しいフェアンであるからこそ、立場を超えて自分を含む誰しもが、笑顔でいて欲しいと思う事が出来る。ただその心が今は自責の念となって、フェアン自身を苦しめていた。

 妹の心の機微を知るマリーナは、フェアンの眼を見据えて静かに語り掛ける。

「イチ。聴いて…イチ」

「姉様…?」

「わたくし達は、星大名の家に生まれた者…常人とは違う世界に生きる身である事は、分かっているでしょう?」

「うん…」

「そんなわたくし達は、何をするにつけ、星大名の姫であらねばならない」

「………」

「そして、いま争っているのは、その星大名の姫である事について…でしょ?」

「うん…」

「だけどこれは、あなたという個人が幸せを掴む事を、拒絶する争いではないの」

「それは…だけど…」

 姉の言う事も分かっているフェアンだったが、やはり逡巡してしまう。その時であった。艦内通信によるノアからの映像通信が入って来た。ノアはパイロットスーツを身に着けている。コクピットにいるようだ。

「幸せになりなさい。イチちゃん!」

 顔を上げて、ノアの映るホログラムスクリーンを見遣るフェアン。

「ノア義姉様ねえさま

「あなたを奪おうと、争いを仕掛ける者がいる一方で、あなたがナギ様と幸せに結ばれる事で、無駄な争いをしなくて済む人々も多くいる。より大きな争いを起こさないためにも、あなたはあなたの幸せを求めていくのよ。私があのひとと…ノヴァルナと歩む道を選んだように」

 凛とした声でフェアンに告げたノアは、回線をマグナー准将へ切り替える。

「准将。タイミングは合わせます。いつでもどうぞ」

 そして『クォルガルード』の格納庫内で、ノアの乗った『サイウンCN』と、カレンガミノ姉妹の二機の『ライカSS』が、センサーアイの光を強く輝かせた。




▶#14につづく
 
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