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第5話:ミノネリラ征服
#14
しおりを挟む十機の『ミツルギCCC』の攻撃に、イチ姫の“輿入れ艦隊”の護衛艦は悉く損害を受け、消耗したようにサキュラス=ヴァンには見えた。脱落した護衛艦もあって、艦列も大きく乱れている。それでも前進をやめない“輿入れ艦隊”の周囲を、自らの『ミツルギCCC』でグルリとひと回りしながら、サキュラスは頃合い良しと判断、全周波数帯通信で呼び掛ける。
「ウォーダ艦隊、降伏せよ。機関を停止し、こちらの指示に従え。ウォーダ艦隊、降伏せよ。機関を停止し、こちらの指示に従え」
しかしこの一瞬の隙こそ、マグナー准将が待っていたものであった。艦隊の全艦が、残していた迎撃誘導弾を全て発射。脱落艦を置いて全速で前進を始める。
「む。往生際の悪い」
迫って来た誘導弾を撃破・回避する、十機の『ミツルギCCC』。距離が開いたタイミングで、マグナーはノアに連絡した。
「ノア様。お願い致します」
その言葉を受け、ノアは『クォルガルード』のコマンドコントロールに、出撃を伝えて機体を急加速させる。
「マーメイド小隊。テイクオフ!」
『クォルガルード』の格納庫から、『サイウンCN』と二機の『ライカSS』が猛然と飛び出す。
「なに?…直掩機が居ただと?」
攻撃艇部隊の襲撃から引き続いてここまで、直掩機が一機も出ていなかった事から、サキュラスをはじめとする『ミツルギCCC』のパイロットは全員、“輿入れ艦隊”にはもう、艦載機が残っていないと思い込んでいたのだ。
「しかもBSHO!? まさかノア姫か!?」
クリムゾンレッドとジェットブラックに塗り分けられた華麗な機体は、知る者ぞ知る『サイウンCN』。それを操縦するノア姫のパイロットの才能は、ノヴァルナ以上の天才レベルと噂されている。緊張で表情を硬くするサキュラスの視線の先では、コクピットで操縦桿を握るノアが、メイアとマイアに指示を出す。
「ゼロツー、ゼロスリー。フォーメーション・デルタ」
即座に正三角形のフォーメーションを組む三機。『クォルガルード』のコマンドコントロールから、敵の機体のセンサー反応が異常に小さいという情報を、出撃前にすでに得ていたため、『ミツルギCCC』の準ステルスモードにもそう驚く事は無い。
「ゼロツー、ゼロスリー。私が狙う敵機の、支援機とのフォーメーションを断って下さい。敵機の反応が小さいです。牽制射撃は多めに。回避運動は小刻みに」
ノアの言葉に双子姉妹が声を揃える。
「イエス、マム!」
ノアは敵部隊の真ん中で、コクピットを包む全周囲モニターに、素早く視線を走らせた。表示されている十個の敵マーカーすべてを視認、ナンバリングする。これによってノアの体に埋め込まれたNNLユニットが、機体のセンサーとダイレクトリンクして、眼で見なくとも脳内空間で、敵との相対位置を常に認識できるようになった。完全カスタマイズ機のBSHOのみが持つ機能である。
「ターゲット、ナンバー04」
ノアが一番近くにいる敵のナンバーを口にすると、“04”のナンバーが振られたマーカーが黄色から赤に変わった。敵のセンサー反応が準ステルスモードの影響で、サイズ的に捕捉しにくくなっているため、自動追尾をロックしたのだ。ただ自動追尾にするとその分、他の敵への対処が遅れてしまう。これをバックアップするのが、メイアとマイアの役目という事だ。戦闘行動に入った“五十三家”のパイロット達が交信する。
「数は三機だが、手練れだ。相互支援で対処!」
「バクスター・02。BSHOに狙われてるぞ!」
「回り込め! 俺と09の前に誘い込むんだ!」
ノアが“04”と振り分けた『ミツルギCCC』―――“バクスター・02”のコードネーム機は、自分がノアの『サイウンCN』に狙われる事を知り、二機の味方の十字砲火ポイントへ誘い込もうとした。しかしその待ち伏せの二機へ、メイアとマイアが銃撃を行う。今回の双子姉妹は共に、二挺の超電磁ライフルを左右両手に握っている。二機の『ライカSS』は、シンクロした動きで機体を横回転させながら、大量の銃弾を放った。
「くっ!…コイツ!」
執拗に銃撃を続けて来るカレンガミノ姉妹に、待ち伏せの二機は回避運動で精一杯となる。その隙に距離を詰めながら、ノアはナンバー“04”を狙撃した。銃弾はバックパックを斜めに貫き、上半分を粉々に吹き飛ばす。対消滅反応炉が二つとも緊急停止した『ミツルギCCC』は、無重力空間をあらぬ方向へ慣性で漂い去って行った。
直後にノアのヘルメット内でロックオン警報が鳴る。三機の『ミツルギCCC』が接近中だ。二機が超電磁ライフルを放ち、もう一機がその射撃を援護に、ポジトロンパイクを構えて突撃して来た。
「ターゲット、ナンバー02!」
ノアは突っ込んで来る敵機を次のターゲットに選定し、機体を翻して援護射撃を躱しながら、自らも『サイウンCN』にポジトロンパイクを握らせる。その次の一瞬、すれ違いざまの双方のパイクが刃を打ち合わせ、眩く火花を散らせた。
▶#15につづく
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