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第7話:目指すは皇都惑星
#09
しおりを挟むノヴァルナの第1艦隊は、半数をカッツ・ゴーンロッグ=シルバータに指揮権を与え、カーナル・サンザー=フォレスタの第6艦隊と共に、首都星系オウ・ルミルへ向かっていた。その残りの指揮権をキノッサに与えようというのだ。
「俺は第1戦隊だけ率いて、残りの連中と一緒に星系防衛艦隊を排除し、他星系からの増援に備える。城は任せっからしっかりやれ、キノッサ!」
「ぎ、御意!」
尊敬するノヴァルナからそんな風に檄を飛ばされると、キノッサも奮い立たなければならない。ともかくキノッサにとっては、スノン・マーダー城の城主となり、ミノネリラ宙域攻略でも幾つかの敵領主を寝返らせた実績はあるが、新参者で民間人上がりの人間が『ム・シャー』として、他の重臣達に認められるには、まだ武功を重ねる必要があり、主君からその機会を得たのであるから、失敗は許されない状況だ。
程なくしてナルガヒルデ=ニーワスが率いる第1艦隊の半数が、キノッサの第2護衛艦隊に合流して来る。戦艦6隻・重巡航艦12隻・軽巡航艦8隻・駆逐艦20隻である。
「ノヴァルナ様からのご命令で、我等は貴殿の指揮に従う。存分に使われよ」
戦艦部隊である第2戦隊の旗艦『ローバルード』に座乗する、ナルガヒルデから通信でそう告げられると、キノッサの緊張の度合いはいや増す。この女性武将は懐刀として自分よりか、余程ノヴァルナに信頼されているからだ。実際、艦隊指揮能力では足元にも及ばないだろう。
「宜しくお願い致しまする、ニーワス…ど、殿」
スノン・マーダーの城主となったのだから、これからは“様”付けで呼ばなくていいと、ナルガヒルデに言われたキノッサだったが、“殿”付けにするにはまだ、ぎこちなさが残る。これに対してナルガヒルデは珍しく、薄い笑顔を浮かべて応じた。
「私に気遣いは無用。ノヴァルナ様の御期待に応える事にのみ、専念なされよ」
言い方は硬いが、ナルガヒルデなりのキノッサへの気配りであった。ミノネリラ宙域攻略戦の時も、共に行動していた期間が長かったため、彼女にもキノッサへの期待があるのだろう。
「が…頑張りまする」
キノッサが礼の言葉を口にした直後、艦の長距離センサーがロッガ家の星系防衛艦隊の接近を捉えた。それに呼応してノヴァルナ以下四個艦隊が、接触針路をとって動き始める。キノッサ達の任務は敵艦隊ではなく、ミーテック支城を攻略する事だ。
「俺っち達は、ミーテック支城のある第五惑星に向かうッス!」
オウ・ルミル星系とミーテック星系に敵艦隊出現の報に、クァルノージー城の中央作戦指令室にいたジョーディー=ロッガは、拳で机をダン!と殴りつけた。
「ウォーダ艦隊だと!? なぜここやミーテックに現れる!? どういう事だ!!!!」
なぜと問われても困るのは参謀達である。彼等の主観で見れば、ノヴァルナの作戦が理解できていないのであるから、すぐに判断を下せるものではない。
「わ、わかりません。ウォーダ軍は我々の想定通り、全艦隊がワーデルマ星系にいたはずですが」
「すっ…すぐに迎撃艦隊を呼び戻せ!」
顔を引き攣らせて言うジョーディー。彼等がいるオウ・ルミル星系は本拠地だけあって、星系防衛艦隊が三個配備されているが、実はクァルノージー城を含む惑星ウェイリス自体は、防御力は高くない。例の球状防御陣を防衛戦略の主体にしているため、クァルノージー城は行政機能を優先して建てられているからだ。
「すぐに呼び戻すにしても、重力子チャージまで八時間ほど、時間差が生じてしまいまする。この差を埋めるのは困難かと」
宿老の一人、コルモル=シドンが問題点を指摘すると、もう一人の宿老のカトラス・ジザ=ゴードンが意見を出した。
「ともかく星系防衛艦隊を差し向けましょう。幸い艦の数は我が方が上です。それにワーデルマ星系に向かわせる予定であった、残りの支城の恒星間防衛艦隊をこちらと、ミーテックへ向かわせるのです」
「う、うむ。それがよい」
数で言えば有利な状況に変わりはない。カトラスの意見にジョーディーも即座に同意する。しかしその指示を各星系へ伝達するより早く、さらに驚愕すべき情報がもたらされた。オペレーターからの報告を聞いた通信参謀が、青ざめた顔でジョーディーのもとへ駆け寄って来る。
「ジョーディー閣下! 大変にございます!」
「今度は何事か!!??」
「ノーザ恒星群のアーザイル家!…そ、それにミ・ガーワ宙域のトクルガル家の艦隊が、我が領域に侵入して参りました!」
これとほぼ時を同じくして、総旗艦『ヒテン』のノヴァルナのもとへ、二つの強力な援軍からの超空間電信が届けられていた。
「発:アーザイル軍派遣艦隊司令部、宛:ウォーダ家上洛艦隊司令部、本文:ワガ軍到着セリ。コレヨリ支援行動ヲ行ワントス」
「発:トクルガル家機動打撃群司令部、宛:ウォーダ家上洛艦隊司令部、本文:ワガ艦隊ハスデニ、オウ・ルミル宙域内ニアリ。貴軍ヲ支援ス」
二人のオペレーターが順に電文を読み上げる。それを聞くノヴァルナの不敵な笑みは、当たり前に大きくなった………
▶#10につづく
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