銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第7話:目指すは皇都惑星

#12

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 第1艦隊直掩隊のBSIユニットが戦闘に入ると、ミーテック宇宙城の宙雷艇部隊は艦隊への攻撃を中断し、一斉に引き上げ始める。手際の良さが光る動きだ。
 キノッサは敵の撤収状況を見て、今しがたの自分の考えに従い、敵に紛れて宇宙城との距離を詰めようかと考えた。しかしそれを制止する声が聞こえて来る。

「キノッサ様。撤退中の敵を追って、宇宙城へ接近するのは危険です」

 向き直るキノッサの視線の先にいたのは、艦橋へ入って来たところのデュバル・ハーヴェン=ティカナックだった。キノッサの配下となったハーヴェンにとって、参謀長としてのこれが初任務である。

「どういう事ッスか? 軍師殿」

 キノッサは参謀長のハーヴェンを、古典的な呼称の“軍師”と呼んでいた。こちらの方が、風情があっていいとの理由からだ。ハーヴェンは表情は穏やかながら、警告感のある声で述べる。

「タ・キーガー様からの進言で、ミーテック宇宙城の司令官と防御指揮官の、人物情報を調べてみたのですが、有能な人材が揃えられているようです。宙雷艇部隊の引き際の良さを見るに、これは我々を城塞主砲の射程圏内へ誘い込むための、罠と考えます」

 そう言われて、艦橋中央に展開されている戦術状況ホログラムを見直したキノッサは、確かに撤退するロッガ家の宙雷艇部隊の動きに、焦りのようなものが感じられないように思えた。追い散らされているのであれば、もっと算を乱している印象があっていいはずだ。

「た、確かに…」

 そこに第1艦隊のナルガヒルデ=ニーワスからも、罠の危険性を指摘する進言が届く。ここはまず、ハーヴェンとナルガヒルデの進言を容れるべき、と判断したキノッサは、艦隊参謀に追撃中止を命じる。

「追撃を中止。宙雷艇部隊と距離を取るッス!」

 キノッサ艦隊の各艦が速度を落とし、やがて微速後進でゆっくりと後方に下がると、逆にミーテック城の宙雷艇部隊は速度を上げ、本格的に城へ引き上げ始めた。やはりキノッサ達を誘い込むための、罠だったようだ。はぁ…と、自分の判断の甘さに溜息をつくキノッサ。
 しかしこれはキノッサが無能なのではない。艦隊指揮の経験が不足しているだけである。それが証拠に、ハーヴェンらの進言に従って戦術状況ホログラムを確認すると、敵の動きに意図的なものがあるのを見抜く事ができた。要はこれからどう学んでいくかであり、その辺りも見越してノヴァルナは、キノッサにハーヴェンやナルガヒルデを付けてやったのだろう。
 
 気を取り直したキノッサは、ハーヴェンが入手したミーテック宇宙城の、指揮官情報の開陳を求めた。軽く頷いてハーヴェンは口を開く。

 それによるとまず、ミーテック宇宙城の指揮官について警告して来たのは、カーズマルス=タ・キーガーだった。カーズマルスは元ロッガ家の特殊陸戦隊指揮官であり、ミーテック宇宙城の司令官イズモルト=ジョルダーらの名を、ロッガ家時代に聞いた事があったからである。

 これを超空間電信で聞いたハーヴェンは、ロッガ家のデータネットワークに侵入し、過去の戦評アーカイブをハッキング。三人の指揮官の情報を得た。三人のうちの一人、ミーテック宇宙城の城主で司令官のイズモルト=ジョルダーは、元は基幹艦隊司令官で長距離射撃戦の指揮に、定評があったようだ。
 そして宙雷艇部隊指揮官は、ビラック・ゲルバ=タティーヴ。こちらも以前は、ロッガ家の第2艦隊に所属していた過去があり、いわば宇宙魚雷を駆使した戦闘のプロ。またBSI部隊指揮官のシュリス=コーマも、相手がノヴァルナとルヴィーロのBSI部隊となって不運なものの、決して無能な指揮官ではないらしい。

「…本来ならば、もっと早くに情報を入手できたのですが、なにぶん我等のNNLのメインシステムが封鎖されており、アーザイル家のシステムを経由する必要がありましたので、戦闘開始に間に合いませんでした。申し訳ありません」

「いえ…それより、敵の指揮官はみんな、一線級ばかりじゃないッスか。こう言っちゃなんスけど、支城の守備隊には勿体ないような…」

「どうやら皆、二年前の“クァルノージー騒動”で、降格人事の煽りを喰らったようです」

 キノッサの疑問に答えたハーヴェンの言葉にあった、“クァルノージー騒動”とは、ジョーディー=ロッガと嫡男のゲルバードとの確執に端を発した内紛で、宿老の一人カトラス・ジザ=ゴードンが、クァルノージー城内で暗殺の危機にさらされた事件であった。何人かの重臣がゲルバードと共に、謀叛を起こそうとしていた事が発覚し、実際に戦端は開かれはしなかったものの、閑職に左遷される重臣が多数発生。ロッガ家の家勢は大きく減退する事となった。

「なるほどッス…回り回って俺っち達までが、煽りを喰らったようなもんスな」

 冗談めかして応じたキノッサだが、下がり気味の眉が、困っている気持ちを表している。するとそこに通信オペレーターから報告が入る。

「副司令官のハートスティンガー様より、意見具申です」

 “スノン・マーダーの一夜城作戦”以来、キノッサの与力に付けられているマスクート・コロック=ハートスティンガーは、この戦いで副司令官の任を与えられていた。何か意見があるらしい。ハーヴェンと顔を見合わせたキノッサは、オペレーターに命じた。

「繋いでくれッス!」




▶#13につづく
 
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