銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第7話:目指すは皇都惑星

#13

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 キノッサの命令で回線がつながると、通信ホログラムスクリーンが開き、厳つい顔の大男が映し出される。

「どうかしたッスか、親分」

 昔の上下関係の癖で今でも、つい“親分”と呼んでしまうキノッサを、ハートスティンガーは苦笑いと共にたしなめた。

「おいおい。今の親分はそっちだろうがって、いつも言ってるだろ」

「こりゃどうも…」

 手指で頭を搔くキノッサに、ハートスティンガーは本題を伝える。

「ここは一旦、撤退すると見せ掛けて…そうさな、四十分ほど置いて、城に再攻勢をかけてはどうだ?」

「再攻勢ッスか?」

 ハートスティンガーの提案に、キノッサは考える眼になった。損傷艦が続出している現在の自軍の状況は芳しくない。再攻勢を仕掛けるにしても四十分後では早過ぎであり、各艦にもっとしっかりとした応急修理と、補給・整備を行ってからにするべきだとも思う。

「四十分は、どんなもんスかねぇ…」

 煮え切らない返事を返すキノッサ。そこでハートスティンガーは、四十分の理由を告げた。

「警戒する人間の集中力ってのは、何も起きなきゃそんぐらいで一旦緩むもんだ。その隙を突いて一気に城へ接近して、まず城塞砲を破壊するのさ」

「………」

 なおも考えるキノッサ。自分が攻城作戦の指揮を任されているのであるから、慎重にならざるを得ない。今回は“スノン・マーダーの一夜城”作戦のような、ペテンじみた作戦ではなく、敵の支城を陥落させる正面作戦としては、初めての経験なのだ。するとそこに軍師であるハーヴェンから、主観的意見が出された。

「私もハートスティンガー殿の提案を、別の理由からも支持致します」

 キノッサは「それは?」と訊きながら、顔を振り向かせる。

「今の敵の動きで、我々が停止した事に対し、宙雷艇部隊は反転攻勢も、追加増援も行って来ませんでした。これはおそらく、ほぼ全ての宙雷艇が魚雷を撃ち尽くしたのだと思われます。となると今は城内で、新たな魚雷を装填し、それに合わせて補給や乗員の休息が行われているはず。それらが完了してしまう前に、再攻勢を仕掛けるのは、理に適っております」

 家臣達の意見を正しく判断し、容れるのも指揮官の才である。キノッサはハートスティンガーとハーヴェンの言葉に納得して、「わかったッス。それでいくッス」と大きく頷いた。確かにこちらの損害状況を見ればリスクはあるが、このまま同じ事を繰り返しても、ジリ貧になるだけだ。指針が決まった以上、キノッサに躊躇いはない。

「四十分後に、ミーテック城へ急進開始するッス。それまでに出来る限りの、応急修理と補給を行うッス!」
 
 キノッサの命令でミーテック城攻略部隊は、城のある第五惑星近郊から一時的に第六惑星公転軌道の近くにある、小惑星帯へと後退した。無論これはハートスティンガーとハーヴェンの進言を採用した作戦である。ウォーダ家に召し抱えられる前は、鉱物資源の採掘と密売を行っていたハートスティンガーが、小惑星帯へ向かう途中の通信で悪党顔をして言ったものだ。

「逃げたと見せ掛けて、仕掛ける…コイツはどっちかってぇと武人じゃなくて、裏稼業同士の喧嘩のやり方だがな」

 果たしてキノッサらの思惑通り、ミーテック宇宙城の司令官イズモルト=ジョルダーはじめ指揮官達は、小惑星帯まで後退したウォーダ軍攻城艦隊が、戦力の立て直しに入ったものと判断した。そして再攻勢までには三、四時間は掛かるものと見積もりを行う。それはまさにキノッサが本来、艦隊の立て直しに費やそうとしていた時間である。
 これはキノッサの最初の思考が誤っていたのではなく、むしろ正しかったというべきであろう。ハートスティンガーが告げた通り今回の作戦は邪道であって、イズモルト=ジョルダー達は有能であるがゆえに、セオリーに基づいた判断を行ったのだ。そこでミーテック宇宙城守備隊は、宙雷艇部隊への修理と補給、乗員の休養に入った。

 そして、そのまま四十分が経つ―――

「時間ス。全艦発進、最大戦速!」

 キノッサの命令一下、再び動き始めるミーテック宇宙城攻略部隊。損傷艦のほとんどは、まだ修理率が二十パーセントにも満たない。しかしそれらを含めてすべての艦が小惑星帯から抜け出し、艦の速度を一気に最大へと持って行った。

「急げ、急げ! いま俺達に必要なのは一に速度、二に速度、三四がなくて、五に速度だ!!」

 そう強い口調で煽るハートスティンガーは、自分からこの作戦を持ちかけただけに、自身が乗る重巡航艦で先陣を切って突っ走る。おかげで艦隊は陣形も何もあったものではなくなった。しかしそれがかえって、ミーテック宇宙城側に焦りを誘発させる。宇宙魚雷の補充を終えた宙雷艇から次々と発進を開始するが、統制を欠いた数隻ずつの襲撃では脅威にはなり得ず、迎撃されて追い払われるだけだ。

 するとさらにキノッサのもとへ意見具申が行われる。増援の第1艦隊のナルガヒルデからであった。その内容を聴き、キノッサは即座に許可を出す。そこから見せたナルガヒルデの指揮ぶりは巧妙だった。戦艦戦隊と宙雷戦隊を分離、宙雷戦隊にミーテック宇宙城の宙雷艇部隊を“狩らせ”、戦艦戦隊はさらに別方向へ移動しながら城へ接近。キノッサの直卒部隊と二手に分かれて、城への砲撃を開始したのである。



▶#14につづく
 
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