銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第9話:魔境の星

#01

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 アルワジ宙域はセッツー宙域とアーワーガ宙域の間に位置する、比較的狭い宙域である。昔からミョルジ家の支配下にあり、ミョルジ家が銀河皇国中央部に進出する際の、補給拠点となっていた。
 宙域の領主はミョルジ一門のブラグ・ジルダン=アターグ。父親はナーグ・ヨッグ=ミョルジが誤って暗殺した弟の、フーバン・イスケンデル=アターグ。ミョルジ家と姓が違うのは、アルワジ宙域最大の独立管領であった、アターグ家の養子に入ったためだ。この養子縁組によってミョルジ家は、アルワジ宙域の支配権を得たのである。


ノヴァルナ・ダン=ウォーダはここにいた―――


 現在ヤヴァルト宙域のナグオーク・キヨウ星系で戦っている、仮面のは二人とも影武者であった。

 彼等に現地での戦術を授けた本物のノヴァルナは、ミョルジ家討伐部隊を大規模な“陽動”に使い、正式に家臣となった宇宙海賊『クーギス党』と共に、このアルワジ宙域へ潜入した。その目的はこの宙域にもう一人の星帥皇、エルヴィス・サーマッド=アスルーガがいるという、ヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガからの情報を得て、彼と直接会うためだ。無論、どのような出会いとなるかは予想もつかず、“命懸けのアポなし突撃”というわけである。



 今回の『クーギス党』の編制は『ラブリードーター』と、『プリティドーター』の輸送艦二隻。それに四隻の貨物船と、高々度ステルス艦―――潜宙艦が一隻。潜宙艦はかつてヴァルキス=ウォーダが治めていた、アイノンザン=ウォーダ軍のものであった。四隻の貨物船がいるのは、小規模な恒星間運輸企業を装っているためであり、それぞれの船倉にはカモフラージュとして、希少鉱物の詰まったコンテナが搭載されている。

 旗艦は改造高速輸送艦の『ラブリードーター』。こちらの船倉には『センクウ・カイFX』が格納されているが、機体はこれだけではなく『サイウンCN』と、二機の親衛隊仕様『ライカSS』も一緒にいる。つまりノヴァルナの妻のノアと、彼女の護衛としてメイアとマイアの双子姉妹も、同行しているという事だ。
 さらに『ホロウシュ』の代わりにノヴァルナの護衛役として、カーズマルス・タキーガーとその配下の特殊陸戦隊が付いていた。

 旗艦『ラブリードーター』の艦橋で、「着いたよ。殿様」とノヴァルナに声を掛けた、『クーギス党』副頭領のモルタナ=クーギスは、さらに確認の問いをする。

「最初の目的地は、ユラン星系でいいんだね?」

 それに対してノヴァルナは頷いて告げる。

「おう。そこで現地協力者と落ち合う」
 
 いきなりエルヴィスに会うにしても、初めて訪れた宙域である。右も左も分からない状況では、さすがのノヴァルナでもどうしようもない。
 そこで元はミョルジ家の重臣であった、ヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガが手を回し、事情に詳しい者をノヴァルナの協力者として、手配してくれていたのである。

「ユラン星系は…っと」

 モルタナは航法用スクリーンに、アーカイブからアルワジ宙域の宇宙地図コスモチャートを呼び出し、ユラン星系を検索する。ものの十秒も経たずして、宇宙地図にユラン星系の位置と自分達の現在位置、さらに最短コースの航路と、所要時間等の情報が表示された。

「ここからの距離は直線距離で約350光年…。だけど途中に、強力な放射線を出してるパルサーがあるから、これを回避しながらDFドライヴを繰り返して、一日半程度ってところだね」

「おう。早速向かってくれ」

「あいよ」

 正式にウォーダ家の家臣となった以上、ノヴァルナとの間に主従関係が発生しているモルタナだが、対等な言葉遣いであった。これはノヴァルナからの要請であったのだが、あくまでもこういった内輪の状況下にある場合であって、ウォーダ家の公式の場では、他の家臣と同じように臣下の礼を取っている。

 ノヴァルナはモルタナに指示を出すと、艦橋奥にある『ラブリードーター』のラウンジへ向かった。そこにはノアとカレンガミノ姉妹。カーズマルス・タキーガーに、事務補佐官のジークザルト・トルティア=ガモフがいる。

「ユラン星系に着くのは、明日の終わりぐらいになりそうだ」

 ラウンジに入るなりそう告げたノヴァルナは、ソファーに座るノアの隣に腰を下ろした。ノアは気にしている事を口にする。

「協力者という人…信用がおける人物だといいんだけど」

 ノアの懸念は、要はその協力者を手配したという、ヒルザードの人格に対するものだ。しかしノヴァルナは、「大丈夫なんじゃね」と、軽い調子で応じる。

「またそんな適当な…」

 溜息交じりに反応するノア。ただ同席しているカーズマルスも、ノヴァルナに賛意を示す。

「マツァルナルガ殿は確かに信用の置けない人物ではありますが、このような事で誰かを罠に嵌めるような、そういった信用の置けなさではないと思います。ここは信じてよいのではないかと…」

「タ・キーガー殿がそう言うなら、信じると致しましょう」

 ノアの言葉を聞いて、ノヴァルナは「なんか気に入らねー言い方だな」と、口を尖らせた。




▶#02につづく
 
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