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第12話:天下の駆け引き
#12
しおりを挟むミディルツの問いにノヴァルナは当面、ウォーダ家独自で臨時編成のヤヴァルト宙域恒星間防衛艦隊を駐屯させ、皇都防衛の任にあてる事を告げた。そしてノヴァルナはさらに続ける。
「こっちはミディルツ、おまえに任せる。おまえなら星帥皇室や貴族の扱いにも、慣れてるだろうからな。連絡係としてもアテにさせてもらうぜ」
問うた自分にお鉢が回って来るとは思っていなかったのか、ミディルツは少々、声を上擦らせて返答した。
「はっ!?…ぎ、御意にございます」
これまでミディルツは重巡戦隊の司令官であったが、それが臨時編成とは言え、皇都惑星キヨウを中心にヤヴァルト宙域を防衛する、恒星間防衛艦隊の司令官への異動は、大きな昇進であって大抜擢と言っていい。
それに“連絡係”という部分をノヴァルナが強調したのは、星帥皇室とそれを取り巻く貴族達との交流だけでなく、情報収集―――つまりスパイとしての役割も、期待されている事を示していた。
無論、察しのいいミディルツであるから、自分に期待される役割を、正しく理解している。新参者でありながら僅か数ヵ月の短期間に、異例の―――おそらく他の星大名家では、あり得ないレベルの出世を果たしたという事は、これからそれに見合うだけの働きをしろ…という意味に他ならない。自分の実力が本当に試されるのは、これからなのだ。
“これが…ノヴァルナ・ダン=ウォーダというお方………”
ミディルツは斜め前を歩くノヴァルナの後姿を見詰め、最初に出逢った八年前からすると、幾分広くなった額に汗が滲んで来るのを感じる。
やがてノヴァルナが総旗艦『ヒテン』の執務室へ入ると、そこにはナルマルザ=ササーラやトゥ・シェイ=マーディン。カーナル・サンザー=フォレスタに、ヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガなどの面子が揃っていた。
するとノヴァルナは彼等に、10月の終わりには一旦ミノネリラへ帰還する事、帰還後に軍の大再編を行う事を告げる。特に宇宙艦隊は元来の領地オ・ワーリ宙域に加えミノネリラ宙域、そしてオウ・ルミル宙域で、ロッガ家が支配していたエリアの大半を手に入れた事で、それらの地で手に入れた戦力も合わせ、基幹艦隊を三十六個にまで増加。これを四つの軍団に分ける、軍団制にするという。
「三十六個基幹艦隊、四軍団制ですか…全盛期のイマーガラ家を、超える規模となりますな」
シルバータが感慨深げに言う。三年前の“フォルクェ=ザマの戦い”までは二十八個基幹艦隊を擁し、“戦国最強”を謳われたイマーガラ家…。三年を経てノヴァルナのウォーダ家は、早くもその規模を超えようとしている。
シルバータの言葉にノヴァルナは、「アッハッハッ…」と笑い声を上げ、不敵な笑みで応じる。
「まぁ、今はまだ寄せ集めだから、“戦国最強”を名乗る気はねーがな」
確かに分裂時状態であったウォーダ家を統合、イマーガラ家を撃退してミノネリラ宙域へ進攻し、これを併呑。さらには上洛戦で、オウ・ルミル宙域も支配下においたノヴァルナだが、これらを僅か四年弱で成し遂げたため、戦力は増えたが、その編制には統一性を欠いているのが現状だ。
事実、キヨウ上洛軍はウォーダ軍の艦艇と、艦載機で統一されていたが、ミノネリラ宙域とオ・ワーリ宙域に残った留守居部隊は、半数以上が降伏・接収したイースキー軍の装備であった。ノヴァルナの告げた大規模な軍の再編は、これらの装備も、段階を踏んでウォーダ家の装備に差し替えると共に、ウォーダ軍の装備そのものも、ミノネリラの技術との融合による革新を図るものだ。
そしてその計画はすでに一部が実行に移されており、ウォーダ軍の主力BSIユニット『シデン・カイ』は、イースキー軍の主力BSIユニット『ライカ』と、開発中であった次期主力BSIユニット、『CCX-44』の技術との融合が進められていた。これはセンサー類が強化された『シデン・カイMk.Ⅱ』として、従来の『シデン・カイ』と、並行調達が進められる予定である。
「おまえらも、これからもっと忙しくなるからな」
執務机に両手を置いたノヴァルナは、居合わす家臣達を見渡して言い放った。それはノヴァルナが自分に付き従う者全員に、まだ歩みを止めていい時ではないという事を示している。
「御意」
居合わす武将達は声を揃えた。そこで眼差しを強くして、ノヴァルナはさらに決意の一端を口にした。
「で…この際、俺達の“パワーワード”っていうか、合言葉も考えといたんで、これからは機会がある度に、それをアピールするように」
「は?…はい。その合言葉とは?」
マーディンが促すと、ノヴァルナは一拍置いて、やや強い口調で告げる。
「銀河布武!」
「!!!!」
主君の口から飛び出した大胆な言葉を聴き、武将達は一瞬息を呑んだ。“銀河布武”―――“武力によって銀河を仕切る”…それは未だかつて、どんな星大名も公に口外することは無かった、傲慢ともとれる指標であったからだ。
居合わす武将達もそれぞれの反応を、顔に浮かべる。賛同…不安…疑念…そして反発…それらの様々な表情を一瞬で眼に留めたノヴァルナは、胸を張っていつもの高笑いを放った。
「アッハハハハハ!!」
▶#13につづく
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