銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#22

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 戦場に出現したそれ・・に最初に気付いたのは、“三人衆軍”の左翼に陣取っていた、ビルティー=ガヴァラの第7艦隊である。スキンヘッドの頭部に四本の短い角を生やし、薄緑色の肌をしているロキダウ星人のガヴァラは、左舷側一番端に位置する駆逐艦からの連絡に、最初は眉をひそめた。その駆逐艦が伝えて来たところによれば、左舷後方から大量の暗号通信が発信されているのを、傍受したというのだ。

「また暗号通信だと?…それは本当か?」

 ガヴァラが疑いの眼を向けるのも無理はない。つい数時間前にも、皇国側は偽の暗号通信を使って、増援が溶着したように見せかけたばかりだ。

「むぅ…同じ手を二度続けて使うとは、考え難いが…」

 ガヴァラの艦隊は、緒戦でフジッガの艦隊と砲火を交え、相応の損害をすでに出している。さらにこの男はオルグターツ=イースキーと同じく、元からミョルジ家に仕えていた武将ではなく、外部から来た客将だった。

 ビルティーの生家ガヴァラ家は、かつてはシナノーラン宙域に領有星系を持つ、いわゆる独立管領である。
 しかし今から約七年前、シナノーラン宙域の征服統一を目指して侵攻して来た、隣国カイ宙域の星大名シーゲン・ハローヴ=タ・クェルダの、炎の如き圧倒的な侵略の前に為す術もなく敗退。領有星系を失って銀河を放浪する事となった。そして三年前に三人衆からの勧誘を受け、ミョルジ家に拾われる形で客将として迎えられたのだ。

 こういった経緯もあり、ガヴァラはミョルジ家、特に“ミョルジ三人衆”に対して、大きな恩義を感じていた。緒戦でオルグターツと共に先陣を切ったのも、その恩義に報いるためである。その気持ちが今回は慎重な方向へ出た。傍受した暗号通信の件を三人衆の本陣へ通報するならば、正確な情報であるべきだと考えたのだ。

「当該駆逐艦に、更なる情報収集を求めろ」

 そう命じるガヴァラだったが、この考えが裏目に出た。暗号通信を傍受した駆逐艦に、更なる情報収集に努めよと指示した直後、その駆逐艦からの通信が途絶したのだ。この駆逐艦が撃破されたのを確認した時には、すでにガヴァラの座乗する旗艦の長距離センサーでも、敵の増援艦隊の出現が補足されていた。ガヴァラは出現した敵増援の識別信号を見て、複雑な表情をする。それは三人衆が見捨てたミョルジ家の本来の当主、ヨゼフ・サキュダウ=ミョルジの識別信号だったからだ。

「待っていたぞ、我を見捨てた裏切者ども!!」

 ヨゼフは旗艦の司令官席から身を乗り出して叫んだ。
 
 ヨゼフ・サキュダウ=ミョルジは、自死したとされるナーグ・ヨッグ=ミョルジの跡を継ぎ、ミョルジ家の当主を務めていた。
 しかしその実態はまだ年齢が若かった事もあり、“ミョルジ三人衆”とヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガに、政治の実権を握られているお飾りでしかなかった。
 そしてノヴァルナ率いるウォーダ軍が、ジョシュア・キーラレイ=アスルーガを擁して上洛して来ると、ヒルザードはノヴァルナに寝返り、“ミョルジ三人衆”はあろうことか、当主であったヨゼフを置き去りにして、故国のアーワーガ宙域へ撤退してしまったのだ。

 残されたヨゼフには自力で逃げ帰る宇宙船すらなく、根拠地のアクターヴァン城をノヴァルナ軍に包囲されると、降伏するよりほかに手はなかった。三人衆は未熟なヨゼフを見捨て、足止めに使ったのである。

 ただ運が良かったのは、降伏して来たヨゼフに対して、ノヴァルナが寛大であった事だった。ノヴァルナは新たに星帥皇の座に就いたジョシュアに働きかけ、銀河皇国としてヨゼフこそを、ミョルジ家主筋の後継者とし、三人衆が逃げ去って空白地となった、カウ・アーチ宙域の一部を領地として与えられたのだ。

 こうして九死に一生を得るどころか、望外の厚遇を与えられたヨゼフは、ヤヴァルト宙域とその周辺に取り残されていた、ミョルジ家の残存勢力を領域に集めて、即座に軍備の再建に入る。“ミョルジ三人衆”を知るヨゼフは、具体的な根拠は無いものの、彼等が遠からず再侵攻して来る可能性を考えており、これを復讐の機会と捉えていたのだ。そのため今回の“三人衆軍”の侵攻に対し、周辺勢力の中ではタクンダール家に次いで、即応出来たというわけだ。

 すでに三人衆側の最左翼にいた駆逐艦を屠り、戦闘態勢を整えていたヨゼフ艦隊は、矢のように突撃を仕掛けた。

「全艦! 我々を見捨てた三人衆を、逃がすな!!」

 煽るよう命令を全周波数帯で発するヨゼフ。当然ながらこれは三人衆側でも受信される。些か冷静さを欠くような発信だが、これはヨゼフが意識的に選択した方法であった。ミディルツをはじめとする皇都防衛の主力艦隊は、かなりのダメージを負っている状況であり、自分達の到着を大々的に告げる事で、敵の注意を引き付けると同時に、味方全体を鼓舞する効果を狙ったのである。

「戦艦戦隊。砲撃開始! 射程外でもいい!」

 ヨゼフの命令で、各戦艦は主砲の火蓋を切った。
 


▶#23につづく
  
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