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第14話:齟齬と軋轢
#00
しおりを挟む“ミョルジ三人衆”のキヨウ侵攻が、失敗に終わって約半年後。
皇国歴1564年6月のある日―――
ヤヴァルト宙域の辺境部に位置する、ビルガシーマ星系第五惑星ゼバンハ。この惑星最大の都市ヘスパの、深夜のハイウェイを疾走する一台の車がいる。何を急ぐのだろうか。速度制限のリミッターが解除されているらしく、通常では出しえない速度で、三車線を目まぐるしく行き来しながら、他の車を次々と追い抜いて走っていた。もしこれが交通量のまばらな深夜ではなく、通勤時間以降の昼間なら、すぐに追突事故を起こしてもおかしくはない速さだ。
すると高層ビルの間を抜ける高架に差し掛かった直後、高架橋の下から突如として、戦闘用の反重力機が舞い上がって来た。疾走している車の背後である。大昔の戦闘ヘリコプターに似た形状の機体前方、コクピットの下部にある地上掃射ブラストキャノンが、獲物を求めるように上下左右に長い銃身を動かす。
「クソっ! 待ち伏せされていたのか!!」
車の中、助手席に座るスーツ姿の若い男が、緊迫した声で言う。見た目はどこかの商社マンのようであったが、その眼つきは分かる人間には、軍人のそれだと分かるはずだ。そして運転席に座る赤いドレスの女性も然りである。男は膝の上に置いていたブリーフケースを開いた。中身は何かの装置で埋め尽くされており、そのメインスイッチを作動させる。
その二人が乗る車に向け、上空の反重力機がブラストキャノンを、連続で撃って来た。咄嗟にハンドルを切る女性。放たれたビームは高速道路の路面に、ミシンを掛けるように小さな爆発を連続させる。だが緊急回避を行った車には命中せず、照明灯の一本を根元からへし折っただけだった。男がブリーフケースに入れていた機器は電子妨害装置であり、これが反重力機の照準センサーに誤情報を与えたのだ。
ただ反重力機の方も、すぐに対抗装置を起動させたようだ。二度目の銃撃が車のボンネットを貫き、エンジンを破壊する。横滑りしながら急停止する車。助手席の男は運転席の女性に声を掛ける。
「ここは自分が囮になります。大尉は光学迷彩を作動させて離脱を!」
そう言ってハンドブラスターを握り、ドアを開け放して飛び出していく助手席の男。一方運転席にいた女性―――ウォーダ家情報部の大尉は、ブレスレット型の光学迷彩装置のコントローラーを起動。主家に重要情報を届けるため、透明化したその身を、開け放たれたままの車のドアから路上へと進み出す。
退避用非常階段に向かう彼女の背後では、助手席にいた部下の男が走りながら、上空の反重力機にハンドブラスターのビームを放っていた………
▶#01につづく
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