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第15話:カノン・ガルザック撤退戦
#13
しおりを挟む覆りつつある戦況。しかしそんな中でもフェルデーサは奮闘している。“リベリオン中隊”に仕掛けて来た、マガラン配下の『ハヤテGC』四機小隊に応戦中の十六機の中心的な役割を果たしていた。
「“02”! このままでは埒が明きません。一機は私が一人で引き付けますから、あとは五機でお願いします!」
超電磁ライフルのトリガーを引きながらフェルデーサは言う。その銃口の先にいるのは一機の『ハヤテGC』だ。素早く機体をスクロールさせて、銃撃を難なく回避する。そこへポジトロンパイクで斬りかかる『シデン・カイXS』から、返答の通信が入った。
「無茶だ“03”! こいつら、四機がかりでもしんどい相手なんだぞ」
フェルデーサは現状の敵一機に対し、味方四機でどうにか互角に戦っている状況で、自分一人で敵一機を引き付けるから、残り三機を他へ振り分けろ、と言っているのである。
斬りかかって来た『シデン・カイXS』のパイクの刃を、ポジトロンランスで打ち払った『ハヤテGC』は機体を加速移動させた。それを二機で追いながら、フェルデーサは嘆願する。
「大丈夫です。相手を他の仲間の援護に行かせないように、引き留めるだけですから、やれます。やらせてください!」
「………」
副指揮官機の“リベリオン02”は思考を巡らせた。ただ考え込んでいるような時間は、この喫緊の戦況には無い。追っていた『ハヤテGC』の前方に、味方の量産型『シデン・カイ』が二機、高速で回り込んできて超電磁ライフルを構える。だがそれより早く、『ハヤテGC』はライフルの牽制射撃を行うと、今度は九十度ダイブで回避行動を続けた。
「功を焦って、言ってるんじゃないよな?」
「もちろんです!」
“リベリオン02”の問いに即答したフェルデーサは、やや軽い口調で冗談めかして付け加える。
「死なないよう努力しますから、できるだけ早く助けに来て下さい!」
“リベリオン02”の副指揮官は「わかった」と応じ、チームを組んでいた残る二機に命じた。
「“14”、“15”。ここは“03”に任せる。ついて来い」
飛び去る仲間の三機を一瞥し、一人となったフェルデーサは『ハヤテGC』のあとを追う。スロットルを全開にすれば、『シデン・カイXS-TF』は、通常の親衛隊仕様機よりもさらに高い加速率を得られる。重力ダンパーでも抑えきれないGに、パイロットスーツの背中がシートに押し付けられるのを感じた。次第に大きくなる敵機の後ろ姿に、自然と声が出る。
「待ちなさい!」
自分より高速で追尾して来る、フェルデーサの『シデン・カイXS-TF』に気付いた『ハヤテGC』は、後方を振り向きざまに超電磁ライフルを一連射した。
機体を旋回させるフェルデーサの『シデン・カイXS-TF』の脇を、一連射八発の銃弾が、ギリギリの距離で通り過ぎてゆく。
“いい照準。操縦の技量も高い…でも!”
銃弾回避に機体を激しく捻り込ませながら、フェルデーサは視覚の中で敵の『ハヤテGC』の動きに、別の機体の動きを重ね合わせた。半年前の模擬戦で戦った、トゥ・シェイ=マーディンの機体機動だ。あの時、全く歯が立たなかったマーディン機の動きは、およそ半年経った今でも、鮮明に覚えている。
“あの時のマーディン様ほどじゃない!”
追って来た相手が、『シデン・カイXS-TF』一機だけになった事に気付いたのか、『ハヤテGC』は一拍置いてフェルデーサに向かって来た。舐められたと怒りを感じたからなのか、深追いして来た自分を罠にかかったとほくそ笑んだのか、フェルデーサには分からない。
ライフルを撃ちながら加速、反転攻勢を仕掛けて来る『ハヤテGC』。こちらが回避運動に入る間に、距離を詰める意図を感じるのは、機体の性能差を接近戦の技量で覆す自信があるのだろう。
右手のライフルで撃ち返しながら、フェルデーサは左手でバックパックに固定されていた、ポジトロンパイクを掴み取る。『シデン・カイXS-TF』のコクピットに展開されている、照準センサーのホログラムスクリーンに、ポジトロンパイク用の近接戦闘照準モードが自動で追加された。
これに対して敵の『ハヤテGC』も、格闘戦用の装備を手にする。こちらはポジトロンランスだ。通常の鑓よりも長く感じる。接近戦が得意なパイロットは、パイクよりも長いランスを好む。やはり接近戦が侮れない敵のようだ。
間合いを詰めて来た『ハヤテGC』は、至近距離からライフルを放つと、次の瞬間にはフェルデーサの視界から消えた。銃撃を回避するため視線を切った、刹那を突いたのだ。ただフェルデーサは、敵機の動きを“感じ取って”いる。サイバーリンク機能を特化させた、『シデン・カイXS-TF』ならではの感覚だ。
咄嗟に機体を左方向へ回転させるフェルデーサ。その元いた位置にポジトロンランスを突き出した『ハヤテGC』が急降下。さらに九十度ターンで『シデン・カイXS-TF』に向け、追撃の刺突を繰り出す。これを読んでいたフェルデーサは、ポジトロンパイクで素早く鑓の穂先を弾き防いだ。
▶#14につづく
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