銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第16話:アネス・カンヴァーの戦い

#12

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 左右から胴斬りを狙って来る二機の『ハヤテGC』。並の相手であるなら、必殺の間合いであった。超高速で繰り出されるクァンタムブレードが、量子分解フィールドを帯びた刀身を、青く輝かせる。
 だが『カヅノーVC』は後ろを振り返る事無く、背後に回した『ドラゴンスレイヤー』を“∞”形に素早く振り回し、短く持った石突き側の柄で、二本のブレードを纏めて弾き飛ばした。

 二機の『ハヤテGC』はすぐに体勢を立て直して、『カヅノーVC』に食い下がろうとする。そこへカウンターで繰り出されるティガカーツの、ポジトロンランスによる連続突き。

「!!!!」

 咄嗟に操縦桿を引いて回避運動へ入ろうとする、『ハヤテGC』のパイロット。しかし無数の残像を生じさせるほど素早い、『ドラゴンスレイヤー』連続突きに、二機の『ハヤテGC』のボディは、ザクリ、ザクリと切り裂かれる。

「むぁあああっ! 馬鹿なぁっ!!」

 操縦技量の限界を超えるティガカーツの連続突きを躱しきれず、叫ぶパイロットの周囲で爆発が起こり、二機の『ハヤテGC』は閃光に包まれた。
 そしてそこから背後を振り返った『カヅノーVC』が、超電磁ライフルを連射。後ろから斬りかかろうとしていた、量産型『ハヤテ』二機を同時に撃破する。
 しかしそれでも次々と押し寄せる、アザン・グラン軍のBSIユニット。タイミングを計っていた十機の量産型BSIユニットが、『カヅノーVC』の頭上に展開し、一斉に超電磁ライフルを撃ち下ろして来た。味方の四機の格闘戦の間に、『カヅノーVC』上空の好射点を得たのだ。

 無数の銃弾が、亜光速の豪雨となって降り注ぐ。だがその中を高速で潜り抜けるティガカーツの機体には掠りもしない。上から放たれる銃弾の軌道を樹木に例えるなら、まるで密林の中を駆ける小動物のように、小刻みな急速ターンを繰り返して回避する。

「くそっ! これだけ撃って当たらないだと!!??」

 焦りの声を上げるアザン・グラン軍パイロット。そこから『カヅノーVC』は機体を仰向けにして、超電磁ライフルを撃ち返した。逆に二機、三機、四機、と命中弾を喰らって砕け飛ぶ量産型『ハヤテ』。残った『ハヤテ』はたまらず散開した。するとティガカーツは機体を急加速。一番近くにいた『ハヤテ』に間合いを詰め、素早く『ドラゴンスレイヤー』を振り抜いた。長く伸びた鑓先の刃が、機体を深く切り裂いて、致命傷を与える。
 
 ティガカーツの『カヅノーVC』を止められない、アザン・グランFTF部隊に生じた混乱を、イェルサス直卒のトクルガル第1艦隊が見逃すはずはない。

「艦長。『ショウカク』を前進させてくれないか。できれば艦にトラブルが起きたような感じで」

 落ち着いた口調で指示を出す、イェルサスの意図に気付いた艦長は、「宜しいのですか?」と確認の問いを口にした。「もちろんだ」と応じるイェルサス。

 指示を受け、総旗艦『ショウカク』は艦列を出て、単独で前進する。これを見たFTF部隊の宙雷艇は、ここまでの攻撃で、推進部に制御不能の事態が発生したために、『ショウカク』が艦列から飛び出したと考えた。この機を逃してはならないと、残存艇の全てが襲撃行動を取ろうとする。
 ところがこれは、総旗艦『ショウカク』自身が囮となって、敵を誘い込む戦術であった。BSIユニットがすべて、『カヅノーVC』との交戦に巻き込まれて、宙雷艇への援護が出来なくなった事で、『ショウカク』以外の艦に自由な迎撃が可能となったのである。

「総旗艦を集中防衛。近付けさせるな!」

「撃て、撃て、撃て!」

 第1艦隊の各艦がビームと誘導弾を放つ。無論『ショウカク』自体もだ。大量投射される迎撃火力に、技量の高いFTF部隊の宙雷艇隊も被害が続出。またティガカーツの『カヅノーVC』ただ一機にの前に、BSIユニット隊は全滅寸前となっていた。

「く…駄目だ。撤退する!」

 ここに来てFTF部隊総指揮官は撤退を決意。三つの部隊に残存する宙雷艇に、残りの宇宙魚雷の全弾発射を指示し、宙雷艇隊とBSI隊へ引き上げを命じたのであった。



 すると敵のこの動きにイェルサスは自軍に対し、全面攻勢に出るよう命令を発する。今のFTF部隊の襲撃を、アザン・グラン軍の攻勢限界点だと、見抜いたためであった。つまりアザン・グラン側は、FTF部隊によるトクルガル軍総旗艦撃破を、勝利への決定打としようとしていたのだが、これが撃退されたため、積極的な攻勢に出る事が出来なくなったというわけだ。

 ただこれで戦局の行方が決まったのではない。アーザイル軍と戦っているウォーダ軍はいまだ苦戦中であり、再び押し返される可能性もある。

「全軍前進。アザン・グラン軍とアーザイル軍の間に、楔を打ち込むんだ!」

 イェルサスが総旗艦の艦橋で強い口調の命令を出すと、母艦に帰投したばかりのティガカーツも、整備班に補給の要請を告げる。

「またすぐに出るから、補給、急いで!」



▶#13につづく
 
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