銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第17話:銀河に脈打つ謎

#17

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 カートライトが、ノアを口説こうとしたのかどうかはともかく、“メラガーム独立軍”の事を聴いたノアは、「なるほど、わかりました」と返事をしながらも、内心で眉をひそめる。
 ウォーダ家当主の妻であるから、ノアも“メラガーム独立軍”の名は、以前から知っていた。有力な宇宙海賊の一つで、アン・キー宙域星大名のモーリー家に従属しており、予備軍的位置にある事もだ。しかしその“メラガーム独立軍”が、アーワーガ宙域のこのような所にまで、進出していたとは意外であったのだ。

“どういう事かしら?…”

 アーワーガ宙域は“ミョルジ三人衆”の本拠地宙域である。このイルクルス星系周辺は旧モルンゴール帝国領であり、三人衆の勢力もそれほど及んでいないが、それでも“メラガーム独立軍”の勢力圏とされる、アン・キー宙域やス・ヴォル宙域からは、遠く離れ過ぎている。
 この“メラガーム独立軍”の出現に関する疑念は、カートライトも抱いたものであった。ただノアが、この疑念を口にする事はない。あまり詳しくカートライトと質疑応答を繰り返すと、自分の素性が露呈するからだ。突然の襲撃に対するここまでの行動で、身分がある程度バレてしまっているという自覚はあるが、まだ大っぴらに明かすつもりは無いからだ。

「それで? この船は予定通り、イルーク人の母星へ向かって頂けるのですか?」

 “メラガーム独立軍”についての話より、本来の目的地への到着について問い掛けるノアに、カートライトも空気を読んで応対する。

「第五惑星イルサムかい? 勿論そのつもりだが、さっきスーパーターボを使ったせいで、明後日の方角にかなり飛んだからな。航法計算をやり直す必要がある。半日ほどは到着が遅れるかも知れん」

「了解です。それで構いません」

「だが、またメラガームの連中と、出くわす可能性もある」

「その時は、この星系からの撤収も含め、判断をお任せします」

 ノアの回答にカートライトは、満足げな表情を浮かべて「オーケーだ」と応じ、操縦室へ戻って行った。ドアが閉じるのを見て、P1-0号が報告する。

「今のカートライト船長が仰せになった、“スーパーターボ”という名の重力子過剰圧縮チャージャーですが、この『ジュエルダガー』号の基となった、クレセント型恒星間クルーザーには、装備されていない装置です」

「違法改造、という事ですか」

 呆れるように言うノアの言葉に、女性『ホロウシュ』達が顔を見合わせる。そこに興味深そうな声の響きで、テン=カイが告げた。

「なるほど、カートライト殿らも、“同じ穴のムジナ”というわけですか」

 再計算の結果、『ジュエルダガー』号はやはり、目的地の第五惑星イルサム方向ではなく、第八惑星メヴィラ方向へ大きくコースを逸脱していた。時間的にはおよそ、七時間のロスといったところだ。

 薄水色をした第八惑星メヴィラが、豆粒ほどの大きさで、『ジュエルダガー』の外部ビュアーに映し出されている。船が第八惑星メヴィラに向かったままでいるのは、ここで第五惑星イルサム方向に舵を切るより、メヴィラへ直進し、その重力場でスイング・バイを行った方が、重力子推進系には通常よりも、大きな加速をかける事が出来るため、結果的により早く第五惑星イルサムに着くからだ。

 ところがこのコース取りが、予期せぬ事態を招いた。『ジュエルダガー』号が向かっている方向からの、救難信号を受信したのである。カートライトに呼ばれて操縦室へ入ったノアに、状況が説明される。

「位置は第八惑星メヴィラの裏側。俺達の船のコースからは少し離れている。通常電波での救難信号だったんで、この位置に来るまで、惑星の陰で受信出来なかったようだ」

 カートライトの報告に、ノアが問い掛ける。

「信号を出している船については?」

「不明だ。救援要請だけを繰り返してるから、たぶん自動的に、発信してるんだと思う。無論…罠の可能性も否定できないがな」

 カートライトの懸念も当然であった。この星系に転移した途端襲って来た“メラガーム独立軍”の仲間が、偽の救難信号を出して、待ち伏せしている事も考えられる。

「でも、逆に考えれば、その独立軍に襲われた船が他にもあって、それが救難信号を出している可能性もあるわけですね?」

「それは勿論そうだ」

「この船に武装は?」

 “スーパーターボ”の件で推進機同様、隠し武装があるのではないかと、触れるノア。しかしカートライトは首を左右に振る。

「流石にそれは無い。救難信号を出している船を救助するのは、宇宙船乗りの義務なんだが、ここまでの状況が状況だし、お客さんの判断も聞かないとと思ってな」

「わかりました。では、救援に向かいましょう。ただし、充分に警戒を」

 的確かつ即答のノアに、カートライトは小気味良さげな表情を見せ、セランはマニスに顔を向ける。するとマニスは、ごもっとも…と肩をすくめた。

 そして約一時間後、『ジュエルダガー』号は救難信号を発信している船を、光学認識できる位置に達する。だがその信号を出していた船を見て、カートライト達は別の意味で驚きを覚えたのだった。




▶#18につづく
 
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