銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第18話:閉じられし罠

#04

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 皇国暦1565年4月5日早朝。後方の宙域で様々な勢力が蠢動を始める中で、ノヴァルナ率いるウォーダ軍は、セッツー宙域ナーグ・ジヴァン星系にて、“ミョルジ三人衆”軍との戦端を開いた。

 先陣を切るのは、カッツ・ゴーンロッグ=シルバータの第7艦隊。正面突破力では、ウォーダ軍随一である。

「全艦全速前進。初手から最大戦速で仕掛ける!」

 艦隊旗艦『セルゼーレ』の艦橋で、仁王立ちになったシルバータは、強い口調で命令を発した。それに応じ、第7艦隊に属する八十四隻の艦が、一斉に重力子ノズルを黄色い光で大きく輝かせる。

 そんなシルバータ艦隊が急速前進を始める様子を、戦術状況ホログラムで見ていたのが、この両側に配置されていた第8艦隊司令官トゥ・シェイ=マーディンと、第19艦隊司令官のヨヴェ=カージェスであった。かつてノヴァルナの親衛隊である、『ホロウシュ』の同期であった二人は、通信回線を開いたままにしている。

「相変わらずだな、シルバータ様は」

 第8艦隊旗艦『アロンゲート』の司令官席に座するマーディンは、通信ホログラムから聞こえるカージェスの声に、苦笑いの成分が混じっているのを感じ、同調の笑みを浮かべて応じる。

「まぁ、あれがあの人の持ち味だからな。ノヴァルナ様のそのおつもりで、先陣中央に配置されたのだろう」

「それで、どうする? 俺達は」

 問い掛けて来るカージェスにマーディンは、背もたれに預けていた上体を起こして背筋を伸ばす。

「第7艦隊の左右後方に付いて続くさ。それがノヴァルナ様が俺とおまえを、シルバータ様の両翼に置かれた理由だろうからな」

 マーディンの回答を聞いたカージェスは、「だな」と頷いて自分の艦隊参謀に命じる。

「艦隊前進。第7艦隊の左後方に付けろ。位置は任せる」

 通信ホログラムの向こうでは、マーディンが第7艦隊の右後方へ位置を取る、同様の命令を発するのが聞こえて来た。

「じゃあ、マーディン。あとでな」

 カージェスの呼び掛けに、マーディンが「ああ。武運を祈る」と応じる。旗艦同士の通信回線を切った二つの艦隊は、一気に速度を上げて、シルバータ艦隊の後を追い始めた。その前方ではすでに、激しい砲撃戦が開始されている。

「戦艦部隊、主砲射撃開始。そののち対艦誘導弾、第一波一斉発射」

 マーディンは凛とした口調で告げると、左手で手首を握った右手をコキリと鳴らし、付け加える。

「艦載機発進時には、私も『テンライ』で出る。準備を頼む」
 
 マーディン艦隊とカージェス艦隊の支援を受けた、シルバータの第7艦隊は、如何なく本領を発揮した。

 三人衆軍の先陣はサン=ヌ・クー宙域内の、ミョルジ家勢力圏統治を任されているメシャス=ソーゴと、アーワーガ宙域のミョルジ家代官職を務める、ナグファス=スノラの両艦隊である。ミョルジ家の故国アーワーガ宙域からの援軍の彼等は、ノヴァルナ軍との対戦はこれが初めてで、シルバータ艦隊の正面火力の強さに、圧倒される事となった。

 次々と火球に包まれる宇宙艦。行き交う青と緑の曳光ビーム。まとめて飛んでいく複数の対艦誘導弾は、まるで小魚の群れのようだ。

「艦隊針路288マイナス06。左舷回頭中の敵重巡戦隊に射撃を集中せよ」

 猛禽類のような眼で戦術状況ホログラムを睨み付け、敵艦隊の動きを見逃さないシルバータが指示を出す。そこへ問い掛ける機動戦参謀。

「後方の空母部隊からの、艦載機の発艦は如何します?」

「いつも通りだ。この突撃を終えたあとでいい」

 猪突猛進のイメージが強いシルバータだが、BSI部隊の運用については、意外と慎重な部分があった。この辺りはシルバータ自身も、BSIパイロットであるからだろう。そこに飛び込んで来る、オペレーターからの報告。

「右舷前方。敵旗艦部隊!」

 それはメシャス=ソーゴの座乗艦を含む、六隻の戦艦戦隊であった。突撃の効果で双方の先鋒が、混戦となった結果である。機に乗じすかさず命じるシルバータ。

「集中砲火だ。護衛の宙雷戦隊も、突撃させろ!」

 旗艦『セルゼーレ』と五隻の戦艦が主砲を放つ。その下側を同航していた宙雷戦隊が、大きく舵を切ってソーゴの旗艦戦隊へ向かった。宇宙魚雷の統制雷撃を行うためだ。
 ところがそこへ、敵のBSI部隊が殺到して来た。ソーゴの戦艦部隊から発進していた直掩隊である。距離を置いて警戒していたのだろう。突撃を開始し始めた宙雷戦隊には最悪の事態だ。

 しまった、BSI部隊発艦のタイミングを見誤ったか!…と、臍を噛むシルバータ。ここで宙雷戦隊がBSI部隊との乱戦に、持ち込まれるのはマズい。しかしそこへ駆けつけて来る味方がいた。シルバータ艦隊の支援位置にいた、第8艦隊から出撃したBSI部隊だ。指揮を執っているのは、BSHO『テンライGT』に搭乗するマーディンである。

「シルバータ様。敵のBSIは我々に任せて、敵の旗艦を!」

 マーディンからの通信に、シルバータは安堵の息をついて応じた。

「マーディンか! すまん、ここは借りておく!」



▶#05につづく
 
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