銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第18話:閉じられし罠

#11

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「てめぇはマゴディの何だ!?」

 『オロチ』が突き出すパイクの切っ先を素早く弾いて、ノヴァルナはカウンターの斬撃を返しながら問う。これをマゴディは軽快な機体機動で回避、やや間合いを開いて、至近距離から超電磁ライフルを放って応じた。

「俺はおまえが殺したマゴディの子! そして名を継ぎ、今は俺がマゴディだ!!」

「ガキだと!?」

 マゴディが撃った銃弾が、『センクウ・カイFX』の右の側頭部を削る。しかしノヴァルナには怯懦の素振りもない。もう一機の『マガツ』の動きにも目配せをしながら、反撃のトリガーを引く。ただマゴディの方もこれを難なく躱した。

「ああ。そして俺はモルンゴール人じゃなく、人間だ」

「!!??」

 傭兵惑星サイガンでは、有力な傭兵は本名の他に、職業用のいみなを持つ風習がある。ノヴァルナは『センクウ・カイFX』の操縦桿と、フットペダルを目まぐるしく操作しながら、その事を思い出した。つまり“マゴディ”という名は個人の名前ではなく、“屋号”や“商号”のようなものだという事だ。そうであるなら、モルンゴール星人ではなくヒト種が、その名を継ぐ可能性も無くはない。

 だが今のノヴァルナに、それ以上の詮索をしている余裕は無い。

「というワケで、前置きは終わりだ!!」

 ギラリと両眼を鋭く輝かせたマゴディが、『オロチ』のスロットルを全開にし、最大加速をかける。一瞬で間合いを詰めて瞬きの間に、すでにポジトロンパイクを振り抜いている。
 鋭敏な反射神経を見せてポジトロンパイクを構え、斬撃を正面から受け止めるノヴァルナの『センクウ・カイFX』。ただ今度の『オロチ』の斬撃は、重さが桁違いだった。ズシン!…と響くような衝撃に、機体が押し込まれる。

 さらにそこから第二、第三の斬撃、これを受け止める度に、『センクウ・カイFX』のコクピットが激しく揺さぶられ、ノヴァルナは歯を喰いしばった。斬撃の重さだけではなく、速さもこれまでとは比べ物にならない。

“チィ! やっぱ今からが本気ってワケかよ”

 これまでにも『オロチ』の同型機や、その他のモルンゴール製BSHOと、戦った経験があるノヴァルナであるから、機体性能的にもこんなものではない・・・・・・・・・はずだと、感じ取っていたのだ。

 しかもノヴァルナの相手は、マゴディの『オロチ』だけではない。これを支援するもう一機の『マガツ』がいる。こちらのパイロットの技量も侮れない。
 
 二機のモルンゴール製BSHOに圧され始めるノヴァルナだが、そんな主君を援護しなければならないはずの、『ホロウシュ』達も個々に分断され、苦戦を強いられている。ショウ=イクマの『シデン・カイXS-ES』による、電子戦フィールドの効果で一方的な苦戦はなんとか逃れているが、『ホロウシュ』全ての機体が、敵BSHOとの一対一の戦いに引き込まれ、足止めを喰らっている状況だ。

 高速移動を続けながら、超電磁ライフルを連射する『ホロウシュ』のタルディ・ワークス=ミルズの『シデン・カイXS』。これに円を描くコースで相対する、敵のBSHOは不規則な機体回転で、ミルズの射撃を悉く回避。逆にピンポイントで反撃した銃弾が左のショルダーアーマー、右脇腹を削り取る。被弾警報が鳴るコクピットで、歯ぎしりするミルズ。

「クソッ! ECMで俺達の方が、有利なんじゃないのか!!」

 対する“サイガン衆”のモルンゴール星人パイロットは、ミルズの機体を嘲るような眼で見据えて言い放つ。

「フハハ。この程度のECM、ハンデの内に入らんわ!」



 そんなミルズの向こう側では、二年前に『ホロウシュ』に抜擢された、女性パイロットのマルサール=ノンノルムが、やはり“サイガン衆”の『マガツ』と死闘を演じている。
 マルサールの流儀は、クァンタムブレードによる二刀流。親衛隊仕様『シデン・カイXS』よりふた回りは大きい、BSHOの『マガツ』に対しても、果敢に斬り込んで行っている。しかしパワーが段違いの『マガツ』の前に、逆に振り回されている状況だった。

「ええい、もっと速くだ!!」

 左右の手に握るQブレードを、残像が生じるほどの速度で連続斬撃するマルサール。しかし相手の『マガツ』は、ポジトロンパイクでその全てを易々と弾く。ここでもモルンゴール星人パイロットは、余裕の表情だ。

「この俺に剣術勝負とは、いい度胸だ。だが―――」

 次の瞬間、身にも止まらぬ速さで傲然と繰り出される、『マガツ』のポジトロンパイク。パワーが乗ったその斬撃は、これを咄嗟に防ごうとした、マルサールの十字に構えたQブレードの刃を、粉々に撃ち砕く。

「きゃああっ!!」

「ブレードで切っ先が浅くなったか。運のいいヤツ!」

 衝撃に叫び声をあげるマルサールに、さらに刺突を仕掛けるモルンゴール星人パイロット。この一撃をマルサールは、へし折れたQブレードでかろうじて受け止めて、即座に超電磁ライフルをカウンターで構える。だがその銃口は、モルンゴール星人パイロットが半回転させて振り上げた、パイクの柄に跳ね上げられた。



▶#12につづく
 
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