銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第18話:閉じられし罠

#10

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「ウイザード21、電子戦フィールド展開。みんな気を付けろ、相手は全部モルンゴールのBSHOだ!!」

 さしもの歴戦のノヴァルナも、声に緊張感の響きがある。おそらくウイザード中隊としては、これまでで最強の敵だ。ノヴァルナの直掩に付いているジョルジュ・ヘルザー=フォークゼムが、注意を促す。

「敵機、来ます!!」

「全機散開! 相互連携と援護で対応しろ!」

 ショウ=イクマの『シデン・カイXS-ES』が、ウイザード中隊各機のECMとリンクした、戦闘エリア全域にわたる電子戦フィールドを展開させる中、ノヴァルナは『ホロウシュ』に個々での対処を命じ、自分も『センクウ・カイFX』の手に超電磁ライフルを握らせると、即座に安全装置を外す。

「みんな、死ぬんじゃねぇぞ!!」

 そう呼び掛けて次の刹那、ノヴァルナは操縦桿を倒し、『センクウ・カイFX』を75度のダイブに入れた。これに遅れず続くフォークゼムと、モ・リーラの『シデン・カイXS』。その三機の背後を、複数の銃弾が通過する。距離を詰めて来た敵の四機のBSHOが銃撃を行ったのだ。一機は一本角の鬼のような『オロチ』、あとの三機は四つ目の肉食獣のような『マガツ』だ。

 機体を翻して、反撃のライフルを一連射するノヴァルナ達。だがこちらの銃撃も当たらない。

「はん! 挨拶代わりってもんさ!」

 冗談とも本気の負け惜しみとも取れる言を放ったノヴァルナは、機体に捻り込みをかけて急角度でターン。敵の四機のBSHOに背後から距離を詰め、再び銃撃を行った。すると四機のBSHOは、思い思いの針路に散開して回避。ノヴァルナの機体に反撃の銃弾を集中させて来る。

 しかしながら、敵の銃弾に当たらないのが、ノヴァルナの操縦テクニックの、真骨頂と言えるものである。様々な角度から一斉に飛来した敵の銃弾を、絶妙なタイミングで行った機体旋回によって紙一重にすべて躱した。するとその間に、ノヴァルナ直掩のフォークゼムとモ・リーラが、『シデン・カイXS』にポジトロンパイクを装備させて、怯む事なく仕掛けていく。これに対して二機の『マガツ』が、ポジトロンパイクを手に素早く前進、刃を打ち合い始める。

 残る二機は僚機に構わず急加速。ノヴァルナの『センクウ・カイFX』との距離を、目にもとまらぬ速さで詰めて来た。この二機の片方―――『オロチ』に搭乗しているのが、“サイガンのマゴディ”だ。ノヴァルナに心理的動揺を誘うため、マゴディは全周波数帯通信で、『センクウ・カイFX』に通信を入れる。

「この日が来るのを待っていたぞ、我が仇敵ノヴァルナ!」
 
 一直線に突っ込んで来る『オロチ』からの通信に、『センクウ・カイFX』を高速旋回させながら、ノヴァルナは問い質す。

「仇敵? 誰だてめぇ!?」

 『オロチ』と、それに後続する『マガツ』からの銃撃を悉く回避し、構えたライフルのトリガーを引きながら、放言するノヴァルナ。

「俺を仇と思ってる奴ぁ、ゴマンといるからなぁ。名乗ってもらっても、覚えちゃねぇかも知れねーがな!」

 ノヴァルナからの反撃に、『マガツ』が大きく回避行動を取る一方、『オロチ』は僅かに機体を左右へ揺らしただけで回避。ポジトロンパイクを手に取る。間合いを詰めて来た『マガツ』は、ポジトロンパイクを一閃。『センクウ・カイFX』も咄嗟にポジトロンパイクを右手一本で振るい、これを打ち防ぐ。そこで名乗る『マガツ』のパイロット。

「“サイガンのマゴディ”、この名に聞き覚えがあるだろう!!」

「なに、マゴディだと!?」

 自分を仇だと思う相手は星の数ほど居て、一々覚えていないのも事実なノヴァルナだったが、“サイガンのマゴディ”の名は忘れる事は無かった。十年前の惑星ラゴンの衛星軌道上で、鉱物精製プラント衛星をキオ・スー城へ落下させようと企んで、ノヴァルナに倒された、傭兵部隊の隊長をしていた男の名だ(第1章第1話:死のうは一定)。

 とその時、ノヴァルナの思考が生んだ一瞬の隙を突いて、『オロチ』とペアを組んでいた『マガツ』が、横合いから斬りかかって来た。マゴディの目論見通りだ。
 だがBSIパイロットとして機動戦闘中のノヴァルナは、反射神経が常人以上に研ぎ澄まされている。
 『オロチ』と得物を切り結んだまま機体を捻り込ませ、『マガツ』からの斬撃を紙一重に躱し、『センクウ・カイFX』のバックパックの僅か一メートル後ろを、『マガツ』のパイクの切っ先が空振りすると、ノヴァルナは超電磁ライフルの銃口を、その後頭部に押し当てるようにしてトリガーを引いた。

 ところが『マガツ』は、瞬時に機体を横滑り。『センクウ・カイFX』の至近距離からの銃弾を、回避と同時に急加速、即座に離脱する。その直後、再び斬り込んで来るマゴディの『オロチ』。

「いい腕だが、思った程じゃないな。ノヴァルナ・ダン=ウォーダ!」

「そういう煽り文句は、聞き飽きてんだよ!!」

 打ち合わされるパイクの刃が、青白いプラズマを放つ。二度三度、四度五度と、火花が散り、二人の機体を虚空の闇に照らし出した。




▶#11につづく
 
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