銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第18話:閉じられし罠

#14

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 BSIパイロット“トランサー”の能力は、相手の機体も銀河皇国のNNLシステムに接続していてこそ、効果が発揮されるものである。このため、マゴディによるNNLシステムの遮断によって、ノヴァルナは『オロチ』の、ダイレクトな“気配”を感じられなくなった。“トランサー”発動以前の、自分の視覚とモニター画面やホログラムスクリーンといった、端末からの情報表示のみに頼らざるを、得なくなったという事だ。

「てめぇ、どういうつもりだ!!」

 クァンタムブレードの斬撃を繰り出しながら、ノヴァルナは疑念を口にした。NNLシステムの遮断は『オロチ』にとっても、僚機とのデータリンクが切れて、自機のセンサーが取得する情報のみとなり、リスクが高いはずなのだ。

 対する『オロチ』も、クァンタムブレードで応戦。ただこちらのブレードは、あのアザン・グラン家のマガランが使用していた、豪刀『タイロン』程では無いものの、ノヴァルナの『センクウ・カイFX』のブレードよりも、かなり巨大である。

 大太刀おおだちでノヴァルナの斬撃を難なく受け、マゴディは言い放った。

「本場のBSHOは皇国のBSIみたいな、“仲良しクラブ”じゃないんでな!」

 打ち合わされるブレード。ここでも『センクウ・カイFX』は、『オロチ』にパワーで押される。

「仲良しクラブだと!?」

「モルンゴールのBSHOは、味方とのデータリンクがなくとも、スタンドアローンで戦える機体だって事だ!!」

 強い口調で告げ、マゴディは『センクウ・カイFX』とブレードを交えたまま、『オロチ』を加速させて体当たりを喰らわせた。NNLで繋がっていれば、“トランサー”で見切れたはずの動きだが、察知するのが僅かに遅れ、ノヴァルナは殆どまともに喰らってしまう。

「うあっ!!」

 激しい衝撃に包まれるコクピット。機体を立て直そうとするノヴァルナ。追撃を仕掛けて、大太刀を振り下ろして来るマゴディ。

「チィ!」

 舌打ちしてノヴァルナは機体を翻す。そこへ振り下ろされた大太刀の切っ先が、『センクウ・カイFX』のバックパック右側面から、脇腹にかけてを切り裂いた。ヘルメット内にけたたましく鳴る被ダメージ警報。損害箇所から赤いプラズマを噴き出しながらも、『センクウ・カイFX』は『オロチ』と距離を取った。
 この程度で済んだのは『センクウ・カイFX』が、高機動戦闘モードになっているおかげであり、そうでなければ機体正面をコクピットごと深く抉られて、ノヴァルナも命を失っていただろう。
 
 マゴディが言った通り、モルンゴールのBSHOは元来、単機戦闘を主眼に置いて開発されている。これは、個人の戦いで得られる名誉こそが至高のものという、モルンゴール星人の考え方に根差したものであった。

 機体のセンサー類などの観測機器も、巡航艦並みのものが採用されており、僚機との統合データリンクによる、観測機能の強化を必要としていない。
 端的に言えば、“アネス・カンヴァーの戦い”の際、BSHO『キョウマ』単機で最期まで壮絶に戦い抜いた、アザン・グラン家の武将ネオターク・ジュロス=マガランのような者が、戦闘民族たるモルンゴール星人にすれば、最高の軍人というわけである。
 そのようなモルンゴールのBSHOが、NNLシステムと接続していたのは、単に帝国が銀河皇国に併呑され、すべてが皇国軍の兵器体系に組み込まれたからに、他ならない。

 かさにかかって攻め込んで来る、マゴディの『オロチ』。繰り出される連続斬りを打ち払い、回避しつつ後退するノヴァルナの『センクウ・カイFX』。『オロチ』の大太刀が掠める度に、外部装甲が浅く斬り裂かれて、赤いプラズマが噴き出す。

“くそっ。何か手はねぇのか!!”

 防戦一方で追い詰められていくノヴァルナは、必死に思考を巡らせる。時間制限のある“高機動戦闘モード”の終了時間も近い。

「もはや打つ手なしか、ノヴァルナ・ダン=ウォーダ! しょせん皇国のBSHOもBSIユニットも、モルンゴールのBSHOを袋叩きにするしか脳の無い、出来損ないよ!!」

 これもマゴディの言う通りである。三百年前の銀河皇国とモルンゴール帝国の戦争の初期、初めて見た帝国の人型機動兵器BSHOに苦戦を強いられた皇国は、同様の兵器の量産型、つまり今でいう量産型BSIユニットを開発・大量生産し、数とNNLのデータリンクシステムで、帝国製BSHOを一機ずつ、撃破していったのである。

「これで終わりにする!」

 これまで以上の速度で間合いを詰め、連続斬りを放つマゴディ。その動きは以前に見た伝説のBSIパイロット、ヴォクスデン=トゥ・カラーバの奥義、“秘剣・一つの太刀”を連想させる。その瞬間、歯を喰いしばるノヴァルナの脳裏に、よぎるものがあった。


“秘剣・一つの太刀”…これが走馬灯ってヤツか、いや違うな―――


 後退させていた機体を一転、急速前進し、クァンタムブレードを振るうノヴァルナ。連続斬となったその刃は、神速で迫っていた『オロチ』の複数の刃を、全て弾き飛ばす。

「俺の速度を、“トランサー”無しで見切っただと!?」

 眼光を鋭くする“サイガンのマゴディ”。




▶#15につづく
 
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