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第3話:森の危機と運命の邂逅
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マーサさんに送り出され、私は薬包をしっかりと抱え、隣村へと向かった。
慣れない山道ではあったけれど、ここ数週間、マーサさんの元で薬草摘みや近隣への配達を手伝っていたおかげで、以前よりはずいぶんと足取りも軽くなっていた。
(大丈夫。私なら、きっとできるわ)
心の中で小さく呟く。
マーサさんからの信頼に応えたいという気持ちと、自分自身の力で何かを成し遂げられるという、ささやかな自信が私を後押ししてくれていた。
隣村までは、片道およそ半刻(約1時間)ほどの道のり。
村に着くと、薬を待っていたのは優しい笑顔のおばあさんで、無事に届け終えると、心から感謝され、手作りの焼き菓子まで持たせてくれた。
人の温かさに触れ、私の心もじんわりと温かくなるのを感じる。
(この町に来て、良かったのかもしれない…)
そんな前向きな気持ちで、私は帰路についた。
少しでも早くマーサさんの元へ戻り、無事に役目を果たしたことを報告したかった。
そんな焦りが、判断を誤らせたのかもしれない。
ふと、脇道に続く細い獣道が目に入った。
確か、マーサさんが「あっちの道は近道だけど、少し薄暗くて迷いやすいから、慣れないうちは通らない方がいいよ」と言っていた道だ。
(でも、もう日は傾き始めているし、少しでも早く帰った方が…)
ほんの少しの油断と、早くマーサさんを安心させたいという気持ちが、私にその道を選ばせた。
初めは順調だった。木々の間を縫うように進む道は、確かに本道よりも距離が短いように感じられた。
しかし、森の奥へ進むにつれて、だんだんと太陽の光が届かなくなり、周囲は薄暗くなってきた。
似たような景色が続き、いつの間にか、自分がどこを歩いているのか分からなくなってしまったのだ。
「…まずいわ。道に迷ってしまったみたい…」
焦りが胸をよぎる。
来た道を引き返そうにも、どちらから来たのかも定かではない。
額には、じっとりと冷や汗が滲んでいた。
(落ち着いて、エレオノーラ。こんなことでパニックになってはダメ…)
自分に言い聞かせ、深呼吸をする。
かつて、王宮でどんな理不尽な目に遭っても、私は決して冷静さを失わなかったはずだ。
それなのに、今の私はどうだ。
ただ森で道に迷っただけで、こんなにも心細くなっている。
日が暮れるのは、思ったよりも早かった。
あっという間に森は深い闇に包まれ、風が木々を揺らす音が、不気味な獣の息遣いのように聞こえてくる。
恐怖で、全身の毛が逆立つのが分かった。
(お父様…マーサさん…)
心細さから、大切な人々の顔が脳裏に浮かぶ。
こんなところで、一人で野垂れ死にするなんて、そんな結末は絶対に嫌だ。
必死に出口を探して、闇雲に歩き回る。
その時だった。
ガサリ、と。
背後の茂みが、大きく揺れた。
そして、低い、獣の唸り声が聞こえた。
「…っ!」
心臓が、喉から飛び出しそうなくらい激しく高鳴る。
ゆっくりと、本当にゆっくりと振り返ると、そこには――
闇の中に爛々と光る、二つの赤い瞳。
涎を垂らし、鋭い牙を剥き出しにした、大きな、大きな狼が、私を睨みつけていた。
その体躯は、私が今まで見たどんな犬よりも大きく、その目には明らかな飢えと殺意が宿っている。
「あ…あ…」
声が出ない。
逃げなければ。
そう思うのに、足が恐怖で地面に縫い付けられたように、一歩も動かせない。
狼が、ゆっくりと、しかし確実に、私との距離を詰めてくる。
その鼻先が、くんくんと私の匂いを嗅いでいるのが分かる。
もうダメだ。食べられる。
脳裏に、かつての華やかな夜会の光景が、走馬灯のように蘇った。
美しいドレス、きらびやかな宝石、貴族たちの嘲笑と偽りの賞賛。
あんな虚飾に満ちた世界よりも、今のこの状況の方が、よほど真実に近いのかもしれない。
弱肉強食。それが、この世界の理なのだと、今、痛感している。
目を固く閉じた、その瞬間。
「――そこまでだ、畜生め」
凛とした、それでいて有無を言わせぬ力強さを秘めた、低い男性の声が、静寂を切り裂いた。
え…?
恐る恐る目を開けると、信じられない光景が目の前に広がっていた。
月の光を背に受け、まるで闇から現れたかのように、一人の男が私の前に立ちはだかっていたのだ。
その手には、抜き放たれた長剣が握られ、鋭い切っ先を狼へと向けている。
次の瞬間、男の姿が霞んだかと思うと、鋭い剣閃が闇を切り裂いた。
ギャイン! という短い悲鳴と共に、狼は弾かれたように後ずさり、そして一目散に森の奥へと逃げていった。
助かった…?
何が起こったのか理解できず、私はただ呆然と立ち尽くす。
目の前の男は、ゆっくりと剣を鞘に納め、そして、静かにこちらへ振り返った。
月の光に照らし出されたその姿に、私は息を呑んだ。
漆黒の艶やかな髪。
寸分の隙もなく着こなされた上質な黒衣は、彼がただ者ではないことを雄弁に物語っている。
そして何より、その双眸。
氷のように冷たく澄み切った蒼い瞳が、闇の中で鋭い光を放ち、私を射抜いていた。
その圧倒的なまでの存在感は、まるで夜の闇を統べる王のようだった。
「…怪我は?」
低く、落ち着いた声が、私に問いかける。
その声は、先ほどの獣を追い払った時と同じ、力強い響きを持っていた。
「あ…はい、だ、大丈夫です。あの、助けていただき、本当に、ありがとうございました…!」
私は慌てて頭を下げ、感謝の言葉を述べた。
まだ心臓はバクバクと音を立てているし、膝もガクガクと震えている。
彼は、じっと私を見つめている。
その視線は、まるで私の心の奥底まで全てを見透かしているかのようで、私は何だか居心地の悪さを感じた。
「このような夜更けに、女性が一人とは不用意だな。ここは獣も出るぞ」
「も、申し訳ありません。薬の配達の帰りに、道に迷ってしまって…」
「名は?」
唐突な問いに、私は一瞬言葉に詰まった。
偽名を名乗るべきか。しかし、この圧倒的な存在感を放つ男に、嘘が通用するとは思えなかった。
「…エレオノーラ、と申します」
正直に名乗ると、男は私の名を小さく繰り返した。
「エレオノーラ…か。どこかで聞いたことがあるような名だ」
「…!」
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
まさか、この人が、私のことを知っている?
そんなはずは…。ここはアーレンスマルク王国から遠く離れた、隣国の国境地帯のはず。
男は、私の動揺には気づかない素振りで、静かに続けた。
「私はアレクシス・フォン・シュヴァルツェンベルク。この先のシュヴァルツェンベルク領を治める公爵だ」
アレクシス・フォン・シュヴァルツェンベルク公爵――。
その名を聞いて、私はさらに大きな衝撃を受けた。
シュヴァルツェンベルク公爵家といえば、ここオルデンブルク王国でも屈指の名門貴族。
現公爵は若くしてその広大な領地と爵位を継ぎ、冷徹にして有能、その卓越した手腕で領地を豊かにし、国境の守りを固めていると、噂には聞いていた。
まさか、こんな場所で、そのご本人に遭遇するなんて。
「…こ、公爵様、でいらっしゃいましたか。ご、ご無礼を、心よりお詫び申し上げます…!」
私は、慌てて貴族としての最敬礼を取ろうとしたが、疲労と緊張で足元がふらつき、よろめいてしまった。
「…っ」
「構わん。それよりも、そんな状態でこれ以上森を彷徨うのは危険だろう」
アレクシス公爵は、私の無様な姿を見ても、特に表情を変えることはなかった。
ただ、その蒼い瞳が、値踏みするように私を観察している。
「近くに私の別邸がある。そこまで送ろう。異論はないな?」
「えっ、あ、でも…そのようなご迷惑をおかけするわけには…」
「迷惑かどうかは私が決めることだ。それとも、再び狼の餌食になりたいか?」
彼の蒼い瞳が、有無を言わせぬ強い光を宿して、私を見据える。
その視線に射竦められ、私は小さく首を横に振ることしかできなかった。
確かに、このまま一人で森を彷徨うよりは、彼の申し出を受ける方が賢明だろう。
たとえ、彼がどんな人物であったとしても。
「…お言葉に、甘えさせていただきます」
私がそう答えると、アレクシス公爵は短く「うむ」と頷き、こともなげに言った。
「では、ついてこい。もう夜も深い」
彼は、私に背を向け、迷いのない足取りで闇の中を歩き始めた。
私は、まるで何かに導かれるように、その後ろをおぼつかない足取りで追いかける。
彼の広い背中を見つめながら、私は考えていた。
このアレクシスという公爵は、一体何者なのだろう。
なぜ、こんな夜更けに森の中にいたのだろう。
そして、なぜ、見ず知らずの私に、こんなにも親切にしてくれるのだろうか。
いくつもの疑問が頭の中を駆け巡る。
しかし、今はただ、彼についていくしかなかった。
私の運命が、またしても大きく動き出そうとしている予感を、胸の奥に感じながら。
慣れない山道ではあったけれど、ここ数週間、マーサさんの元で薬草摘みや近隣への配達を手伝っていたおかげで、以前よりはずいぶんと足取りも軽くなっていた。
(大丈夫。私なら、きっとできるわ)
心の中で小さく呟く。
マーサさんからの信頼に応えたいという気持ちと、自分自身の力で何かを成し遂げられるという、ささやかな自信が私を後押ししてくれていた。
隣村までは、片道およそ半刻(約1時間)ほどの道のり。
村に着くと、薬を待っていたのは優しい笑顔のおばあさんで、無事に届け終えると、心から感謝され、手作りの焼き菓子まで持たせてくれた。
人の温かさに触れ、私の心もじんわりと温かくなるのを感じる。
(この町に来て、良かったのかもしれない…)
そんな前向きな気持ちで、私は帰路についた。
少しでも早くマーサさんの元へ戻り、無事に役目を果たしたことを報告したかった。
そんな焦りが、判断を誤らせたのかもしれない。
ふと、脇道に続く細い獣道が目に入った。
確か、マーサさんが「あっちの道は近道だけど、少し薄暗くて迷いやすいから、慣れないうちは通らない方がいいよ」と言っていた道だ。
(でも、もう日は傾き始めているし、少しでも早く帰った方が…)
ほんの少しの油断と、早くマーサさんを安心させたいという気持ちが、私にその道を選ばせた。
初めは順調だった。木々の間を縫うように進む道は、確かに本道よりも距離が短いように感じられた。
しかし、森の奥へ進むにつれて、だんだんと太陽の光が届かなくなり、周囲は薄暗くなってきた。
似たような景色が続き、いつの間にか、自分がどこを歩いているのか分からなくなってしまったのだ。
「…まずいわ。道に迷ってしまったみたい…」
焦りが胸をよぎる。
来た道を引き返そうにも、どちらから来たのかも定かではない。
額には、じっとりと冷や汗が滲んでいた。
(落ち着いて、エレオノーラ。こんなことでパニックになってはダメ…)
自分に言い聞かせ、深呼吸をする。
かつて、王宮でどんな理不尽な目に遭っても、私は決して冷静さを失わなかったはずだ。
それなのに、今の私はどうだ。
ただ森で道に迷っただけで、こんなにも心細くなっている。
日が暮れるのは、思ったよりも早かった。
あっという間に森は深い闇に包まれ、風が木々を揺らす音が、不気味な獣の息遣いのように聞こえてくる。
恐怖で、全身の毛が逆立つのが分かった。
(お父様…マーサさん…)
心細さから、大切な人々の顔が脳裏に浮かぶ。
こんなところで、一人で野垂れ死にするなんて、そんな結末は絶対に嫌だ。
必死に出口を探して、闇雲に歩き回る。
その時だった。
ガサリ、と。
背後の茂みが、大きく揺れた。
そして、低い、獣の唸り声が聞こえた。
「…っ!」
心臓が、喉から飛び出しそうなくらい激しく高鳴る。
ゆっくりと、本当にゆっくりと振り返ると、そこには――
闇の中に爛々と光る、二つの赤い瞳。
涎を垂らし、鋭い牙を剥き出しにした、大きな、大きな狼が、私を睨みつけていた。
その体躯は、私が今まで見たどんな犬よりも大きく、その目には明らかな飢えと殺意が宿っている。
「あ…あ…」
声が出ない。
逃げなければ。
そう思うのに、足が恐怖で地面に縫い付けられたように、一歩も動かせない。
狼が、ゆっくりと、しかし確実に、私との距離を詰めてくる。
その鼻先が、くんくんと私の匂いを嗅いでいるのが分かる。
もうダメだ。食べられる。
脳裏に、かつての華やかな夜会の光景が、走馬灯のように蘇った。
美しいドレス、きらびやかな宝石、貴族たちの嘲笑と偽りの賞賛。
あんな虚飾に満ちた世界よりも、今のこの状況の方が、よほど真実に近いのかもしれない。
弱肉強食。それが、この世界の理なのだと、今、痛感している。
目を固く閉じた、その瞬間。
「――そこまでだ、畜生め」
凛とした、それでいて有無を言わせぬ力強さを秘めた、低い男性の声が、静寂を切り裂いた。
え…?
恐る恐る目を開けると、信じられない光景が目の前に広がっていた。
月の光を背に受け、まるで闇から現れたかのように、一人の男が私の前に立ちはだかっていたのだ。
その手には、抜き放たれた長剣が握られ、鋭い切っ先を狼へと向けている。
次の瞬間、男の姿が霞んだかと思うと、鋭い剣閃が闇を切り裂いた。
ギャイン! という短い悲鳴と共に、狼は弾かれたように後ずさり、そして一目散に森の奥へと逃げていった。
助かった…?
何が起こったのか理解できず、私はただ呆然と立ち尽くす。
目の前の男は、ゆっくりと剣を鞘に納め、そして、静かにこちらへ振り返った。
月の光に照らし出されたその姿に、私は息を呑んだ。
漆黒の艶やかな髪。
寸分の隙もなく着こなされた上質な黒衣は、彼がただ者ではないことを雄弁に物語っている。
そして何より、その双眸。
氷のように冷たく澄み切った蒼い瞳が、闇の中で鋭い光を放ち、私を射抜いていた。
その圧倒的なまでの存在感は、まるで夜の闇を統べる王のようだった。
「…怪我は?」
低く、落ち着いた声が、私に問いかける。
その声は、先ほどの獣を追い払った時と同じ、力強い響きを持っていた。
「あ…はい、だ、大丈夫です。あの、助けていただき、本当に、ありがとうございました…!」
私は慌てて頭を下げ、感謝の言葉を述べた。
まだ心臓はバクバクと音を立てているし、膝もガクガクと震えている。
彼は、じっと私を見つめている。
その視線は、まるで私の心の奥底まで全てを見透かしているかのようで、私は何だか居心地の悪さを感じた。
「このような夜更けに、女性が一人とは不用意だな。ここは獣も出るぞ」
「も、申し訳ありません。薬の配達の帰りに、道に迷ってしまって…」
「名は?」
唐突な問いに、私は一瞬言葉に詰まった。
偽名を名乗るべきか。しかし、この圧倒的な存在感を放つ男に、嘘が通用するとは思えなかった。
「…エレオノーラ、と申します」
正直に名乗ると、男は私の名を小さく繰り返した。
「エレオノーラ…か。どこかで聞いたことがあるような名だ」
「…!」
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
まさか、この人が、私のことを知っている?
そんなはずは…。ここはアーレンスマルク王国から遠く離れた、隣国の国境地帯のはず。
男は、私の動揺には気づかない素振りで、静かに続けた。
「私はアレクシス・フォン・シュヴァルツェンベルク。この先のシュヴァルツェンベルク領を治める公爵だ」
アレクシス・フォン・シュヴァルツェンベルク公爵――。
その名を聞いて、私はさらに大きな衝撃を受けた。
シュヴァルツェンベルク公爵家といえば、ここオルデンブルク王国でも屈指の名門貴族。
現公爵は若くしてその広大な領地と爵位を継ぎ、冷徹にして有能、その卓越した手腕で領地を豊かにし、国境の守りを固めていると、噂には聞いていた。
まさか、こんな場所で、そのご本人に遭遇するなんて。
「…こ、公爵様、でいらっしゃいましたか。ご、ご無礼を、心よりお詫び申し上げます…!」
私は、慌てて貴族としての最敬礼を取ろうとしたが、疲労と緊張で足元がふらつき、よろめいてしまった。
「…っ」
「構わん。それよりも、そんな状態でこれ以上森を彷徨うのは危険だろう」
アレクシス公爵は、私の無様な姿を見ても、特に表情を変えることはなかった。
ただ、その蒼い瞳が、値踏みするように私を観察している。
「近くに私の別邸がある。そこまで送ろう。異論はないな?」
「えっ、あ、でも…そのようなご迷惑をおかけするわけには…」
「迷惑かどうかは私が決めることだ。それとも、再び狼の餌食になりたいか?」
彼の蒼い瞳が、有無を言わせぬ強い光を宿して、私を見据える。
その視線に射竦められ、私は小さく首を横に振ることしかできなかった。
確かに、このまま一人で森を彷徨うよりは、彼の申し出を受ける方が賢明だろう。
たとえ、彼がどんな人物であったとしても。
「…お言葉に、甘えさせていただきます」
私がそう答えると、アレクシス公爵は短く「うむ」と頷き、こともなげに言った。
「では、ついてこい。もう夜も深い」
彼は、私に背を向け、迷いのない足取りで闇の中を歩き始めた。
私は、まるで何かに導かれるように、その後ろをおぼつかない足取りで追いかける。
彼の広い背中を見つめながら、私は考えていた。
このアレクシスという公爵は、一体何者なのだろう。
なぜ、こんな夜更けに森の中にいたのだろう。
そして、なぜ、見ず知らずの私に、こんなにも親切にしてくれるのだろうか。
いくつもの疑問が頭の中を駆け巡る。
しかし、今はただ、彼についていくしかなかった。
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