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第9話:真実の露見と愛の告白
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父、ヴァイスハルト侯爵の突然の登場に、王宮の大広間は水を打ったように静まり返った。
その静寂を破ったのは、アレクシス様の低く、しかし威厳に満ちた声だった。
「リリアナ・ブルーム嬢。そして、エドワード王太子殿下。貴方がたの茶番劇は、もはやこれまでです」
アレクシス様は、懐から分厚い書類の束を取り出し、それをエドワード殿下の目の前に叩きつけるように置いた。
「ここに、リリアナ・ブルーム嬢が犯してきた数々の罪状と、その動かぬ証拠が記されております。まずは、ヴァイスハルト侯爵とそのご令嬢エレオノーラ様を陥れた卑劣な策略の全貌から、明らかにいたしましょうか」
アレクシス様の言葉と共に、彼の配下である騎士たちが、次々と証人や物的証拠を提示し始めた。
リリアナ嬢が買収した偽の証人たち。
彼女がエレオノーラ様のドレスを汚すために使った薬品の入手経路。
階段から突き落とそうとしたとされる現場にいた、リリアナ嬢の侍女の裏切りとも言える証言。
そして、エレオノーラ様に毒を盛ろうとしたとされる食事から検出された、微量の毒物の鑑定結果。
そのどれもが、リリアナ嬢の関与を明確に示していた。
「そ、そんな…わたくしは、何も存じませんわ…! 全て、エレオノーラ様の差し金に違いありません…!」
リリアナ嬢は、顔面蒼白になりながらも、必死に無実を訴えようとする。
その潤んだ瞳で、エドワード殿下に助けを求めるように見つめるが、彼はもはや、彼女の言葉を鵜呑みにできる状態ではなかった。
続いて、父ヴァイスハルト侯爵が、ゆっくりと口を開いた。
「エドワード殿下。私は、長年ヴァイスハルト家として王家に忠誠を誓ってまいりました。この私が、国を裏切るような行為など、天地神明に誓って行うはずがございません。リリアナ嬢は、私が彼女の専横を諫め、エレオノーラの無実を証明しようとしていることを知り、私にまで濡れ衣を着せようとしたのです」
父の言葉には、一点の曇りもない誠実さが宿っていた。
そして、私もまた、声を上げた。
「リリアナ嬢。あなたは、エドワード殿下の寵愛を笠に着て、どれほど多くの人々を傷つけ、苦しめてきたか、お分かりですか? あなたのその可憐な仮面の下に隠された、醜い欲望と嫉妬心が、この国をどれほど歪めてしまったことか!」
私の言葉に、リリアナ嬢はついに冷静さを失い始めた。
「うるさい!黙りなさい、この悪役令嬢が! あなたさえいなければ、全て私の思い通りだったのに…! エドワード様は、わたくしだけのものだったはずなのに!」
金切り声を上げ、その美しい顔を憎悪に歪ませるリリアナ嬢。
その姿は、もはや以前の可憐な男爵令嬢の面影はなく、ただの嫉妬深い悪女そのものだった。
しかし、アレクシス様の告発は、まだ終わってはいなかった。
「リリアナ・ブルーム嬢。あなたの最大の罪は、これです」
彼が提示したのは、リリアナ嬢がアーレンスマルク王国と敵対関係にある大国――ガイエン帝国――の密偵と密会している場面を捉えた、数枚の絵姿と、彼女がガイエン帝国に送ったとされる密書の写しだった。
そこには、アーレンスマルク王国の軍事機密や、王宮内部の情報が詳細に記されていたのだ。
「な…っ!?」
これには、エドワード王子も、そして会場にいた全ての貴族たちも、息を呑んだ。
リリアナ嬢が、ただの我儘な悪女ではなく、国家を揺るがすスパイであったという事実は、あまりにも衝撃的すぎた。
「そんな…嘘ですわ! わたくしは、ただエドワード様をお慕い申し上げていただけ…! このようなもの、全てシュヴァルツェンベルク公の捏造ですわ!」
リリアナ嬢は、最後の悪あがきのように叫ぶ。
しかし、アレクシス様が呼び寄せた、ガイエン帝国の元密偵だという男の証言が、彼女の最後の望みを打ち砕いた。
その男は、リリアナ嬢から直接指示を受け、アーレンスマルク王国の情報をガイエン帝国に流していたことを、詳細に語ったのだ。
「リリアナ…お前…本当に…?」
エドワード王子は、震える声でリリアナ嬢に問いかける。
その顔には、もはや彼女への愛情はなく、ただ深い絶望と、裏切られたことへの怒り、そして自分自身の愚かさへの後悔の色が浮かんでいた。
追い詰められたリリアナ嬢は、ついにその本性を完全に露わにした。
「ああ、そうよ! 全部わたくしがやったことよ! こんな弱小国の王子妃になるよりも、大国の皇帝陛下に見初められた方が、よっぽど価値があるわ! あんたみたいな愚かな王子、最初から利用する価値しかなかったのよ!」
下品な言葉遣いでまくし立てるリリアナ嬢。
その醜悪な姿に、エドワード王子は力なくその場に膝をついた。
彼が信じていた「真実の愛」は、あまりにも脆く、そして醜い形で崩れ去ったのだ。
「…衛兵。リリアナ・ブルームを、国家反逆罪の現行犯として逮捕しろ」
エドワード王子の口から絞り出されたのは、か細く、しかし確かな命令だった。
リリアナ嬢は、衛兵たちに両腕を掴まれ、最後までわめき散らしながら大広間から連れ出されていった。
彼女の悪夢のような支配は、こうして終わりを告げたのだ。
リリアナ嬢が連行された後、大広間は重苦しい沈黙に包まれた。
やがて、アレクシス様がエドワード王子に静かに語りかけた。
「エドワード殿下。貴殿の犯した過ちは、決して許されるものではありません。しかし、今からでも、この国を立て直すために全力を尽くすことが、貴殿に残された唯一の道でしょう」
エドワード王子は、力なく頷くことしかできなかった。
彼の未来がどうなるのか、私には分からない。
しかし、彼が真に反省し、国民のために尽くす日が来ることを、心のどこかで願わずにはいられなかった。
そして、アレクシス様は会場にいる全ての貴族たちに向かって高らかに宣言した。
「これにて、エレオノーラ・フォン・ヴァイスハルト様、並びにアルブレヒト・フォン・ヴァイスハルト侯爵の無実は完全に証明された! 両名に対するこれまでの非礼は、アーレンスマルク王国全体で謝罪し、その名誉は回復されねばならない!」
その言葉と共に、会場からは万雷の拍手が湧き起こった。
貴族たちは、次々と私と父の元へ駆け寄り、これまでの非礼を詫び、私たちの潔白を称えた。
その中には、かつて私を嘲笑した者たちの顔もあったが、もはや彼らを責める気にはなれなかった。
ただ、父と共に、この瞬間を噛み締めていた。
◇◇◇
全ての騒動が収まり、王宮の喧騒から離れた、静かな月の光が降り注ぐ庭園で、私はアレクシス様と二人きりで向き合っていた。
先ほどまでの緊張感が嘘のように、今は穏やかで、そしてどこか甘い空気が私たちを包んでいる。
「アレクシス様…本当に、なんとお礼を申し上げてよいか…言葉も見つかりません」
「礼など不要だと言ったはずだ、エレオノーラ。お前と、ヴァイスハルト侯爵が無事であったのなら、それで私は満足だ」
彼は、穏やかな表情で私を見つめている。
その瞳は、いつものように冷たい蒼色なのに、今はどこまでも優しく、そして熱っぽく私を捉えている。
「エレオノーラ」
彼が、私の名を呼ぶ。
その声の響きが、私の心の琴線を優しく震わせた。
「私は、初めてお前をアーレンスマルクの宮廷で見かけた時から、ずっとお前のことが気になっていた。その気高さ、聡明さ、そして、どんな逆境にあっても決して屈することのないその強い魂に、心惹かれたのだ」
彼の言葉は、真っ直ぐに、そして深く、私の心に響いた。
まるで、長年秘めていた想いを、ようやく解き放つかのように。
「お前を私のものにしたいと、ずっと思っていた。だが、その頃のお前は、アーレンスマルク王国の王太子妃となる身。叶わぬ想いだと、自分に言い聞かせ、諦めていた」
「アレクシス様…」
「しかし、運命は皮肉なものだ。お前は全てを失い、私の元へと辿り着いた。それは、私にとって…いや、私たちにとって、神が与えてくれた、もう一度巡り合うための機会だったのかもしれないと、今では思っている」
彼は、ゆっくりと私の両手を取った。
その手は、大きく、力強く、そして何よりも温かい。
その温もりが、私の心の奥深くまで伝わってくる。
「エレオノーラ・フォン・ヴァイスハルト。私は、お前を愛している」
彼の蒼い瞳が、燃えるような情熱を宿して、私を真っ直ぐに見つめている。
その瞳には、疑いようのない、深く、そして真摯な愛情が溢れていた。
ああ、これが、本当の愛。
エドワード殿下との間にあった、上辺だけの、虚しい関係とは全く違う。
魂と魂が、強く惹かれ合い、共鳴し合うような、確かな絆。
私の頬を、一筋の涙が伝った。
それは、悲しみの涙ではなく、あふれ出す喜びと、深い感動の涙だった。
「アレクシス様…私で、本当によろしいのですか…? 一度は全てを失い、悪役令嬢とまで呼ばれた、この私が…」
「お前がいい。いや、お前でなければ駄目なのだ、エレオノーラ。私の隣には、お前以外の誰もおいてほしくない」
彼の力強い言葉が、私の中にまだ残っていた最後の躊躇いや不安を、綺麗に打ち砕いてくれた。
「はい…っ! はい…! 喜んで…アレクシス様…!」
私は、涙で濡れた笑顔で、彼に頷いた。
「私も…私も、ずっとあなた様をお慕い申し上げておりました…! あなたのそばにいられるだけで、私は…本当に、幸せだったのです…!」
私の答えを聞いたアレクシス様の顔が、ぱっと輝いた。
彼は、力強く、そして壊れ物を扱うかのように優しく、私をその逞しい腕の中に抱きしめた。
彼の胸の中で、私はようやく、本当の安らぎと、揺るぎない幸福を見つけた気がした。
「愛している、エレオノーラ。誰よりも、何よりも。私の全てをかけて、お前を幸せにすると誓う」
「私もです、アレクシス様。心の底から、あなただけを…愛しております…!」
偽りの断罪から始まった私の物語は、今、真実の愛と共に、新たな、そして輝かしい未来へと繋がったのだ。
アレクシス様の腕の中で、私は、この上ない幸福を噛み締めていた。
その静寂を破ったのは、アレクシス様の低く、しかし威厳に満ちた声だった。
「リリアナ・ブルーム嬢。そして、エドワード王太子殿下。貴方がたの茶番劇は、もはやこれまでです」
アレクシス様は、懐から分厚い書類の束を取り出し、それをエドワード殿下の目の前に叩きつけるように置いた。
「ここに、リリアナ・ブルーム嬢が犯してきた数々の罪状と、その動かぬ証拠が記されております。まずは、ヴァイスハルト侯爵とそのご令嬢エレオノーラ様を陥れた卑劣な策略の全貌から、明らかにいたしましょうか」
アレクシス様の言葉と共に、彼の配下である騎士たちが、次々と証人や物的証拠を提示し始めた。
リリアナ嬢が買収した偽の証人たち。
彼女がエレオノーラ様のドレスを汚すために使った薬品の入手経路。
階段から突き落とそうとしたとされる現場にいた、リリアナ嬢の侍女の裏切りとも言える証言。
そして、エレオノーラ様に毒を盛ろうとしたとされる食事から検出された、微量の毒物の鑑定結果。
そのどれもが、リリアナ嬢の関与を明確に示していた。
「そ、そんな…わたくしは、何も存じませんわ…! 全て、エレオノーラ様の差し金に違いありません…!」
リリアナ嬢は、顔面蒼白になりながらも、必死に無実を訴えようとする。
その潤んだ瞳で、エドワード殿下に助けを求めるように見つめるが、彼はもはや、彼女の言葉を鵜呑みにできる状態ではなかった。
続いて、父ヴァイスハルト侯爵が、ゆっくりと口を開いた。
「エドワード殿下。私は、長年ヴァイスハルト家として王家に忠誠を誓ってまいりました。この私が、国を裏切るような行為など、天地神明に誓って行うはずがございません。リリアナ嬢は、私が彼女の専横を諫め、エレオノーラの無実を証明しようとしていることを知り、私にまで濡れ衣を着せようとしたのです」
父の言葉には、一点の曇りもない誠実さが宿っていた。
そして、私もまた、声を上げた。
「リリアナ嬢。あなたは、エドワード殿下の寵愛を笠に着て、どれほど多くの人々を傷つけ、苦しめてきたか、お分かりですか? あなたのその可憐な仮面の下に隠された、醜い欲望と嫉妬心が、この国をどれほど歪めてしまったことか!」
私の言葉に、リリアナ嬢はついに冷静さを失い始めた。
「うるさい!黙りなさい、この悪役令嬢が! あなたさえいなければ、全て私の思い通りだったのに…! エドワード様は、わたくしだけのものだったはずなのに!」
金切り声を上げ、その美しい顔を憎悪に歪ませるリリアナ嬢。
その姿は、もはや以前の可憐な男爵令嬢の面影はなく、ただの嫉妬深い悪女そのものだった。
しかし、アレクシス様の告発は、まだ終わってはいなかった。
「リリアナ・ブルーム嬢。あなたの最大の罪は、これです」
彼が提示したのは、リリアナ嬢がアーレンスマルク王国と敵対関係にある大国――ガイエン帝国――の密偵と密会している場面を捉えた、数枚の絵姿と、彼女がガイエン帝国に送ったとされる密書の写しだった。
そこには、アーレンスマルク王国の軍事機密や、王宮内部の情報が詳細に記されていたのだ。
「な…っ!?」
これには、エドワード王子も、そして会場にいた全ての貴族たちも、息を呑んだ。
リリアナ嬢が、ただの我儘な悪女ではなく、国家を揺るがすスパイであったという事実は、あまりにも衝撃的すぎた。
「そんな…嘘ですわ! わたくしは、ただエドワード様をお慕い申し上げていただけ…! このようなもの、全てシュヴァルツェンベルク公の捏造ですわ!」
リリアナ嬢は、最後の悪あがきのように叫ぶ。
しかし、アレクシス様が呼び寄せた、ガイエン帝国の元密偵だという男の証言が、彼女の最後の望みを打ち砕いた。
その男は、リリアナ嬢から直接指示を受け、アーレンスマルク王国の情報をガイエン帝国に流していたことを、詳細に語ったのだ。
「リリアナ…お前…本当に…?」
エドワード王子は、震える声でリリアナ嬢に問いかける。
その顔には、もはや彼女への愛情はなく、ただ深い絶望と、裏切られたことへの怒り、そして自分自身の愚かさへの後悔の色が浮かんでいた。
追い詰められたリリアナ嬢は、ついにその本性を完全に露わにした。
「ああ、そうよ! 全部わたくしがやったことよ! こんな弱小国の王子妃になるよりも、大国の皇帝陛下に見初められた方が、よっぽど価値があるわ! あんたみたいな愚かな王子、最初から利用する価値しかなかったのよ!」
下品な言葉遣いでまくし立てるリリアナ嬢。
その醜悪な姿に、エドワード王子は力なくその場に膝をついた。
彼が信じていた「真実の愛」は、あまりにも脆く、そして醜い形で崩れ去ったのだ。
「…衛兵。リリアナ・ブルームを、国家反逆罪の現行犯として逮捕しろ」
エドワード王子の口から絞り出されたのは、か細く、しかし確かな命令だった。
リリアナ嬢は、衛兵たちに両腕を掴まれ、最後までわめき散らしながら大広間から連れ出されていった。
彼女の悪夢のような支配は、こうして終わりを告げたのだ。
リリアナ嬢が連行された後、大広間は重苦しい沈黙に包まれた。
やがて、アレクシス様がエドワード王子に静かに語りかけた。
「エドワード殿下。貴殿の犯した過ちは、決して許されるものではありません。しかし、今からでも、この国を立て直すために全力を尽くすことが、貴殿に残された唯一の道でしょう」
エドワード王子は、力なく頷くことしかできなかった。
彼の未来がどうなるのか、私には分からない。
しかし、彼が真に反省し、国民のために尽くす日が来ることを、心のどこかで願わずにはいられなかった。
そして、アレクシス様は会場にいる全ての貴族たちに向かって高らかに宣言した。
「これにて、エレオノーラ・フォン・ヴァイスハルト様、並びにアルブレヒト・フォン・ヴァイスハルト侯爵の無実は完全に証明された! 両名に対するこれまでの非礼は、アーレンスマルク王国全体で謝罪し、その名誉は回復されねばならない!」
その言葉と共に、会場からは万雷の拍手が湧き起こった。
貴族たちは、次々と私と父の元へ駆け寄り、これまでの非礼を詫び、私たちの潔白を称えた。
その中には、かつて私を嘲笑した者たちの顔もあったが、もはや彼らを責める気にはなれなかった。
ただ、父と共に、この瞬間を噛み締めていた。
◇◇◇
全ての騒動が収まり、王宮の喧騒から離れた、静かな月の光が降り注ぐ庭園で、私はアレクシス様と二人きりで向き合っていた。
先ほどまでの緊張感が嘘のように、今は穏やかで、そしてどこか甘い空気が私たちを包んでいる。
「アレクシス様…本当に、なんとお礼を申し上げてよいか…言葉も見つかりません」
「礼など不要だと言ったはずだ、エレオノーラ。お前と、ヴァイスハルト侯爵が無事であったのなら、それで私は満足だ」
彼は、穏やかな表情で私を見つめている。
その瞳は、いつものように冷たい蒼色なのに、今はどこまでも優しく、そして熱っぽく私を捉えている。
「エレオノーラ」
彼が、私の名を呼ぶ。
その声の響きが、私の心の琴線を優しく震わせた。
「私は、初めてお前をアーレンスマルクの宮廷で見かけた時から、ずっとお前のことが気になっていた。その気高さ、聡明さ、そして、どんな逆境にあっても決して屈することのないその強い魂に、心惹かれたのだ」
彼の言葉は、真っ直ぐに、そして深く、私の心に響いた。
まるで、長年秘めていた想いを、ようやく解き放つかのように。
「お前を私のものにしたいと、ずっと思っていた。だが、その頃のお前は、アーレンスマルク王国の王太子妃となる身。叶わぬ想いだと、自分に言い聞かせ、諦めていた」
「アレクシス様…」
「しかし、運命は皮肉なものだ。お前は全てを失い、私の元へと辿り着いた。それは、私にとって…いや、私たちにとって、神が与えてくれた、もう一度巡り合うための機会だったのかもしれないと、今では思っている」
彼は、ゆっくりと私の両手を取った。
その手は、大きく、力強く、そして何よりも温かい。
その温もりが、私の心の奥深くまで伝わってくる。
「エレオノーラ・フォン・ヴァイスハルト。私は、お前を愛している」
彼の蒼い瞳が、燃えるような情熱を宿して、私を真っ直ぐに見つめている。
その瞳には、疑いようのない、深く、そして真摯な愛情が溢れていた。
ああ、これが、本当の愛。
エドワード殿下との間にあった、上辺だけの、虚しい関係とは全く違う。
魂と魂が、強く惹かれ合い、共鳴し合うような、確かな絆。
私の頬を、一筋の涙が伝った。
それは、悲しみの涙ではなく、あふれ出す喜びと、深い感動の涙だった。
「アレクシス様…私で、本当によろしいのですか…? 一度は全てを失い、悪役令嬢とまで呼ばれた、この私が…」
「お前がいい。いや、お前でなければ駄目なのだ、エレオノーラ。私の隣には、お前以外の誰もおいてほしくない」
彼の力強い言葉が、私の中にまだ残っていた最後の躊躇いや不安を、綺麗に打ち砕いてくれた。
「はい…っ! はい…! 喜んで…アレクシス様…!」
私は、涙で濡れた笑顔で、彼に頷いた。
「私も…私も、ずっとあなた様をお慕い申し上げておりました…! あなたのそばにいられるだけで、私は…本当に、幸せだったのです…!」
私の答えを聞いたアレクシス様の顔が、ぱっと輝いた。
彼は、力強く、そして壊れ物を扱うかのように優しく、私をその逞しい腕の中に抱きしめた。
彼の胸の中で、私はようやく、本当の安らぎと、揺るぎない幸福を見つけた気がした。
「愛している、エレオノーラ。誰よりも、何よりも。私の全てをかけて、お前を幸せにすると誓う」
「私もです、アレクシス様。心の底から、あなただけを…愛しております…!」
偽りの断罪から始まった私の物語は、今、真実の愛と共に、新たな、そして輝かしい未来へと繋がったのだ。
アレクシス様の腕の中で、私は、この上ない幸福を噛み締めていた。
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