貧乏令嬢ですが、前世の知識で成り上がって呪われ王子の呪いを解こうと思います!

放浪人

文字の大きさ
12 / 26

第12話:王子の保証と逆転の狼煙

しおりを挟む
アレクシス王子殿下という、最強の監視役(?)を得て、私の公開実験は再開された。
もう、邪魔をする者は誰もいない。
広場の野次馬たちも、固唾をのんで私の一挙手一投足を見守っている。

私は、先ほどの動揺を心の奥に押し込め、再び作業に集中した。
ハーブを刻み、混ぜ合わせ、型に流し込む。
その全ての工程を、丁寧に、そして堂々と行なった。

そして、ついに。
事前に作っておいた石鹸を使って、最後の実演に移る。

「さて皆様! これが、完成した私たちの石鹸です!」
私は、桶に張った水で、その石鹸を泡立てて見せた。
きめ細やかで、豊かな泡が、ふわりと立ち上る。

「この通り、肌に悪いものなど入っておりません! むしろ、この石鹸で洗うことで、肌は潤い、滑らかになります!」

私は、その泡で自分の腕を優しく洗い、そして、綺麗な布で拭き取った。
白く、しっとりとした肌が、太陽の光を浴びて輝いている。

「どうです? 爛れるどころか、以前より綺麗になっていると思いませんか?」

胸を張ってそう言うと、観衆の中から、おお、というどよめきが起こった。
明らかに、空気は私たちの味方へと傾きつつあった。

しかし、まだだ。
まだ、決定的な一打が足りない。

その時、ずっと黙って成り行きを見守っていたアレクシス様が、すっと前に出た。
そして、思いもよらないことを口にしたのだ。

「――その石鹸は、俺が保証する」

広場が、水を打ったように静まり返る。
誰もが、自分の耳を疑った。
あの、呪われ王子が? この商人の石鹸を、保証する?

「この俺の長年の肌荒れが、この石鹸で完治した。これは、紛れもない事実だ」

アレクシス様は、自らの頬を指差して言った。
呪いの痣はまだあるけれど、その周りの肌は、確かにつるりとしていて、荒れた様子は微塵もない。

「これ以上の証拠が、必要か?」

彼の言葉は、何よりも重かった。
王族、それも王子自らが、その身をもって安全性を証明したのだ。
イザベラ様が流した悪質な噂など、一瞬で吹き飛んでしまった。

「おおおお……!」
「王子殿下のお墨付きだ!」
「やっぱり、あの噂は嘘だったんだ!」

観衆は、一気に熱狂した。
さっきまで疑いの目を向けていた人々が、今度は我先にと石鹸を求めて舞台に殺到する。

「ありがとうございます! 皆さん、ありがとうございます!」

私は、こみ上げてくるものを抑えきれず、何度も頭を下げた。
涙で視界が滲む。

ちらりとアレクシス様の方を見ると、彼はフン、と鼻を鳴らして、もう私に興味はないというように背を向けていた。
でも、その去り際の横顔が、ほんの少しだけ、優しく見えたのは気のせいだろうか。

「……やったな、リナお嬢」
隣で、ギルさんが涙声で言った。
「ええ……やりましたね、ギルさん!」

私たちは、顔を見合わせて笑い合った。
絶体絶命のピンチから、最高の大逆転劇。
この日の出来事は、「呪われ王子の奇跡」として、王都中の語り草となった。

そして、私たちの商売は、以前とは比べ物にならないほどの、爆発的な成功を収めることになる。

だが、これはまだ、私たちの成り上がり劇の序章に過ぎなかった。
この成功が、さらなる困難と、そしてイザベラ様のより深い憎悪を呼び起こすことを、この時の私はまだ知らなかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

会えば喧嘩ばかりの婚約者と腹黒王子の中身が入れ替わったら、なぜか二人からアプローチされるようになりました

黒木メイ
恋愛
伯爵令嬢ソフィアと第一王子の護衛隊長であるレオンの婚約は一年を迎えるが、会えば口喧嘩、会わなければ音信不通というすれ違いの日々。約束を破り続けるレオンと両親からの『式だけでも早く挙げろ』という圧に我慢の限界を迎えたソフィアは、ついに彼の職場である王城へと乗り込む。 激しい言い争いを始めた二人の前に現れたのは、レオンの直属の上司であり、優雅な仮面の下に腹黒な本性を隠す第一王子クリスティアーノ。 王子は二人が起こした騒動への『罰』として、王家秘伝の秘薬をレオンに服用させる。その結果――なんとレオンとクリスティアーノの中身が入れ替わってしまった!全ては王子の計画通り。 元に戻るのは八日後。その間、ソフィアはこの秘密がバレないよう、文字通り命がけで奔走することとなる。 期限付きの入れ替わり生活は、不器用な婚約者との関係をどう変えるのか? そして、この騒動を引き起こした腹黒王子の真の目的とは? ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※他サイトからの転載。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

悪役を演じて婚約破棄したのに、なぜか溺愛モードの王子がついてきた!

ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢ミュールは、重度のシスコンである。「天使のように可愛い妹のリナこそが、王妃になるべき!」その一心で、ミュールは自ら「嫉妬に狂った悪役令嬢」を演じ、婚約者であるキース王太子に嫌われる作戦に出た。 計画は成功し、衆人環視の中で婚約破棄を言い渡されるミュール。「処罰として、王都から追放する!」との言葉に、これで妹が幸せになれるとガッツポーズをした……はずだったのだが? 連れて行かれた「追放先」は、王都から馬車でたった30分の、王家所有の超豪華別荘!? しかも、「君がいないと仕事が手につかない」と、元婚約者のキース殿下が毎日通ってくるどころか、事実上の同棲生活がスタートしてしまう。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

処理中です...