貧乏令嬢ですが、前世の知識で成り上がって呪われ王子の呪いを解こうと思います!

放浪人

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第22話:仕掛けられた罠と裏切り者

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新月の夜。
王城は、深い静寂と闇に包まれていた。

計画通り、城の東門の方で、大きな爆発音と、鬨の声が上がった。
ギルさんとバルトさんたちの陽動作戦が始まったのだ。
城の警備兵たちが、慌ただしく東門へと向かっていく。

「――今だ! 行くぞ!」

その隙を突き、私とアレクシス様は、マントで姿を隠しながら、禁書庫へと続く裏口へと忍び込んだ。
心臓が、早鐘のように鳴っている。
でも、隣にいるアレクシス様の存在が、私に勇気をくれた。

禁書庫の中は、ひんやりとしていて、古い紙とインクの匂いがした。
壁一面に、天井まで届くほどの本棚が並び、膨大な量の書物が収められている。

「すごい……これが、王家の知識の宝庫……」

「感心している暇はない。急ぐぞ」
アレクシス様に促され、私たちは奥へと進んでいく。

見取り図を頼りに、いくつもの書架を通り抜ける。
時折、魔法の罠が作動したが、アレクシス様の卓越した身体能力と、私の前世の科学知識(簡単な化学反応で煙幕を張ったりした)を駆使して、なんとか切り抜けていった。

そして、ついに。
私たちは、禁書庫の最奥、『星見の間』へと続く、重厚な扉の前にたどり着いた。

「……この先に、『真実の月の涙』が」
アレクシス様が、ゴクリと喉を鳴らす。

彼が扉に手をかけようとした、その時だった。

カチリ、と。背後で、何かのスイッチが入るような音がした。

次の瞬間。
私たちの周りの床が、青白い光を放ち始めた。
それは、強力な拘束魔法の魔法陣だった。

「くっ……! 動けない……!」
アレクシス様が、苦悶の声を上げる。
私も、まるで鉛の塊を押し付けられたように、身動きが取れなくなってしまった。

「――かかったわね、間抜けなネズミさんたち」

闇の中から、甲高い声が響き渡った。
松明の明かりに照らされて姿を現したのは、勝ち誇ったような笑みを浮かべる、イザベラ様だった。

そして、彼女の隣には……
「クラウス兄上……!」
アレクシス様が、驚愕の声を上げる。

そこに立っていたのは、柔和な笑みを浮かべた、この国の第一王子、クラウス。
アレクシス様の実の兄だった。

「なぜ、ここに……!?」

「なぜ、ですって? あなたたちがここに来ることは、お見通しでしたのよ」
イザベラ様が、扇子で口元を隠して、クスクスと笑う。

「まさか……私たちの計画が、漏れていた……?」

「その通りよ。あなたたちが雇った従業員の中に、わたくしに情報を売った、賢い子がいてね」
イザベラ様の言葉に、私は愕然とした。
仲間だと思っていた人の中に、裏切り者がいたなんて。

「アレクシス。お前には、失望したよ」
クラウス第一王子が、悲しそうな顔で言った。
「まさか、禁書庫に忍び込むなどという、大罪を犯すとは。……国王陛下も、さぞお嘆きになるだろう」

そのわざとらしい口調に、私は吐き気を覚えた。
この男、全てを知っていて、私たちを罠にはめたのだ。

「……兄上。あなたが、仕組んだのですか」
アレクシス様が、低い声で問う。

「人聞きの悪いことを言うな、弟よ。私はただ、罪を犯そうとするお前を、止めに来ただけだ」

しらばっくれるクラウス王子の隣で、イザベラ様が嘲るように言った。
「さあ、おとなしく捕まりなさい。反逆者として、あなたたちを処刑台に送ってさしあげますわ」

絶体絶命の、ピンチ。
体は動かず、敵は目の前にいる。
陽動部隊のギルさんたちも、まさかこんなことになっているとは、夢にも思っていないだろう。

もう、終わりなのか。
私たちの夢も、誓いも、ここで全て……。

諦めの気持ちが、心をよぎった、その時。

「――それは、どうかな」

静かだが、確かな意志を込めた声が、私の口から漏れた。
私は、魔法陣に拘束されながらも、顔を上げ、イザベラ様たちを睨みつけた。

「まだだ……まだ、私たちの負けじゃない!」

私の手の中には、最後の切り札が握られていた。
それは、この禁書庫に潜入する直前、アレクシス様からお守りとして渡された、小さな魔石だった。
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