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後日談:カーテンコール・愛すべき読者の皆様へ
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新婚生活が始まって数日後の、ある晴れた午後のこと。 アイゼンベルク侯爵邸のサロンにて、私はクラウス様に膝枕をされながら(恥ずかしいので抵抗したのですが、無駄でした)、まどろんでいました。
「……エリス」
ふいに、クラウス様が真剣な声で私を呼びました。 私は驚いて目を開けます。
「どうしましたか、クラウス様?」 「気づいているか? ……こちらの世界を覗き見ていた『観測者』たちの視線が、そろそろ消えようとしていることに」
「えっ?」
私は慌てて周囲を見回しました。 そういえば、断頭台の前で死に戻りをしてからずっと感じていた、温かくて、時にハラハラとした何千、何万もの視線。 それが今、私たちのハッピーエンドを見届けて、満足げに去っていこうとしています。
「彼らは『読者』と呼ばれる存在だ。私たちの苦難も、すれ違いも、そしてこの幸福も、すべて彼らが見守ってくれていたからこそ成立した」
クラウス様は優しく微笑み、虚空に向かって手を差し伸べました。
「エリス。最後くらい、彼らにきちんとお礼を言おうか。……君の声で」
私は居住まいを正し、こくりと頷きました。 もう、怯えて黙り込む必要はありませんから。
「……ここまで私たちを見守ってくださり、本当にありがとうございました。皆様の応援があったから、私は処刑台ではなく、この温かい場所に辿り着くことができました」
「私からも礼を言う。君たちの応援がなければ、私はただの冷徹な仕事人間のまま、孤独に死んでいたかもしれない。……エリスという至宝に出会わせてくれて、感謝する」
私たちは二人並んで、深く一礼しました。
「さて、エリス。ここからは少し、『大人の事情』の話をしよう」
クラウス様がいきなりキリッとした顔になりました。 え、何ですか? 大人の事情って。
「実は、私たちの物語を紡いだ『創造主』から、重要な伝言を預かっているんだ」
「創造主様から……?」
「ああ。どうやら創造主は、私たちの世界以外にも、数多くの『異世界』を創り出しているらしい。Amazon Kindleという名の巨大な書庫を知っているか?」
私は首を横に振りました。 キンドル? 新種の魔法道具でしょうか?
「そこには、恋愛、ファンタジー、感動のドラマ……私たちとはまた違った、熱量のある物語が多数存在するそうだ。創造主曰く、『どれも自信作だ』とのことだが」
クラウス様は、どこからともなく一枚の羊皮紙(宣伝チラシ)を取り出しました。
「重要なのはここだ。それらの物語はすべて、【Kindle Unlimited(読み放題)】という魔法のパスポートに対応している」
「読み放題……!?」
私の食いしん坊な耳がピクリと反応しました。 食べ放題と同じくらい、魅力的な響きです。
「そうだ。そのパスポートを持つ者であれば、追加の金貨を払うことなく、実質無料で創造主の他の物語を楽しめるらしい。……王立図書館も真っ青の太っ腹だな」
「す、すごいです! それは読まないと損ですね!」
「その通りだ。だからエリス、読者の皆様に伝えてくれ。『もし私たちの物語を楽しんでくれたなら、ぜひ他の世界も覗いてみてほしい』と」
私は大きく頷き、皆様に向かって精一杯の笑顔を向けました。
「皆様! もしよろしければ、Amazonという場所で『放浪人』と検索してみてください! そこには、きっと素敵な物語がたくさん待っています!」
「皆様のダウンロードと、星による評価が、創造主の魔力(執筆意欲)になるそうだ。……それが巡り巡って、私たちの後日談がまた紡がれる可能性にも繋がるかもしれない」
クラウス様がウインクをしました。 あ、ずるい。そんな顔されたら、皆様も断れないじゃないですか。
「さあ、そろそろお別れの時間だ」
クラウス様が私の腰を引き寄せ、抱きしめます。 視界が徐々に白く、光に包まれていきます。
「私たちはこれからも、この世界で幸せに暮らしていく。……君たちが、また別の物語で夢を見られることを祈っているよ」
「ありがとうございました! Kindleの世界でも、お待ちしています!」
最後は二人で、とびっきりの笑顔で手を振って。
私たちの物語は、これでおしまいです。 でも、本棚の向こう側には、まだ見ぬ世界が広がっています。 どうか、そちらでも良き旅を――!
――Fin.
「……エリス」
ふいに、クラウス様が真剣な声で私を呼びました。 私は驚いて目を開けます。
「どうしましたか、クラウス様?」 「気づいているか? ……こちらの世界を覗き見ていた『観測者』たちの視線が、そろそろ消えようとしていることに」
「えっ?」
私は慌てて周囲を見回しました。 そういえば、断頭台の前で死に戻りをしてからずっと感じていた、温かくて、時にハラハラとした何千、何万もの視線。 それが今、私たちのハッピーエンドを見届けて、満足げに去っていこうとしています。
「彼らは『読者』と呼ばれる存在だ。私たちの苦難も、すれ違いも、そしてこの幸福も、すべて彼らが見守ってくれていたからこそ成立した」
クラウス様は優しく微笑み、虚空に向かって手を差し伸べました。
「エリス。最後くらい、彼らにきちんとお礼を言おうか。……君の声で」
私は居住まいを正し、こくりと頷きました。 もう、怯えて黙り込む必要はありませんから。
「……ここまで私たちを見守ってくださり、本当にありがとうございました。皆様の応援があったから、私は処刑台ではなく、この温かい場所に辿り着くことができました」
「私からも礼を言う。君たちの応援がなければ、私はただの冷徹な仕事人間のまま、孤独に死んでいたかもしれない。……エリスという至宝に出会わせてくれて、感謝する」
私たちは二人並んで、深く一礼しました。
「さて、エリス。ここからは少し、『大人の事情』の話をしよう」
クラウス様がいきなりキリッとした顔になりました。 え、何ですか? 大人の事情って。
「実は、私たちの物語を紡いだ『創造主』から、重要な伝言を預かっているんだ」
「創造主様から……?」
「ああ。どうやら創造主は、私たちの世界以外にも、数多くの『異世界』を創り出しているらしい。Amazon Kindleという名の巨大な書庫を知っているか?」
私は首を横に振りました。 キンドル? 新種の魔法道具でしょうか?
「そこには、恋愛、ファンタジー、感動のドラマ……私たちとはまた違った、熱量のある物語が多数存在するそうだ。創造主曰く、『どれも自信作だ』とのことだが」
クラウス様は、どこからともなく一枚の羊皮紙(宣伝チラシ)を取り出しました。
「重要なのはここだ。それらの物語はすべて、【Kindle Unlimited(読み放題)】という魔法のパスポートに対応している」
「読み放題……!?」
私の食いしん坊な耳がピクリと反応しました。 食べ放題と同じくらい、魅力的な響きです。
「そうだ。そのパスポートを持つ者であれば、追加の金貨を払うことなく、実質無料で創造主の他の物語を楽しめるらしい。……王立図書館も真っ青の太っ腹だな」
「す、すごいです! それは読まないと損ですね!」
「その通りだ。だからエリス、読者の皆様に伝えてくれ。『もし私たちの物語を楽しんでくれたなら、ぜひ他の世界も覗いてみてほしい』と」
私は大きく頷き、皆様に向かって精一杯の笑顔を向けました。
「皆様! もしよろしければ、Amazonという場所で『放浪人』と検索してみてください! そこには、きっと素敵な物語がたくさん待っています!」
「皆様のダウンロードと、星による評価が、創造主の魔力(執筆意欲)になるそうだ。……それが巡り巡って、私たちの後日談がまた紡がれる可能性にも繋がるかもしれない」
クラウス様がウインクをしました。 あ、ずるい。そんな顔されたら、皆様も断れないじゃないですか。
「さあ、そろそろお別れの時間だ」
クラウス様が私の腰を引き寄せ、抱きしめます。 視界が徐々に白く、光に包まれていきます。
「私たちはこれからも、この世界で幸せに暮らしていく。……君たちが、また別の物語で夢を見られることを祈っているよ」
「ありがとうございました! Kindleの世界でも、お待ちしています!」
最後は二人で、とびっきりの笑顔で手を振って。
私たちの物語は、これでおしまいです。 でも、本棚の向こう側には、まだ見ぬ世界が広がっています。 どうか、そちらでも良き旅を――!
――Fin.
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