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第20話(最終話):エピローグ・お喋りな幸福
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ミリアとの決戦、そしてクーデターの鎮圧から、半年が過ぎた。 王都には、再び平和な日常が戻っていた。
季節は巡り、初夏。 抜けるような青空の下、王都の大通りは、かつてないほどの熱気と祝祭ムードに包まれていた。 街路樹には紅白のリボンが結ばれ、建物の窓からは色とりどりの花吹雪が舞っている。 沿道を埋め尽くす民衆たちは、皆一様に興奮し、ある「パレード」の到着を今か今かと待ちわびていた。
そう。 今日は、この国を救った英雄たちの結婚式。 「氷の宰相」ことクラウス・ヴァン・アイゼンベルク侯爵と、「沈黙の聖女」ことエリス・フォン・ローゼン公爵令嬢の、世紀のロイヤルウェディング当日である。
◇
「……き、緊張で吐きそうです」
王宮の控え室。 私は純白のウェディングドレスに身を包み、鏡の前でガタガタと震えていた。
今日のドレスは、王室御用達の職人が総力を挙げて仕立てた最高傑作だ。 シルクの生地には銀糸で細やかな刺繍が施され、無数の小粒なダイヤモンドが散りばめられている。動くたびにキラキラと光を反射し、まるで天の川を纏っているようだ。 綺麗だ。 信じられないくらい綺麗だけれど、重い。 物理的にも重いし、精神的なプレッシャーが半端ない。
私の専属メイド、アンナが涙目で化粧の仕上げをしている。
「お嬢様……本当にお綺麗です。あの日、処刑台から戻ってこられた時は、まさかこんな晴れの日が来るなんて夢にも思いませんでした」 「……(コクッ)」
私は無言で頷いた。 私も思っていなかった。 あの日、「とにかく処刑されたくない」「目立たず生きよう」と決意して、ひたすら黙り込んでいた私が、まさか国の英雄となり、宰相閣下の妻になるなんて。 人生、何が起こるかわからない。
コンコン。 ノックの音がして、扉が開いた。 入ってきたのは、今日の主役である新郎、クラウス様だ。
私は息を呑んだ。 いつもの黒いフロックコートではない。 今日は純白のタキシード姿だ。 漆黒の髪を整え、精悍な顔立ちが一層際立っている。 その姿は、童話に出てくる王子様そのもの――いや、それ以上に気品と色気が漂っていて、直視するのが眩しいくらいだ。
クラウス様は私を見ると、動きを止め、ほうっと深いため息をついた。
「……美しい」
彼はゆっくりと歩み寄り、私の手を取った。
「言葉にならないな。君の美しさを表現するには、この世の辞書にある賛辞をすべて並べても足りない」 「……(照)」
私は顔を赤くして俯いた。 半年経っても、この人のストレートな愛情表現には慣れない。 心臓が保たない。
「準備はいいか、エリス? 外では国民たちが、君の姿を一目見ようと待ち構えているよ」
うっ。 胃が痛い。 「沈黙の聖女」ファンの皆様の期待に応えられるだろうか。 もし私が転んでドレスを破いたり、緊張で変な顔をしたりしたら、幻滅されるのではないか。
私が不安げに眉を寄せると、クラウス様は私の頬を優しく撫でた。
「大丈夫だ。君はただ、私の隣で微笑んでいればいい。……もし転びそうになったら、私が必ず支える。もし世界中が君を笑っても、私だけは君を世界一可愛いと思う自信がある」
甘い。 砂糖菓子より甘い。 でも、その言葉のおかげで、強張っていた肩の力が少し抜けた。
私は深呼吸をして、彼の腕に手を添えた。 行きましょう。 私たちの、新しい人生の始まりへ。
◇
王宮から大聖堂へと向かうパレードは、壮絶な盛り上がりを見せていた。
オープン仕様の馬車に乗った私たちに、沿道から割れんばかりの歓声が浴びせられる。 「聖女様ー!」「宰相閣下ー!」「おめでとうございますー!」 花吹雪が舞う。 人々が手を振り、涙を流して祝福してくれている。
私は、あの「処刑の日」を思い出していた。 あの日、この同じ通りを、私は罪人として引き回されていた。 飛んでくるのは石礫と罵声。 向けられるのは憎悪の視線。
それが今は、どうだ。 石礫は花びらに変わり、罵声は祝福に変わった。 世界が反転したのだ。 たった一つの武器――「沈黙」によって。
(……不思議だなぁ)
私は民衆に手を振り返しながら、心の中で呟いた。 私は何も変わっていない。 中身は相変わらずビビリで、小心者で、普通のエリスだ。 変わったのは、周囲の目と、そして隣にいるパートナーだ。
クラウス様が、私の手をギュッと握った。 人前でもお構いなしだ。 彼は民衆に向かって、誇らしげに私の手を掲げて見せた。 「見ろ、これが私の妻だ」と言わんばかりに。
その堂々とした姿に、民衆はさらに熱狂する。 「ヒューッ!」「アツアツだぞ!」「お幸せに!」
私は恥ずかしさで爆発しそうになりながら、それでも精一杯の「聖女スマイル(引きつり気味)」をキープし続けた。
◇
大聖堂での挙式は、厳かに行われた。 ステンドグラスから差し込む七色の光。 パイプオルガンの荘厳な響き。 参列席には、国王陛下、王妃陛下をはじめ、近衛騎士団の面々(ガルド団長は号泣している)、そして私の両親が座っている。
祭壇の前。 神父様が、誓いの言葉を問いかける。
「新郎、クラウス・ヴァン・アイゼンベルク。汝、この者を妻とし、病める時も健やかなる時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓うか?」
「誓います」 クラウス様の声は、力強く、迷いがなかった。 大聖堂に響き渡る、確信に満ちた低音。
「新婦、エリス・フォン・ローゼン。汝、この者を夫とし……誓うか?」
私の番だ。 一瞬、静寂が訪れる。 参列者たちが固唾を飲んで見守っている。 「沈黙の聖女」である私が、この場でどう答えるのか。 無言で頷くのか? それとも……?
私は、クラウス様の目を見た。 灰色の瞳が、優しく私を見つめている。 『無理しなくていい』と言っている。 『頷くだけでもいいんだよ』と。
でも。 私は決めていた。 この大切な誓いだけは、ちゃんと自分の声で伝えたいと。 誰のためでもない、彼のためだけに。
私は大きく息を吸い込んだ。 そして、震える唇を開いた。
「……はい。誓います」
私の声は、小さかったかもしれない。 でも、静まり返った大聖堂の中では、澄み渡る鈴の音のように響いた。
どよめきが起きた。 「喋った……!」 「聖女様の声だ……」 「なんて美しい声なんだ」
クラウス様が、破顔した。 あんなに嬉しそうな、少年のようなくしゃくしゃの笑顔を、私は初めて見た。 彼は誓いのキスをするために、ベールを持ち上げた。 至近距離で目が合う。
「……ありがとう、エリス」 彼が囁く。
「……愛しています」 私も囁き返した。 彼だけに聞こえる音量で。
唇が重なる。 長い、長いキス。 拍手喝采が巻き起こる中、私は幸福感で目眩がしそうだった。
◇
式の後は、王宮の大広間で盛大な披露宴が行われた。 美味しい料理が次々と運ばれてくる。 フォアグラのテリーヌ、伊勢海老のスープ、最高級牛のロースト……。
しかし。 私は食べられなかった。
理由は二つ。 一つは、ドレスのコルセットがきつすぎて、胃が圧迫されていること。 もう一つは、ひっきりなしに挨拶に来る貴族たちの対応に追われていることだ。
「本日はおめでとうございます!」 「あやかりたいものです」 「聖女様の加護を!」
私はグラス片手に、無言で微笑み、頷き続けるマシーンと化していた。 お腹すいた。 目の前でステーキのいい匂いがしているのに、一口も食べられないなんて拷問だ。 グゥ~……。 お腹の虫が鳴いた。 まずい。バレたか? 周りの音楽がかき消してくれたことを祈る。
その時、隣に座るクラウス様が、私の耳元に顔を寄せた。
「……お腹が空いたのか?」
地獄耳だ。 私は恥ずかしくて顔を真っ赤にし、小さくコクンと頷いた。
クラウス様は口元を手で隠し、クスクスと笑った。
「可哀想に。……私の可愛いリスさんは、木の実が足りていないようだ」
リス扱い、まだ継続中ですか。
「あとで部屋に戻ったら、二人きりで祝杯をあげよう。君の好きなものを、山ほど用意させてある」 「!!」
私は目を輝かせた。 本当ですか! 焼き芋ありますか! プリンはありますか!
私の「食欲」という名の欲望がだだ漏れになっている顔を見て、クラウス様はさらに愛おしそうに目を細めた。
「君のそういうところが好きだ。……聖女の仮面の下にある、食いしん坊で人間くさい素顔がね」
彼はテーブルの下で、私の手をこっそりと握った。 誰にも見えない場所で繋がる手。 それが、私たちだけの秘密の共有のようで、ドキドキした。
披露宴の途中、話題は自然と「あの事件」のその後へと移った。
ミリア・ベルガー。 彼女は裁判の結果、国家反逆罪で終身刑となり、北の果てにある監獄塔へ送られた。 二度とシャバの空気を吸うことはない。 彼女が最後に叫んだ言葉は、「私は悪くない! シナリオが間違ってたのよ!」だったらしい。 彼女は最後まで、自分の物語の檻から出られなかったのだ。
そして、アデル元王太子。 彼は廃嫡となり、平民として辺境の修道院に入った。 風の噂では、畑仕事に精を出し、村の子供たちに勉強を教えながら、静かに暮らしているという。 「今の生活のほうが、王宮にいた頃より自分らしい」と手紙(今度はポエムではない、普通の近況報告)が届いたこともあった。 彼もまた、彼なりの幸せを見つけたのかもしれない。
全てが終わった。 私の平穏を脅かすものは、もういない。
◇
長い長い披露宴が終わり、夜になった。 私たちはアイゼンベルク侯爵邸(今日からは私たちの愛の巣)へと戻ってきた。
使用人たちが下がると、広い寝室には二人きり。 私は重たいドレスを脱ぎ捨て、楽なネグリジェに着替えた。 やっと解放された!
「ふあぁ……疲れたぁ……」
私はベッドに大の字になって、思い切り伸びをした。 聖女の仮面、オフモード。 これが私の素の姿だ。 人前では絶対に見せられない、だらけた姿。
でも、クラウス様はそれを見て、嬉しそうに笑っている。 彼はネクタイを緩め、ベッドの端に腰掛けた。
「お疲れ様、エリス。……よく頑張ったね」 「足が棒のようです……。もう一歩も歩けません」
私はボソボソと文句を言った。 以前なら、こんなことを言ったら幻滅されるんじゃないかと怖かった。 でも今は違う。
クラウス様は私の足を手に取り、優しくマッサージを始めた。
「今日は一日中立ちっぱなしだったからな。……ここか? 痛いのは」 「あ、そこです。……うぅ、気持ちいい……」 「明日は一日中寝ていていいよ。誰にも邪魔させない」
優しい。 スパダリすぎる。 宰相閣下に足を揉ませるなんて、不敬罪で斬首ものだが、夫としては最高だ。
「ねえ、クラウス様」 「ん?」 「お腹すきました」
色気もへったくれもない発言。 しかし、クラウス様は「待ってました」とばかりに、サイドテーブルから銀のワゴンを引き寄せた。 カバーを開けると、そこには一口サイズのサンドイッチ、キッシュ、フルーツ、そして特製の焼きプリンが並んでいた。
「わぁ……!」 私は起き上がり、目を輝かせた。
「さあ、召し上がれ。私の可愛いお姫様」
私はパクついた。 美味しい。 空っぽの胃袋に染み渡る。
「ん~! 生き返ります!」 「ふふ。……君が美味しそうに食べる音は、私にとって天使のさえずりだよ」
フィルターが分厚い。 咀嚼音が天使のさえずりって、どういう聴覚構造をしているのか。 でも、彼が幸せそうだから、まあいいか。
一通り食べて満足すると、今度は猛烈な睡魔が襲ってきた。 お腹がいっぱいで、暖かくて、安心したら、もうまぶたが開かない。
「……眠い?」 クラウス様が顔を覗き込む。
「はい……。もう、目が……」 「寝ていいよ。今日は特別な夜だけど……続きは、また明日以降のお楽しみだ」
彼は私を抱き寄せ、布団をかけてくれた。 私は彼の胸に頭を擦り付けた。 トクトクと聞こえる心臓の音。 一番落ち着く音。
「クラウス様……」 「なんだい?」 「……幸せです」
私はウトウトしながら、本音を漏らした。
「私、ずっと喋るのが怖かったんです。言葉で失敗して、また嫌われるのが怖くて……。でも、貴方は私の沈黙も、こうして喋る私も、全部受け入れてくれた」
クラウス様の手が止まる。 そして、優しく髪を撫でてくれた。
「当たり前だ。……君が黙っていても、喋っていても、君は君だ。私の唯一無二の愛しい人だ」
彼は私の額にキスをした。
「おやすみ、エリス。愛している」 「……私も……愛して……」
最後まで言えず、私は深い眠りの底へと落ちていった。 夢も見ないほどの、安らかな眠りへ。
◇
翌朝。 窓から差し込む朝日で目が覚めた。 隣を見ると、クラウス様がまだ眠っている。 整った寝顔。 長いまつ毛。 無防備な表情。
私はこっそりと、彼に内緒で彼の頬にキスをした。 「おはようございます、旦那様」
これから先も、きっと色々なことがあるだろう。 宰相夫人の務めは大変だろうし、時にはまた「沈黙の聖女」を演じなければならない場面もあるかもしれない。 でも、この家の中では、私はただの「お喋りで食いしん坊なエリス」でいられる。 彼がそれを許してくれる限り、私は無敵だ。
私はベッドから抜け出し、窓を開けた。 爽やかな朝の風が吹き込んでくる。 遠くの広場に、新しく建てられた私の銅像がキラリと光っているのが見えた。 うわ、やっぱり恥ずかしい。 あんなポーズ、一生の黒歴史だ。
でも。 あの銅像の台座に刻まれた言葉を思い出す。 『沈黙は金なり』。
確かに、沈黙は私を救ってくれた。 多くの誤解と幸運を呼び込み、私をここまで連れてきてくれた。 沈黙は、金(ゴールド)のように価値あるものだった。
けれど。
私は振り返り、寝息を立てる最愛の夫を見た。 胸の奥から、温かいものが込み上げてくる。 叫びたいほどの幸福感。 誰かに伝えたくてたまらない愛おしさ。
『沈黙は金と言うけれど、この幸せだけは、誰かに叫びたい気分だわ』
私は窓の外に向かって、音のない声で叫んだ。 「私は今、世界一幸せです!」と。
そして、私はニッコリと微笑んだ。 誰のためでもない、私自身のための、最高の笑顔で。
私の物語は、これでおしまい。 でも、私たちの「お喋りな幸福」の日々は、まだ始まったばかりだ。
――Fin.
季節は巡り、初夏。 抜けるような青空の下、王都の大通りは、かつてないほどの熱気と祝祭ムードに包まれていた。 街路樹には紅白のリボンが結ばれ、建物の窓からは色とりどりの花吹雪が舞っている。 沿道を埋め尽くす民衆たちは、皆一様に興奮し、ある「パレード」の到着を今か今かと待ちわびていた。
そう。 今日は、この国を救った英雄たちの結婚式。 「氷の宰相」ことクラウス・ヴァン・アイゼンベルク侯爵と、「沈黙の聖女」ことエリス・フォン・ローゼン公爵令嬢の、世紀のロイヤルウェディング当日である。
◇
「……き、緊張で吐きそうです」
王宮の控え室。 私は純白のウェディングドレスに身を包み、鏡の前でガタガタと震えていた。
今日のドレスは、王室御用達の職人が総力を挙げて仕立てた最高傑作だ。 シルクの生地には銀糸で細やかな刺繍が施され、無数の小粒なダイヤモンドが散りばめられている。動くたびにキラキラと光を反射し、まるで天の川を纏っているようだ。 綺麗だ。 信じられないくらい綺麗だけれど、重い。 物理的にも重いし、精神的なプレッシャーが半端ない。
私の専属メイド、アンナが涙目で化粧の仕上げをしている。
「お嬢様……本当にお綺麗です。あの日、処刑台から戻ってこられた時は、まさかこんな晴れの日が来るなんて夢にも思いませんでした」 「……(コクッ)」
私は無言で頷いた。 私も思っていなかった。 あの日、「とにかく処刑されたくない」「目立たず生きよう」と決意して、ひたすら黙り込んでいた私が、まさか国の英雄となり、宰相閣下の妻になるなんて。 人生、何が起こるかわからない。
コンコン。 ノックの音がして、扉が開いた。 入ってきたのは、今日の主役である新郎、クラウス様だ。
私は息を呑んだ。 いつもの黒いフロックコートではない。 今日は純白のタキシード姿だ。 漆黒の髪を整え、精悍な顔立ちが一層際立っている。 その姿は、童話に出てくる王子様そのもの――いや、それ以上に気品と色気が漂っていて、直視するのが眩しいくらいだ。
クラウス様は私を見ると、動きを止め、ほうっと深いため息をついた。
「……美しい」
彼はゆっくりと歩み寄り、私の手を取った。
「言葉にならないな。君の美しさを表現するには、この世の辞書にある賛辞をすべて並べても足りない」 「……(照)」
私は顔を赤くして俯いた。 半年経っても、この人のストレートな愛情表現には慣れない。 心臓が保たない。
「準備はいいか、エリス? 外では国民たちが、君の姿を一目見ようと待ち構えているよ」
うっ。 胃が痛い。 「沈黙の聖女」ファンの皆様の期待に応えられるだろうか。 もし私が転んでドレスを破いたり、緊張で変な顔をしたりしたら、幻滅されるのではないか。
私が不安げに眉を寄せると、クラウス様は私の頬を優しく撫でた。
「大丈夫だ。君はただ、私の隣で微笑んでいればいい。……もし転びそうになったら、私が必ず支える。もし世界中が君を笑っても、私だけは君を世界一可愛いと思う自信がある」
甘い。 砂糖菓子より甘い。 でも、その言葉のおかげで、強張っていた肩の力が少し抜けた。
私は深呼吸をして、彼の腕に手を添えた。 行きましょう。 私たちの、新しい人生の始まりへ。
◇
王宮から大聖堂へと向かうパレードは、壮絶な盛り上がりを見せていた。
オープン仕様の馬車に乗った私たちに、沿道から割れんばかりの歓声が浴びせられる。 「聖女様ー!」「宰相閣下ー!」「おめでとうございますー!」 花吹雪が舞う。 人々が手を振り、涙を流して祝福してくれている。
私は、あの「処刑の日」を思い出していた。 あの日、この同じ通りを、私は罪人として引き回されていた。 飛んでくるのは石礫と罵声。 向けられるのは憎悪の視線。
それが今は、どうだ。 石礫は花びらに変わり、罵声は祝福に変わった。 世界が反転したのだ。 たった一つの武器――「沈黙」によって。
(……不思議だなぁ)
私は民衆に手を振り返しながら、心の中で呟いた。 私は何も変わっていない。 中身は相変わらずビビリで、小心者で、普通のエリスだ。 変わったのは、周囲の目と、そして隣にいるパートナーだ。
クラウス様が、私の手をギュッと握った。 人前でもお構いなしだ。 彼は民衆に向かって、誇らしげに私の手を掲げて見せた。 「見ろ、これが私の妻だ」と言わんばかりに。
その堂々とした姿に、民衆はさらに熱狂する。 「ヒューッ!」「アツアツだぞ!」「お幸せに!」
私は恥ずかしさで爆発しそうになりながら、それでも精一杯の「聖女スマイル(引きつり気味)」をキープし続けた。
◇
大聖堂での挙式は、厳かに行われた。 ステンドグラスから差し込む七色の光。 パイプオルガンの荘厳な響き。 参列席には、国王陛下、王妃陛下をはじめ、近衛騎士団の面々(ガルド団長は号泣している)、そして私の両親が座っている。
祭壇の前。 神父様が、誓いの言葉を問いかける。
「新郎、クラウス・ヴァン・アイゼンベルク。汝、この者を妻とし、病める時も健やかなる時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓うか?」
「誓います」 クラウス様の声は、力強く、迷いがなかった。 大聖堂に響き渡る、確信に満ちた低音。
「新婦、エリス・フォン・ローゼン。汝、この者を夫とし……誓うか?」
私の番だ。 一瞬、静寂が訪れる。 参列者たちが固唾を飲んで見守っている。 「沈黙の聖女」である私が、この場でどう答えるのか。 無言で頷くのか? それとも……?
私は、クラウス様の目を見た。 灰色の瞳が、優しく私を見つめている。 『無理しなくていい』と言っている。 『頷くだけでもいいんだよ』と。
でも。 私は決めていた。 この大切な誓いだけは、ちゃんと自分の声で伝えたいと。 誰のためでもない、彼のためだけに。
私は大きく息を吸い込んだ。 そして、震える唇を開いた。
「……はい。誓います」
私の声は、小さかったかもしれない。 でも、静まり返った大聖堂の中では、澄み渡る鈴の音のように響いた。
どよめきが起きた。 「喋った……!」 「聖女様の声だ……」 「なんて美しい声なんだ」
クラウス様が、破顔した。 あんなに嬉しそうな、少年のようなくしゃくしゃの笑顔を、私は初めて見た。 彼は誓いのキスをするために、ベールを持ち上げた。 至近距離で目が合う。
「……ありがとう、エリス」 彼が囁く。
「……愛しています」 私も囁き返した。 彼だけに聞こえる音量で。
唇が重なる。 長い、長いキス。 拍手喝采が巻き起こる中、私は幸福感で目眩がしそうだった。
◇
式の後は、王宮の大広間で盛大な披露宴が行われた。 美味しい料理が次々と運ばれてくる。 フォアグラのテリーヌ、伊勢海老のスープ、最高級牛のロースト……。
しかし。 私は食べられなかった。
理由は二つ。 一つは、ドレスのコルセットがきつすぎて、胃が圧迫されていること。 もう一つは、ひっきりなしに挨拶に来る貴族たちの対応に追われていることだ。
「本日はおめでとうございます!」 「あやかりたいものです」 「聖女様の加護を!」
私はグラス片手に、無言で微笑み、頷き続けるマシーンと化していた。 お腹すいた。 目の前でステーキのいい匂いがしているのに、一口も食べられないなんて拷問だ。 グゥ~……。 お腹の虫が鳴いた。 まずい。バレたか? 周りの音楽がかき消してくれたことを祈る。
その時、隣に座るクラウス様が、私の耳元に顔を寄せた。
「……お腹が空いたのか?」
地獄耳だ。 私は恥ずかしくて顔を真っ赤にし、小さくコクンと頷いた。
クラウス様は口元を手で隠し、クスクスと笑った。
「可哀想に。……私の可愛いリスさんは、木の実が足りていないようだ」
リス扱い、まだ継続中ですか。
「あとで部屋に戻ったら、二人きりで祝杯をあげよう。君の好きなものを、山ほど用意させてある」 「!!」
私は目を輝かせた。 本当ですか! 焼き芋ありますか! プリンはありますか!
私の「食欲」という名の欲望がだだ漏れになっている顔を見て、クラウス様はさらに愛おしそうに目を細めた。
「君のそういうところが好きだ。……聖女の仮面の下にある、食いしん坊で人間くさい素顔がね」
彼はテーブルの下で、私の手をこっそりと握った。 誰にも見えない場所で繋がる手。 それが、私たちだけの秘密の共有のようで、ドキドキした。
披露宴の途中、話題は自然と「あの事件」のその後へと移った。
ミリア・ベルガー。 彼女は裁判の結果、国家反逆罪で終身刑となり、北の果てにある監獄塔へ送られた。 二度とシャバの空気を吸うことはない。 彼女が最後に叫んだ言葉は、「私は悪くない! シナリオが間違ってたのよ!」だったらしい。 彼女は最後まで、自分の物語の檻から出られなかったのだ。
そして、アデル元王太子。 彼は廃嫡となり、平民として辺境の修道院に入った。 風の噂では、畑仕事に精を出し、村の子供たちに勉強を教えながら、静かに暮らしているという。 「今の生活のほうが、王宮にいた頃より自分らしい」と手紙(今度はポエムではない、普通の近況報告)が届いたこともあった。 彼もまた、彼なりの幸せを見つけたのかもしれない。
全てが終わった。 私の平穏を脅かすものは、もういない。
◇
長い長い披露宴が終わり、夜になった。 私たちはアイゼンベルク侯爵邸(今日からは私たちの愛の巣)へと戻ってきた。
使用人たちが下がると、広い寝室には二人きり。 私は重たいドレスを脱ぎ捨て、楽なネグリジェに着替えた。 やっと解放された!
「ふあぁ……疲れたぁ……」
私はベッドに大の字になって、思い切り伸びをした。 聖女の仮面、オフモード。 これが私の素の姿だ。 人前では絶対に見せられない、だらけた姿。
でも、クラウス様はそれを見て、嬉しそうに笑っている。 彼はネクタイを緩め、ベッドの端に腰掛けた。
「お疲れ様、エリス。……よく頑張ったね」 「足が棒のようです……。もう一歩も歩けません」
私はボソボソと文句を言った。 以前なら、こんなことを言ったら幻滅されるんじゃないかと怖かった。 でも今は違う。
クラウス様は私の足を手に取り、優しくマッサージを始めた。
「今日は一日中立ちっぱなしだったからな。……ここか? 痛いのは」 「あ、そこです。……うぅ、気持ちいい……」 「明日は一日中寝ていていいよ。誰にも邪魔させない」
優しい。 スパダリすぎる。 宰相閣下に足を揉ませるなんて、不敬罪で斬首ものだが、夫としては最高だ。
「ねえ、クラウス様」 「ん?」 「お腹すきました」
色気もへったくれもない発言。 しかし、クラウス様は「待ってました」とばかりに、サイドテーブルから銀のワゴンを引き寄せた。 カバーを開けると、そこには一口サイズのサンドイッチ、キッシュ、フルーツ、そして特製の焼きプリンが並んでいた。
「わぁ……!」 私は起き上がり、目を輝かせた。
「さあ、召し上がれ。私の可愛いお姫様」
私はパクついた。 美味しい。 空っぽの胃袋に染み渡る。
「ん~! 生き返ります!」 「ふふ。……君が美味しそうに食べる音は、私にとって天使のさえずりだよ」
フィルターが分厚い。 咀嚼音が天使のさえずりって、どういう聴覚構造をしているのか。 でも、彼が幸せそうだから、まあいいか。
一通り食べて満足すると、今度は猛烈な睡魔が襲ってきた。 お腹がいっぱいで、暖かくて、安心したら、もうまぶたが開かない。
「……眠い?」 クラウス様が顔を覗き込む。
「はい……。もう、目が……」 「寝ていいよ。今日は特別な夜だけど……続きは、また明日以降のお楽しみだ」
彼は私を抱き寄せ、布団をかけてくれた。 私は彼の胸に頭を擦り付けた。 トクトクと聞こえる心臓の音。 一番落ち着く音。
「クラウス様……」 「なんだい?」 「……幸せです」
私はウトウトしながら、本音を漏らした。
「私、ずっと喋るのが怖かったんです。言葉で失敗して、また嫌われるのが怖くて……。でも、貴方は私の沈黙も、こうして喋る私も、全部受け入れてくれた」
クラウス様の手が止まる。 そして、優しく髪を撫でてくれた。
「当たり前だ。……君が黙っていても、喋っていても、君は君だ。私の唯一無二の愛しい人だ」
彼は私の額にキスをした。
「おやすみ、エリス。愛している」 「……私も……愛して……」
最後まで言えず、私は深い眠りの底へと落ちていった。 夢も見ないほどの、安らかな眠りへ。
◇
翌朝。 窓から差し込む朝日で目が覚めた。 隣を見ると、クラウス様がまだ眠っている。 整った寝顔。 長いまつ毛。 無防備な表情。
私はこっそりと、彼に内緒で彼の頬にキスをした。 「おはようございます、旦那様」
これから先も、きっと色々なことがあるだろう。 宰相夫人の務めは大変だろうし、時にはまた「沈黙の聖女」を演じなければならない場面もあるかもしれない。 でも、この家の中では、私はただの「お喋りで食いしん坊なエリス」でいられる。 彼がそれを許してくれる限り、私は無敵だ。
私はベッドから抜け出し、窓を開けた。 爽やかな朝の風が吹き込んでくる。 遠くの広場に、新しく建てられた私の銅像がキラリと光っているのが見えた。 うわ、やっぱり恥ずかしい。 あんなポーズ、一生の黒歴史だ。
でも。 あの銅像の台座に刻まれた言葉を思い出す。 『沈黙は金なり』。
確かに、沈黙は私を救ってくれた。 多くの誤解と幸運を呼び込み、私をここまで連れてきてくれた。 沈黙は、金(ゴールド)のように価値あるものだった。
けれど。
私は振り返り、寝息を立てる最愛の夫を見た。 胸の奥から、温かいものが込み上げてくる。 叫びたいほどの幸福感。 誰かに伝えたくてたまらない愛おしさ。
『沈黙は金と言うけれど、この幸せだけは、誰かに叫びたい気分だわ』
私は窓の外に向かって、音のない声で叫んだ。 「私は今、世界一幸せです!」と。
そして、私はニッコリと微笑んだ。 誰のためでもない、私自身のための、最高の笑顔で。
私の物語は、これでおしまい。 でも、私たちの「お喋りな幸福」の日々は、まだ始まったばかりだ。
――Fin.
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実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
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