偽聖女と蔑まれた私、実は【魔力鑑定EX】の持ち主でした~追放先で出会った無愛想な公爵様に見初められ、今更帰ってきて言われてももう遅いです

放浪人

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第29話:祝福の日に、誓いの言葉

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そして、運命の日がやってきた。
ヴォルフガント領が、一年で、最も美しい、純白の「氷の花(アイスリリィ)」に彩られる日。
私と、カイの、結婚式当日。

城の大聖堂は、ヴォルフガントの民や、遠方から駆けつけた各国の賓客で、埋め尽くされていた。
その中には、少し緊張した面持ちの父と、そして、今ではすっかり私の親友となった、クラリス嬢の姿もあった。
皆、温かい、祝福の眼差しで、私を見守ってくれている。

私は、この日のために、世界中の職人たちが粋を集めて作ってくれた、純白のウェディングドレスに身を包んでいた。
繊細なレースと、星屑のような真珠が、ふんだんにあしらわれている。
カイから贈られた、夜空色のサファイアの指輪が、ブーケを握る指先で、幸せそうに輝いていた。

父にエスコートされて、ゆっくりと、バージンロードを歩む。
その先で、カイが、いつもは揺るがない彼が、少しだけ、本当に少しだけ、緊張した面持ちで、私を待っていた。

彼は、白を基調とした、公爵家の、最も格式の高い正礼装に身を包んでいる。
その、物語の中の王子様そのもののような、あまりにも凛々しく、美しい姿に、私は、思わず、見惚れてしまった。

祭壇の前で、父は、私の手を、カイの手に、そっと重ねた。

「……娘を、よろしく頼む」
父の、震える声。

「ええ。必ず、幸せにします。命に代えても」
カイの、力強く、揺るぎない声。

私たちは、厳かな司祭の前に並び、誓いの儀式が始まった。

「汝、カイ・フォン・ヴォルフガントは、アリア・フォン・リンドバーグを妻とし、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、彼女を愛し、敬い、慈しみ、その身を守ることを、神に誓いますか」

「――はい。誓います」

カイの、迷いのない、はっきりとした声が、高い天井の聖堂に、厳かに響き渡る。

「汝、アリア・フォン・リンドバーグは、カイ・フォン・ヴォルフガントを夫とし、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、彼を愛し、敬い、支えることを、神に誓いますか」

「――はい。誓います」

私も、ありったけの愛と、感謝の気持ちを込めて、答えた。
もう、涙は出なかった。
ただ、心が、どうしようもないほどの幸福感で、満ち溢れていた。

「では、誓いの口づけを」

カイが、私の顔を覆う、薄いベールを、そっと上げる。
その、間近にある青い瞳は、どこまでも優しく、深い愛に満ちて、私だけを映していた。

「アリア」
「カイ」

私たちは、お互いの名前を呼び合い、そして、唇を重ねた。

その瞬間、聖堂は、割れんばかりの拍手と、祝福の歓声に包まれた。
天井から、色とりどりの花びらが、私たちの上に、まるで光のシャワーのように、きらきらと降り注ぐ。

偽りの聖女と蔑まれ、すべてを失った、あの絶望の日から、二年。
私は、こんなにも、幸せな日を迎えることができた。
この、愛する人と、出会えたから。
私の、本当の価値を見つけ出し、その凍てついた心を、私にだけ、開いてくれた、この人と。

私たちは、皆の祝福を受けながら、聖堂を後にする。
これから始まる、新しい人生。
きっと、楽しいことばかりじゃないかもしれない。
困難に、ぶつかることもあるだろう。

でも、この人の手が、隣にある限り。
この人の、温かい愛が、そばにある限り。
私たちは、どんな困難も、二人で、乗り越えていける。

そう、確信していた。
世界で一番、幸せな花嫁は、今、ここに。
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