追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ~今更ですが、この温もりは手放せません!?~

放浪人

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第三幕:過去の影、新たな運命の鍛造

第19話:ざまぁの序章、敵の自滅

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イゾルデの侍女の告白により、機密文書盗難事件の真相は明らかになった。イゾルデが私を陥れるために仕組んだ卑劣な罠だったのだ。カシアン様は直ちにアラリック王子とイゾルデを拘束し、国王陛下に使者を送って事の次第を報告した。

「これで、ようやく私の無実が証明されますわね」

私は安堵のため息をついた。長かった悪夢が、ようやく終わろうとしている。

「ああ。だが、油断はするな。奴らが、このまま大人しく引き下がるとは思えん」

カシアン様の言葉通り、イゾルデは最後まで抵抗を試みた。彼女は、拘束された部屋で泣き叫び、自分は無実だと主張し続けた。さらには、アラリック王子に責任をなすりつけようとさえした。

「全て、アラリック様がお考えになったことですわ! わたくしは、ただ殿下に従っただけでございます!」

その見苦しい言い訳に、アラリック王子は激昂した。

「なっ……何を言うか、イゾルデ! お前が俺を唆したのではないか! 全てお前の計画だったはずだ!」

二人は、お互いに罪を擦り付け合い、醜い罵り合いを始めた。その様子は、まさに自滅と呼ぶにふさわしかった。彼らの間にかつてあったであろう甘い関係は、もはや見る影もなかった。

「……見苦しい限りだな」

カシアン様は冷ややかに呟いた。私も同感だった。彼らの姿は、哀れでさえあった。

数日後、国王陛下からの返書が届いた。そこには、アラリック王子とイゾルデを王都へ召喚し、正式な取り調べを行うとの旨が記されていた。そして、私に対しては、今回の事件における心労を労う言葉と、カシアン卿と共にグレイウォール領の安寧に尽力するよう期待するとの言葉が添えられていた。

「……陛下は、全てお見通しだったのかもしれませんわね」

私は、国王陛下の賢明な判断に感謝した。

アラリック王子とイゾルデは、護衛の兵士に連れられて、失意のうちにグレイロック城を後にした。去り際に、イゾルデは私を睨みつけ、呪詛のような言葉を吐いた。

「覚えていらっしゃい、セラフィナ! わたくしは、決してあなたを許さないわ!」

その言葉にはもはや何の力もなく、ただ空しく響くだけだった。彼女の悪役令嬢としての役割は、完全に終わったのだ。

彼らが去った後のグレイロック城には、久しぶりに穏やかな空気が戻ってきた。家臣たちは、私の無実が証明されたことを喜び、私に対する態度も一層温かいものになった。

「セラフィナ、よく耐えたな」

カシアン様は、私の肩を優しく抱き寄せた。

「カシアン様のおかげですわ。あなたが信じてくださらなければ、私は……」

「礼には及ばん。俺は、当然のことをしたまでだ」

彼の言葉はぶっきらぼうだったが、その瞳には深い愛情が宿っているのが分かった。

イゾルデたちの「ざまぁ」は、まだ始まったばかりだ。王都での取り調べで、彼らの罪はさらに明らかになるだろう。そして、彼らはその報いを必ず受けることになる。

しかし、私にとって重要なのは、彼らの破滅ではない。私が取り戻したかったのは、名誉と、そして穏やかな日々だ。そして今、それがようやく手に入ろうとしている。

カシアン様と共に、このグレイウォールで、新しい人生を歩んでいく。その未来は、きっと明るいものになるだろう。私は、そう確信していた。
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