悪役令嬢ですが、二度目は無能で通します……なので執事は黙っててください

放浪人

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第14話 口止めの方法

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部屋に戻った私は、爪を噛むのを必死で堪えていた。
ユイの口を封じなければならない。
けれど、どうやって?
脅して黙らせれば、彼女は恐怖で萎縮し、かえって怪しい挙動をするだろう。
それに、私はもう、誰も傷つけたくない。

「……リディア様、お茶が入りました」

レージが静かにカップを置く。
湯気と共に立ち上るベルガモットの香り。
彼は何も聞かない。けれど、私が温室で何をしたのか、すでに把握しているはずだ。

「レージ。……あの子、ユイを呼んで」

「承知いたしました」

数分後、レージに連れられてユイが部屋に入ってきた。
彼女は緊張でガチガチになり、視線を床に落としている。

「失礼いたします……」

「ユイ」

私はソファに深く座り、足を組んで彼女を見下ろした。
できるだけ尊大に。わがままに。

「先ほどの乾燥方法のことだけど」

「は、はい! 村のみんなにも教えて、すぐに薬を作ろうと……」

「駄目よ」

短く遮る。
ユイが驚いて顔を上げた。

「あれは、我がアルノー公爵家の秘伝なの。平民が勝手に広めていい知識じゃないわ」

嘘だ。
ただの生活の知恵だ。
けれど、権威で縛るのが一番手っ取り早い。

「で、でも、薬が足りなくて……」

「だから、あなたに『独占権』をあげる」

「え?」

「今後、その方法で薬草を加工していいのは、あなただけ。私が許可するわ。その代わり、誰にも教えないこと。もし誰かに喋ったら……」

私は言葉を切り、カップの縁を指でなぞる。
陶器が鳴る高い音が、静寂に響く。

「二度と、私の領地で薬草を摘ませない」

ユイが息を呑む。
それは追放宣告に等しい。
けれど、同時に私は彼女に「特権」を与えたのだ。
村で唯一、効率的な薬作りができる存在。
それは彼女の立場を守り、自信を与えることにもなる。

「……わかりました。絶対に、誰にも言いません」

ユイは強く頷いた。
その目は恐怖ではなく、使命感に燃えている。
秘密を共有する共犯者。
彼女はもう、私のことを「すごい人」とは言いふらさない。「秘密を守るべき主人」として認識したのだ。

「下がっていいわ」

ユイが一礼して出て行く。
扉が閉まると、私はふぅ、と長い息を吐いた。
人を支配するような真似をしてしまった。
嫌な汗が背中を伝う。

「……見事な手綱捌きでございます」

レージが、パチパチと暖炉の薪を爆(は)ぜさせながら言った。
火の粉が舞い上がる。

「怒ってる?」

「いいえ。恐怖ではなく、利益と名誉で口を塞ぐ。賢明なご判断です」

彼は少しだけ笑っていた。
その笑みは、私の汚れた手腕を肯定する共犯者のそれだった。
暖炉の火がぱちぱちと音を立てる。
その音が、私の罪悪感を少しだけ軽くしてくれる気がした。
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