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第15話 白夜の光
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夜が来ても、窓の外が暗くならない。
これが「白夜」か。
雪が月光と星明かりを反射し、空全体が薄墨を流したように青白く発光している。
カーテンを閉めても、その冷たい光は隙間から侵入してくる。
「……眠れない」
ベッドの中で寝返りを打つ。
目を閉じると、あの日の光景が蘇る。
処刑台。
見上げれば、今日と同じような、どこまでも高い青白い空があった。
首筋に触れる冷気。
民衆の熱狂。
断罪の言葉。
『悪女リディアに死を!』
「ひっ……!」
自分の悲鳴で喉が引きつる。
心臓が早鐘を打ち、脂汗がシーツを濡らす。
怖い。
生きているのに、死んだ記憶が体を縛り付けて離さない。
呼吸が浅くなり、指先が冷たく痺れていく。
私は震える手でサイドテーブルのランプを消した。
人工的な灯りがあると、その影の中に「誰か」がいるような気がしてしまうから。
部屋は完全な闇にはならず、窓からの青白い雪明かりだけに満たされた。
静寂。
音がない。
雪がすべての音を吸い込んでしまったような、耳が痛くなるほどの静けさ。
それがまた、私を孤独の底へと突き落とす。
「……う、うぅ……」
涙が溢れて止まらない。
公爵令嬢としての誇りも、無能を演じる計算も、夜の闇の中では意味をなさない。
ただの、死にたくない一人の少女に戻ってしまう。
その時。
コツ……。
微かな音が、扉の外でした。
足音ではない。
誰かが、そこに「いる」ことを知らせるような、床板がきしむ音。
そして、衣擦れの音が続く。
ノックはされない。
声もかけられない。
ただ、扉一枚隔てた向こう側に、誰かが立ち止まり、背中を預けている気配が伝わってきた。
レージだ。
彼がそこにいる。
入ってきて慰めるわけでもなく、立ち去るわけでもなく。
ただ、私が悪夢に飲み込まれないように、見張っている。
その気配を感じた瞬間、張り詰めていた恐怖の糸がふっと緩んだ。
一人じゃない。
この青白い地獄のような夜の中で、彼だけは私を置いていかない。
私は涙を拭い、膝を抱えて丸くなった。
雪の光はまだ冷たいけれど、扉の向こうの微かな体温を感じながら、私はようやく重たい目蓋(まぶた)を閉じた。
これが「白夜」か。
雪が月光と星明かりを反射し、空全体が薄墨を流したように青白く発光している。
カーテンを閉めても、その冷たい光は隙間から侵入してくる。
「……眠れない」
ベッドの中で寝返りを打つ。
目を閉じると、あの日の光景が蘇る。
処刑台。
見上げれば、今日と同じような、どこまでも高い青白い空があった。
首筋に触れる冷気。
民衆の熱狂。
断罪の言葉。
『悪女リディアに死を!』
「ひっ……!」
自分の悲鳴で喉が引きつる。
心臓が早鐘を打ち、脂汗がシーツを濡らす。
怖い。
生きているのに、死んだ記憶が体を縛り付けて離さない。
呼吸が浅くなり、指先が冷たく痺れていく。
私は震える手でサイドテーブルのランプを消した。
人工的な灯りがあると、その影の中に「誰か」がいるような気がしてしまうから。
部屋は完全な闇にはならず、窓からの青白い雪明かりだけに満たされた。
静寂。
音がない。
雪がすべての音を吸い込んでしまったような、耳が痛くなるほどの静けさ。
それがまた、私を孤独の底へと突き落とす。
「……う、うぅ……」
涙が溢れて止まらない。
公爵令嬢としての誇りも、無能を演じる計算も、夜の闇の中では意味をなさない。
ただの、死にたくない一人の少女に戻ってしまう。
その時。
コツ……。
微かな音が、扉の外でした。
足音ではない。
誰かが、そこに「いる」ことを知らせるような、床板がきしむ音。
そして、衣擦れの音が続く。
ノックはされない。
声もかけられない。
ただ、扉一枚隔てた向こう側に、誰かが立ち止まり、背中を預けている気配が伝わってきた。
レージだ。
彼がそこにいる。
入ってきて慰めるわけでもなく、立ち去るわけでもなく。
ただ、私が悪夢に飲み込まれないように、見張っている。
その気配を感じた瞬間、張り詰めていた恐怖の糸がふっと緩んだ。
一人じゃない。
この青白い地獄のような夜の中で、彼だけは私を置いていかない。
私は涙を拭い、膝を抱えて丸くなった。
雪の光はまだ冷たいけれど、扉の向こうの微かな体温を感じながら、私はようやく重たい目蓋(まぶた)を閉じた。
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