悪役令嬢ですが、二度目は無能で通します……なので執事は黙っててください

放浪人

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【あとがき ~執事の提案する新しい娯楽~】

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窓の外では、春の陽気が残雪をゆっくりと溶かしている。
私は執務机に積み上がった書類の山を片付け、ふぅと長い息を吐いた。

「……終わったわね」

全六十話。
断罪の回避から始まり雪崩に襲われ王都で叫び最後は少し恥ずかしい告白まで。
本当に怒涛の日々だった。

「お疲れ様でございます、リディア様」

タイミングよく、湯気の立つ紅茶と焼き菓子が差し出される。
レージだ。彼はいつもの完璧な手つきでカップを置くと、なぜか今日は銀の盆に『四角い板』のようなものを載せていた。

「ありがとう。……で、それは何? 新しい領地の報告書?」

「いいえ。これは『電子書籍端末』なるものです」

「デンシ……?」

私が首を傾げると、レージは恭しく説明を始めた。

「私たちの物語を最後まで見届けてくださった読者の皆様へ、作者である『放浪人』から、別の世界への招待状が届いております」

「別の世界?」

「はい。この作者は、私たちの世界とはまた違う物語を、Kindleという場所で公開しているそうです」

レージが指先で画面を滑らせると、見たこともない表紙が次々と現れる。

「リディア様。これらは『Kindle Unlimited』……つまり、読み放題に対応しております。加入されている方なら、追加料金なしで、好きなだけ物語の世界に浸れるとのこと」

「へえ、太っ腹ね。……でも、どうせ探すのが面倒なんでしょう?」

私が意地悪く聞くと、レージはニッコリと微笑み、私の顔を覗き込んだ。

「ご安心ください。検索窓に『放浪人』と入れていただくだけです。……漢字三文字、さすらう人と書いて放浪人。これで検索すれば、すぐに辿り着けます」

「……随分と宣伝熱心ね、あなた」

「当然です。作者が潤えば、私たちの番外編が書かれる可能性も高まりますから。……私はまだ、あなたとの甘い日常を書き足りないと思っておりますので」

「なっ……!?」

サラリと言われた言葉に、私はカッと頬が熱くなるのを感じた。
この執事は、どこまで計算高いのかしら。

「……わかったわよ。気が向いたら読んでみるわ」

「賢明なご判断です。読者の皆様も、もしお時間がございましたら、ぜひ『放浪人』の他の作品にも触れてみてください。私たちとは違う、新しい出会いが待っているはずです」

レージが深く一礼する。
私も紅茶を一口飲み、画面の向こうのあなたに向けて、精一杯の感謝を込めて微笑んだ。

「ここまで読んでくれて、本当にありがとう。……またどこかで、会えるといいわね」

「お待ちしております。……Kindleの海で、放浪人で検索を。お忘れなく」

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