29 / 110
15-1
しおりを挟む
「お前、何やらかした」
セシリアを教会に連れて行くと、神父がめちゃくちゃ怖い顔をした。
仕方ないか。セシリアの頬、だいぶん腫れちまったし。
「あぅ。いば、わうないぉ」
「いや、俺が悪いんだ。寝ぼけて、その……嫌な夢見てさ。それで寝起きに……」
「この子を殴っちまったってことか。はぁ……まぁそういう事ならしゃーねえな。お嬢ちゃん、ごめんな、痛かったろう」
神父が呪文を唱えると、緑色の光がセシリアの顔へと吸い込まれていく。
頬の腫れも目に見えて引いていき、神父の手が離れる頃には赤かったのも元に戻っていた。
「どうだ? 痛くねえか?」
「……おぉ! はい!」
「そうかそうか。俺様は世界最強無敵の超絶イケメン神父だからな。俺様に治せない怪我はない!!」
いや、セシリアには申し訳ないが、あの傷って重傷でもなんでもないだろ?
あれを治せたからってそこまでドヤるほどじゃないぞ。
呆れて神父を見ていると、何を思ったか突然俺の肩に腕を回してきた。
「リヴァくぅーん。寝ぼけてこの子を殴ったって、つまり君たち一緒だったってことぉー?」
下衆スイッチが入りやがったな。
「セシリア、変態神父は放っておいてさっさと行こうぜ」
「ひぁ……あ、はいっ」
「ん? 顔が赤いけど、まだどっか傷むのか? おいエロ神父、きっちり治してやれよ。腕が鈍ってんじゃねえのか」
「お前は頭の方を治したほうがよさそうだな」
「はぁ?」
頭痛もなんもねえし!
「ほら早くヒーリングしろよ」
「ぁう、いぃ、いいの。いたぁ、ないの」
「い、いいのか? 本当か?」
「はいっ。ほぉと」
まぁ本人がそう言うなら……あ。
「てめぇー! 生臭坊主が変なこと言うからセシリアが!」
「お前ぇ、今さら気づくのか? 馬鹿だなぁ。なぁお嬢ちゃん」
「ひぅ……ぁ……うぁ……ふいいぃーっ」
さっきよりもいっそう顔を赤らめてセシリアが蹲る。
その顔を両手で多い隠し、首をぶんぶんと左右に振った。
「あ、ぁ、謝れよエロ生臭坊主!」
「おぉっと、また進化したぜ俺様」
「退化してんだよ! あぁもう。行こうぜセシリア。こんな奴に付き合ってらんねえよ」
「ひゃ、ひゃい」
蹲るセシリアが手を伸ばし、その手を掴んで──
──隆二、私、子供が出来たの。
「くっ」
直ぐに払いのけた。
目を丸くして俺を見上げるセシリア。
「ごめ……まだ引きずってるみたいなんだ」
「……あ……だ……だい、おぉーう?」
心配そうに俺を見つめる彼女の瞳も……気持ち悪い。
愛奈じゃないって分かってる。
女が女、みんなあんな奴とは違うって分かってる。
けど、吐き気がするんだ。
「あぁー……見つめ合ってるところ悪いが、ちょっといいかぁ?」
「み、見つめ合ったりしてねえし!」
「はいはい、ボクちゃんちょーっとこっち来ようなぁ」
「お、おい。生臭坊主、なんだよ急にっ」
首根っこを掴まれ、そのまま神父の部屋へと連れ込まれた。
扉を閉めた神父が、急に真面目な顔をして椅子に腰を掛ける。
「なにがあった?」
「何がって、なにがだよ」
「押し問答してんじゃねえんだぞ。お前、さっきめちゃくちや辛そうな顔してたぞ。お前のあんな顔、今まで見たことねえ」
「う……」
生臭坊主め。余計なところでほんとよく見てやがる。
しかもこうなるとしつこいんだよな。
セシリアを教会に連れて行くと、神父がめちゃくちゃ怖い顔をした。
仕方ないか。セシリアの頬、だいぶん腫れちまったし。
「あぅ。いば、わうないぉ」
「いや、俺が悪いんだ。寝ぼけて、その……嫌な夢見てさ。それで寝起きに……」
「この子を殴っちまったってことか。はぁ……まぁそういう事ならしゃーねえな。お嬢ちゃん、ごめんな、痛かったろう」
神父が呪文を唱えると、緑色の光がセシリアの顔へと吸い込まれていく。
頬の腫れも目に見えて引いていき、神父の手が離れる頃には赤かったのも元に戻っていた。
「どうだ? 痛くねえか?」
「……おぉ! はい!」
「そうかそうか。俺様は世界最強無敵の超絶イケメン神父だからな。俺様に治せない怪我はない!!」
いや、セシリアには申し訳ないが、あの傷って重傷でもなんでもないだろ?
あれを治せたからってそこまでドヤるほどじゃないぞ。
呆れて神父を見ていると、何を思ったか突然俺の肩に腕を回してきた。
「リヴァくぅーん。寝ぼけてこの子を殴ったって、つまり君たち一緒だったってことぉー?」
下衆スイッチが入りやがったな。
「セシリア、変態神父は放っておいてさっさと行こうぜ」
「ひぁ……あ、はいっ」
「ん? 顔が赤いけど、まだどっか傷むのか? おいエロ神父、きっちり治してやれよ。腕が鈍ってんじゃねえのか」
「お前は頭の方を治したほうがよさそうだな」
「はぁ?」
頭痛もなんもねえし!
「ほら早くヒーリングしろよ」
「ぁう、いぃ、いいの。いたぁ、ないの」
「い、いいのか? 本当か?」
「はいっ。ほぉと」
まぁ本人がそう言うなら……あ。
「てめぇー! 生臭坊主が変なこと言うからセシリアが!」
「お前ぇ、今さら気づくのか? 馬鹿だなぁ。なぁお嬢ちゃん」
「ひぅ……ぁ……うぁ……ふいいぃーっ」
さっきよりもいっそう顔を赤らめてセシリアが蹲る。
その顔を両手で多い隠し、首をぶんぶんと左右に振った。
「あ、ぁ、謝れよエロ生臭坊主!」
「おぉっと、また進化したぜ俺様」
「退化してんだよ! あぁもう。行こうぜセシリア。こんな奴に付き合ってらんねえよ」
「ひゃ、ひゃい」
蹲るセシリアが手を伸ばし、その手を掴んで──
──隆二、私、子供が出来たの。
「くっ」
直ぐに払いのけた。
目を丸くして俺を見上げるセシリア。
「ごめ……まだ引きずってるみたいなんだ」
「……あ……だ……だい、おぉーう?」
心配そうに俺を見つめる彼女の瞳も……気持ち悪い。
愛奈じゃないって分かってる。
女が女、みんなあんな奴とは違うって分かってる。
けど、吐き気がするんだ。
「あぁー……見つめ合ってるところ悪いが、ちょっといいかぁ?」
「み、見つめ合ったりしてねえし!」
「はいはい、ボクちゃんちょーっとこっち来ようなぁ」
「お、おい。生臭坊主、なんだよ急にっ」
首根っこを掴まれ、そのまま神父の部屋へと連れ込まれた。
扉を閉めた神父が、急に真面目な顔をして椅子に腰を掛ける。
「なにがあった?」
「何がって、なにがだよ」
「押し問答してんじゃねえんだぞ。お前、さっきめちゃくちや辛そうな顔してたぞ。お前のあんな顔、今まで見たことねえ」
「う……」
生臭坊主め。余計なところでほんとよく見てやがる。
しかもこうなるとしつこいんだよな。
52
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる