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2章
第──28
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「もっふもふからの──ぶっくぶくやぞ!」
『ぎゅうぅぅぅぅ』
ギルドの裏手にある井戸の横で、桶に水を汲み毛玉にざぱぁー。
そして石鹸で少し撫で泡立てようとしたんだが。
「泡が出ないな?」
「汚れが激しいからじゃない?」
「そうですね。汚れが激しいほど、泡が立ちませんから」
なるほど。その話は聞いたことがあるな。
一度軽く洗って、石鹸を水で洗い流し、再び撫でる。
うん。まだ泡立たない。
三回目でようやく泡立つようになると、今度こそぶくぶくのもこもこになった。
『む、むぎゅぅぅぅ』
「毛玉ご臨終。さて、どうやって乾かしてやるかな。ドライヤーはないし……いや、似たものなら作れる!」
要は温かい風を送れればいいんだ。
リシェルの風の精霊に手伝って貰おう。
「"空気操作"──で範囲内の空気を温めるっと。リシェル、ここから毛玉に向かって風を送ってくれるよう、精霊に頼んでくれないか?」
「風ですか?」
「あぁ。毛玉を少しでも早く乾かすためにな」
空気の温度は50度ぐらいでいいかな?
あんま高くし過ぎると熱風どころじゃなくなるし。
「贅沢を言えばブラシが欲しいよなぁ」
「わたしの使う?」
「いや、でも毛玉の毛がつくだろ?」
「新しいの買ってよ」
と、シェリルはにこやかに言う。
つまりそういうことか!
ブラシで毛を梳いてやりながら、リシェルが風を送る。
『きゅっ!』
突然毛玉が暴れだす。
くっ。せっかく綺麗にしてやったんんだ、ここで汚れさせてなる者か!
「大人しくしろっ。大人しくしないと、いつまで経っても終わらないぞっ」
『ぎゅっぎゅっ』
精霊がいるだろう方向に腹を見せるよう抱っこするが、後ろ脚をげしげししやがって痛い!
「痛かったんでしょ。貸して」
「え、あ、うん……」
シェリルに交代すると、毛玉の野郎は急におとなしくなる。
そしてお目目うっとり。
そうするうちにあれよあれよともっふもふになった毛玉は、それまで薄いブラウンだと思った毛色がまったくの別物だったと知る。
白──にほんのりコバルトブルーを混ぜたような毛と、真っ白な毛。その二種類が混ざったちょっと変わった毛並みだ。
兎と言っても、毛の長い品種と普段目にする兎の中間くらいの長さで、垂れ耳が非常に可愛い。
「ふぅ。これで綺麗になったわ」
「短時間で乾かせるこのやり方……いいですね!」
「そうね。わたしたちもこれで髪を乾かしたいわ。ね、空」
「空さん、ぜひお願いしますっ」
「え? うん、まぁいいけど」
確かに二人の長い髪は乾かすのが大変だろう。俺はまぁ放っておいてもすぐ乾くけどさ。
毛玉がもっふもふになった頃、ようやくギルドのお姉さんがやって来た。
「お、おわり……ました……」
彼女はどうやら疲れ切っているように見えた。
査定の結果、5100ルブになった!
51万か、すげーな。
ここから三人分の冒険者登録試験料300ルブを支払う。残ったのは4800ルブ。
「試験は明日行います。今日はもう遅いので、書類の手続きだけ済ませましょう」
「分かりました」
ふ。この二カ月の間に、異世界文字を習得したんだぜ!
日本語のようにカタカナ、漢字というようなものがなく、要はひらがなだけで文字を書くようなものだ。
だがそもそも文字を書く機会が少ない。
商売をしている人なら、売り物の名前や値段を書いたりするが、その程度とも言える。
さくっと書き終わった二人を横目に、登録用書類と悪戦苦闘。
書くのは今現在のステータスだ。
「職業を既にお持ちですね、ではそれも……空気師?」
受付のお姉さんが首を傾げる。
空気師なんて職業は、やっぱり見たことがないという。
「そ、空の両親は他の大陸から渡って来た人なんだそうでっ」
「大森林に到着したときに、その……そ、そうです! 空さんはまだその時お母さまのお腹の中で──」
「そ、そう! 出産のためにエルフの里に留まっていたんだけど、産んだら子供を置いてどっかいっちゃって」
俺、ものすごく酷い親に捨てられた赤ちゃんになっちまったぞ。
それを聞いて受付嬢のお姉さんが目に涙を蓄える。
同情されてる。めちゃくちゃ同情されてるじゃん!
「頑張ってください、空さん。うっうっ。試験は実技テスト、あと簡単な依頼を受けて頂く形になっています」
「依頼、ですか?」
「はい。お使いですので、そう難しくはありません。それらを全て終えた後、審査期間を頂きます」
審査期間はだいたい十日前後。
十日!?
その間、ずっとこの町に滞在しなきゃならないのか……。
苗木、買えるかぁ?
『ぎゅうぅぅぅぅ』
ギルドの裏手にある井戸の横で、桶に水を汲み毛玉にざぱぁー。
そして石鹸で少し撫で泡立てようとしたんだが。
「泡が出ないな?」
「汚れが激しいからじゃない?」
「そうですね。汚れが激しいほど、泡が立ちませんから」
なるほど。その話は聞いたことがあるな。
一度軽く洗って、石鹸を水で洗い流し、再び撫でる。
うん。まだ泡立たない。
三回目でようやく泡立つようになると、今度こそぶくぶくのもこもこになった。
『む、むぎゅぅぅぅ』
「毛玉ご臨終。さて、どうやって乾かしてやるかな。ドライヤーはないし……いや、似たものなら作れる!」
要は温かい風を送れればいいんだ。
リシェルの風の精霊に手伝って貰おう。
「"空気操作"──で範囲内の空気を温めるっと。リシェル、ここから毛玉に向かって風を送ってくれるよう、精霊に頼んでくれないか?」
「風ですか?」
「あぁ。毛玉を少しでも早く乾かすためにな」
空気の温度は50度ぐらいでいいかな?
あんま高くし過ぎると熱風どころじゃなくなるし。
「贅沢を言えばブラシが欲しいよなぁ」
「わたしの使う?」
「いや、でも毛玉の毛がつくだろ?」
「新しいの買ってよ」
と、シェリルはにこやかに言う。
つまりそういうことか!
ブラシで毛を梳いてやりながら、リシェルが風を送る。
『きゅっ!』
突然毛玉が暴れだす。
くっ。せっかく綺麗にしてやったんんだ、ここで汚れさせてなる者か!
「大人しくしろっ。大人しくしないと、いつまで経っても終わらないぞっ」
『ぎゅっぎゅっ』
精霊がいるだろう方向に腹を見せるよう抱っこするが、後ろ脚をげしげししやがって痛い!
「痛かったんでしょ。貸して」
「え、あ、うん……」
シェリルに交代すると、毛玉の野郎は急におとなしくなる。
そしてお目目うっとり。
そうするうちにあれよあれよともっふもふになった毛玉は、それまで薄いブラウンだと思った毛色がまったくの別物だったと知る。
白──にほんのりコバルトブルーを混ぜたような毛と、真っ白な毛。その二種類が混ざったちょっと変わった毛並みだ。
兎と言っても、毛の長い品種と普段目にする兎の中間くらいの長さで、垂れ耳が非常に可愛い。
「ふぅ。これで綺麗になったわ」
「短時間で乾かせるこのやり方……いいですね!」
「そうね。わたしたちもこれで髪を乾かしたいわ。ね、空」
「空さん、ぜひお願いしますっ」
「え? うん、まぁいいけど」
確かに二人の長い髪は乾かすのが大変だろう。俺はまぁ放っておいてもすぐ乾くけどさ。
毛玉がもっふもふになった頃、ようやくギルドのお姉さんがやって来た。
「お、おわり……ました……」
彼女はどうやら疲れ切っているように見えた。
査定の結果、5100ルブになった!
51万か、すげーな。
ここから三人分の冒険者登録試験料300ルブを支払う。残ったのは4800ルブ。
「試験は明日行います。今日はもう遅いので、書類の手続きだけ済ませましょう」
「分かりました」
ふ。この二カ月の間に、異世界文字を習得したんだぜ!
日本語のようにカタカナ、漢字というようなものがなく、要はひらがなだけで文字を書くようなものだ。
だがそもそも文字を書く機会が少ない。
商売をしている人なら、売り物の名前や値段を書いたりするが、その程度とも言える。
さくっと書き終わった二人を横目に、登録用書類と悪戦苦闘。
書くのは今現在のステータスだ。
「職業を既にお持ちですね、ではそれも……空気師?」
受付のお姉さんが首を傾げる。
空気師なんて職業は、やっぱり見たことがないという。
「そ、空の両親は他の大陸から渡って来た人なんだそうでっ」
「大森林に到着したときに、その……そ、そうです! 空さんはまだその時お母さまのお腹の中で──」
「そ、そう! 出産のためにエルフの里に留まっていたんだけど、産んだら子供を置いてどっかいっちゃって」
俺、ものすごく酷い親に捨てられた赤ちゃんになっちまったぞ。
それを聞いて受付嬢のお姉さんが目に涙を蓄える。
同情されてる。めちゃくちゃ同情されてるじゃん!
「頑張ってください、空さん。うっうっ。試験は実技テスト、あと簡単な依頼を受けて頂く形になっています」
「依頼、ですか?」
「はい。お使いですので、そう難しくはありません。それらを全て終えた後、審査期間を頂きます」
審査期間はだいたい十日前後。
十日!?
その間、ずっとこの町に滞在しなきゃならないのか……。
苗木、買えるかぁ?
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