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5話 アルゼイ・サンマルト
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「姉さん、見て見て! このお肉、美味しいわよ!」
「シリカ、もう少し落ち着きなさいよ」
シリカはパーティー用に用意されたバイキング形式の料理を手当り次第に持ってきている。この姿だけを見ていると、とても貴族令嬢には見えない。
「いいじゃない、姉さん。せっかくのパーティーなのだし……この後、アルゼイ様とお会いするのよ? それまでははしゃいでいても、問題ないでしょ」
「まあ、確かにそうかもしれないけれど……もう少し公爵令嬢としての自覚を持ちなさい」
この子が隣国との橋渡しとして期待されている妹、シリカ・ガーランドである。その人懐っこい性格が気に入られたのは確かだけれど。これからお会いするのは、アルゼイ第一王子殿下なのだから。すぐに切り替えられるか心配だった。
「姉さんは相変わらず堅いわね」
「悪かったわね……」
「フリック王子殿下とは今は関係ないんだから、もっと気楽にパーティーを楽しんだら良いのに」
「そんなこと言ったって……メフィス侯爵やカンバス伯爵がこちらを見ているわ。あまり、気楽になんて出来ないわよ」
おそらくは元気に動き回るシリカが目立っているのだろうけど……ちょっとだけ恥ずかしいかも。
「わ~お、流石は姉さん。よく、貴族の方々の名前を即答できるわね」
「これでも、フリック様の後ろで全力サポートしていたからね……今、思い出すだけでも緊張で吐きそうになるわ……」
なにせ、フリック第三王子殿下の面目を潰すわけにはいかないから……私は婚約者として彼を立てつつ、フリック様が恥をかかないように先手先手でサポートするのに必死だったわけで。
「流石でございます、エリザお嬢様。詳細をお伺いしたことはありませんでしたが、こういったパーティーの前日は徹夜で参加者たちを確認し、どういった順番で王子殿下が挨拶をするのが良いか……全てチェックしていたのでありませんか?」
「マイケル……あなたは凄いわ。私のことを分かってくれるのは、あなただけかも……」
私のことをここまで理解してくれているなんて……もう、マイケルと結婚したい! そんな気持ちが浮かんでしまった。もちろん冗談だけどね、とりあえず言ってみることにする。
「私と結婚しましょう、マイケル」
「お気持ちは嬉しいのですが、お嬢様。私にはお嬢様と同じ歳の娘が居ますので……」
「そういえば、そうだったわね」
私とマイケルの年齢は丁度2倍離れている。マイケルは18歳の時に結婚したらしく、娘さんが私と同じ歳なのだ。
「エリザ姉さんの冗談って偶に分からない時があるわ……」
「でも、面白かったでしょう?」
「えっ? ええと……うん、そうかな……マイケルさんは?」
「わ、私に振りますか? シリカお嬢様……! お、面白かったですよ、はい……!」
「もういいわよ……」
明らかに二人とも顔が引きつっている。態度がもう完全に面白くないと言っていた。自分ではそれなりに楽しい冗談だと思ったのに……二人には通用しなかったようね。
「何やら楽しそうな会話が聞こえてきたが……待たせてしまったかな?」
と、そんな冗談で盛り上がっていた頃、私達の前に複数人の人影が近づいて来た。確認するまでもなく、アルゼイ王子殿下とその護衛達であると認識できた。私はすぐに彼の方向に視線を合わせた。
「アルゼイ・サンマルト第一王子殿下、ご無沙汰しております」
「うむ、久しぶりだな。エリザ・ガーランド公爵令嬢。そちらは確か……」
「はい、アルゼイ様。お会い出来て光栄でございます。エリザ・ガーランドの妹のシリカと申します。よろしくお願いいたします」
さっきまではしゃいでいたシリカだったけれど、アルゼイ様が近くに来ると態度を一変させていた。公爵令嬢として恥ずかしくないお辞儀を披露する。いきなりのアルゼイ様の登場で、内心はドキドキしているけれど、なんとか冷静に振舞うことが出来ているわね。
アルゼイ様に不快な思いをさせるわけにはいかない……私はある意味で、フリック様のサポートに徹していたとき以上に緊張していた。
「そんなに緊張する必要はないぞ? エリザ嬢。もっとリラックスしていてくれ。あなたはそちらの方が魅力的に映るからな」
「アルゼイ様……?」
いきなりアルゼイ様にリラックスするように念を押されてしまった……しかも、魅力的という言葉を添えられて。私の身体の力は自然と抜けきってしまう。いやでも……魅力的って? 私はその言葉の意味が理解出来ていなかった。
もしかしてアルゼイ様は私の緊張を解してくれたのかしら? 一目で分かる程に緊張しているように見えたのかもしれない。
「シリカ、もう少し落ち着きなさいよ」
シリカはパーティー用に用意されたバイキング形式の料理を手当り次第に持ってきている。この姿だけを見ていると、とても貴族令嬢には見えない。
「いいじゃない、姉さん。せっかくのパーティーなのだし……この後、アルゼイ様とお会いするのよ? それまでははしゃいでいても、問題ないでしょ」
「まあ、確かにそうかもしれないけれど……もう少し公爵令嬢としての自覚を持ちなさい」
この子が隣国との橋渡しとして期待されている妹、シリカ・ガーランドである。その人懐っこい性格が気に入られたのは確かだけれど。これからお会いするのは、アルゼイ第一王子殿下なのだから。すぐに切り替えられるか心配だった。
「姉さんは相変わらず堅いわね」
「悪かったわね……」
「フリック王子殿下とは今は関係ないんだから、もっと気楽にパーティーを楽しんだら良いのに」
「そんなこと言ったって……メフィス侯爵やカンバス伯爵がこちらを見ているわ。あまり、気楽になんて出来ないわよ」
おそらくは元気に動き回るシリカが目立っているのだろうけど……ちょっとだけ恥ずかしいかも。
「わ~お、流石は姉さん。よく、貴族の方々の名前を即答できるわね」
「これでも、フリック様の後ろで全力サポートしていたからね……今、思い出すだけでも緊張で吐きそうになるわ……」
なにせ、フリック第三王子殿下の面目を潰すわけにはいかないから……私は婚約者として彼を立てつつ、フリック様が恥をかかないように先手先手でサポートするのに必死だったわけで。
「流石でございます、エリザお嬢様。詳細をお伺いしたことはありませんでしたが、こういったパーティーの前日は徹夜で参加者たちを確認し、どういった順番で王子殿下が挨拶をするのが良いか……全てチェックしていたのでありませんか?」
「マイケル……あなたは凄いわ。私のことを分かってくれるのは、あなただけかも……」
私のことをここまで理解してくれているなんて……もう、マイケルと結婚したい! そんな気持ちが浮かんでしまった。もちろん冗談だけどね、とりあえず言ってみることにする。
「私と結婚しましょう、マイケル」
「お気持ちは嬉しいのですが、お嬢様。私にはお嬢様と同じ歳の娘が居ますので……」
「そういえば、そうだったわね」
私とマイケルの年齢は丁度2倍離れている。マイケルは18歳の時に結婚したらしく、娘さんが私と同じ歳なのだ。
「エリザ姉さんの冗談って偶に分からない時があるわ……」
「でも、面白かったでしょう?」
「えっ? ええと……うん、そうかな……マイケルさんは?」
「わ、私に振りますか? シリカお嬢様……! お、面白かったですよ、はい……!」
「もういいわよ……」
明らかに二人とも顔が引きつっている。態度がもう完全に面白くないと言っていた。自分ではそれなりに楽しい冗談だと思ったのに……二人には通用しなかったようね。
「何やら楽しそうな会話が聞こえてきたが……待たせてしまったかな?」
と、そんな冗談で盛り上がっていた頃、私達の前に複数人の人影が近づいて来た。確認するまでもなく、アルゼイ王子殿下とその護衛達であると認識できた。私はすぐに彼の方向に視線を合わせた。
「アルゼイ・サンマルト第一王子殿下、ご無沙汰しております」
「うむ、久しぶりだな。エリザ・ガーランド公爵令嬢。そちらは確か……」
「はい、アルゼイ様。お会い出来て光栄でございます。エリザ・ガーランドの妹のシリカと申します。よろしくお願いいたします」
さっきまではしゃいでいたシリカだったけれど、アルゼイ様が近くに来ると態度を一変させていた。公爵令嬢として恥ずかしくないお辞儀を披露する。いきなりのアルゼイ様の登場で、内心はドキドキしているけれど、なんとか冷静に振舞うことが出来ているわね。
アルゼイ様に不快な思いをさせるわけにはいかない……私はある意味で、フリック様のサポートに徹していたとき以上に緊張していた。
「そんなに緊張する必要はないぞ? エリザ嬢。もっとリラックスしていてくれ。あなたはそちらの方が魅力的に映るからな」
「アルゼイ様……?」
いきなりアルゼイ様にリラックスするように念を押されてしまった……しかも、魅力的という言葉を添えられて。私の身体の力は自然と抜けきってしまう。いやでも……魅力的って? 私はその言葉の意味が理解出来ていなかった。
もしかしてアルゼイ様は私の緊張を解してくれたのかしら? 一目で分かる程に緊張しているように見えたのかもしれない。
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