異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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教会さんいらっしゃぁ~い!

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「神聖女チハル様、聖女の皆さま、お待たせ致しました。」
 扉の向こうから聞こえた丁寧な呼び声に、千春たちは一斉に立ち上がった。聖女のローブが揺れ、静かな緊張感が部屋に満ちる。

「さぁ~いきましょ~♪」
 千春が明るく言い、皆はそれぞれ頷いて扉へと向かった。
 執事の案内で王宮の回廊を歩く一行。窓の外からは柔らかな光が差し込み、静かな足音だけが長い廊下に響く。

「なんか、ちょっと緊張するよね。」
 小声で呟いたのは日葵だった。

「うん・・・ジブラロールとも雰囲気が違うよね、厳かな感じ?」
 美桜が頷き、千春はふふっと笑った、やがて、執事が足を止めて言った。

「こちらでございます」
 重厚な扉が開かれると、そこには天井の高い、瀟洒な応接間が広がっていた。深い青の絨毯に、白金で縁取られたソファと調度品が並ぶ。その中央に立つのは・・・

 一人の白髪の老人、ゆったりとしたローブ姿で、背筋は伸びていた。
 傍には、厳格そうな中年の男と、若々しく聡明そうな青年、そして気品を纏った年配の女性がいた。四人とも同じような教会のローブをまとっている。

 執事が一歩下がって頭を下げた。

「こちら、教会よりお越しの方々です。左より順に、枢機卿バルナバ様、司祭ユリオス様、助祭セラド様、そして大司教メリシア様でございます。」
 千春が静かに一歩進み、両手を胸の前で組み、教会の礼を行う。

「神の御光に感謝を、ご挨拶申し上げます。神聖女チハルです。」
 その礼に、バルナバが深く頭を下げた。

「神聖女チハル様・・・お目にかかれて、光栄でございます。」
 枢機卿の落ち着いた声が響く。
 続けて、ユリオス、セラド、メリシアも一礼する。

「神聖女様。」
「ようこそお戻りくださいました。」
「・・・お会いできて、まことに。」
 千春たちは微笑み、ふわりと頭を下げる。

「こんにちは、よろしくお願いします」
「どうぞ、よろしくお願いします」
 日本式の挨拶に、一瞬ぽかんとした様子を見せたが、枢機卿は穏やかに笑った。

「どうぞ、皆さまお掛けください」
 皆が広いソファに座ると、教会の四人も対面のソファに腰を下ろした。

「改めて、神聖女チハル様。お戻りいただけたことを、我々教会は深く喜んでおります。長い間、伝承としてのみ語られていた神女ウィステル様のご存在、それが、今・・・。」
 バルナバは言葉を選ぶように、ゆっくりと語り始める。

「その方の記憶が、チハル様に継がれたと・・・そう伺っております」
 千春は真っ直ぐに彼を見つめ、静かに頷いた。

「はい。私は・・・間違いなく、ウィステルの記憶を受け継いでいます」
「ウィステル様は、我らが教会の礎を築いた存在であり、神の声を直接聞いた唯一の人間。その方の意思を継ぐ存在が現れたこと・・・これは、神意そのものと受け止めております」
 ユリオスとセラドもそれぞれ神妙に頷いたが、その時、メリシアが静かに口を開いた。

「・・・けれども、失礼ながら、神聖女様、私どもが知る限り、“神より直接啓示を受ける聖女”は、歴史上ただ一人、以降は代々の聖女たちが、その信仰を継いでまいりました」
 その言葉には、疑念というよりも慎重さがあった。

「あなた様が本当に“その御方の記憶”を継いでいるというのなら・・・証を頂いても、よろしいでしょうか?」
 千春は一瞬だけ表情を引き締め、優しく言った。

「・・・分かりました。では、こう言えば……ご納得いただけますか?」
 千春は目を閉じ、静かに祈るように手を組むと、低く、澄んだ声で一節を唱えた。

「そは偽りの証なり、我、神の名を戴かずとも、神の御手にて語られし契約、汝らが滅びの時、我、矛を振るわん。」
 室内の空気が静まり返った。
 メリシアが、思わず手元にある書簡を強く握る。

「・・・いま、あなた様が唱えたのは?」
 彼女の声がわずかに震えた。

「『祈りの逆位章』です」
 バルナバが静かに言った。

「それも、通常とは“逆順に並べられた”、失われし契約の文。・・・女神と最初の聖女ウィステル様が交わした、あの……」

「“神聖女のみが教会を裁断しうる”という、密約・・・!」
 ユリオスが目を見開く。
 千春はゆっくりと頷いた。

「はい。ウィステルは、教会がもしも“信仰の名の下に人を縛る存在”になってしまったら、神聖女の手で再構築できるように、密かに“鍵”を残しました。それが、逆位章に込められたもう一つの意味です。」

「枢機卿様、これは・・・」
 メリシアが言葉を失ったようにバルナバに視線を向ける。

「私ですら、かつて古い写本の断片で一節だけ目にした程度・・・全文を正確に唱えられる者など、神聖女様以外にあり得ません」
 沈黙が数秒続いた後、バルナバが立ち上がり、深々と頭を下げた。

「・・・神聖女チハル様、我ら教会は、貴女に対し、全面の信頼と敬意を捧げることを、ここに誓います」
 続いて、ユリオスとセラドも立ち上がり、礼を取った。
 メリシアは目を伏せたまま、言葉を探すようにしながら、静かに立ち上がった。

「・・・疑って、申し訳ありませんでした。ですが・・・の言葉が示す“契約の意味”を、私たちは、受け止めねばなりません」

「うん、大丈夫ですよ。むしろ、きちんと確認してくれて、ありがとう」
 千春は両手を膝に揃えた。教会と神聖女との関係が築けそうだと微笑んだ。


-------------------------------------


 ドォーーーン!!!

 轟音とともに立ち上る黒煙が、ストーノク王都の西端から天を突くように昇る。その様子を、街の一角にある大きな屋敷のベランダから、二人の少女が静かに見下ろしていた。

 ユーリンとシャルル、背後には、今しがた命を拾ったばかりの男、この屋敷の主であり、王都犯罪ギルドの実質的なボスが、縛られたまま、おびえた表情で立ちすくんでいた。

「・・・随分、派手にやってるわねぇ、あれ、たしかバンカが向かったアジトだったかな?」
 ユーリンが口元に指を当て、楽しそうに笑う。

「・・・もうちょっと静かに済ませると思ってたけど、デミオーガは力加減を知らないのよね。」
 シャルルは呆れたように小さくため息を吐きつつ、眼下の街を見渡した。

 この屋敷にたどり着くまでの道のりは、想像よりもずっと短かった、ストーノク王都に潜む犯罪ギルドの情報は、デミオーガの面々が街の酒場をいくつか回るだけで、簡単に手に入った、酒場で飲んでいたバンカに、ギルドの手先が声をかけたのがすべての始まりだった。

 バンカが一度だけ頷き、グラスを置くと、カネン、テロモ、ルフアと共に店を出る、その後、ギルドのアジトへとまっすぐ向かった彼らは、戦闘の痕跡すらほとんど残さず、そこを制圧した。

 捕えたギルド幹部に対して、クラータ姫とロイロが優しく・・・それはもう、とても優しく・・・問いかけたのだ。

「ねぇ? ボスの名前と、屋敷の場所を教えてくれないかしら♪」
 すでに白目を剥いて気絶していた幹部は役に立たなかったが、残された部下たちはすぐに口を割った、そして判明した、王都に点在するすべてのアジト、その情報を元に、仲間たちは手分けして順に潰していった、まるで何かの作業のように、淡々と、徹底的に。

 そして今、ユーリンとシャルルは、この屋敷の主と対峙していた。

「思ったより簡単にカタがついたわね。」
 ユーリンが無邪気に呟く。

「・・・これからが大変なんじゃない。荒くれ者たちをまとめるんでしょ?」
 シャルルが肩をすくめながら、ベランダの手すりにもたれた、その言葉に、屋敷の主、恰幅の良い中年の男サツェは、ようやく声を絞り出す。

「・・・お、お前たちは何者だ?」
 震える声で問われ、ユーリンはくすりと笑った。

「他の国から来た、犯罪ギルド集団♪」
「ちょっと、私は違うわよ? ただの護衛だから」
 シャルルが不満そうに呟く。

「お前たちは・・・まさか、俺たちを・・・国へ、差し出すつもりか・・・?」
 恐怖と諦めの色を帯びた目で問いかけてきたサツェに、今度はユーリンが首を傾げながら逆に問い返した。

「ねぇ、この国では、犯罪ギルドの断罪って、どんな風にやるの? たとえば、こう・・・公開処刑とか、人体を市場に吊るすとか?」
 ぞっとするような冗談めいた言い回しに、男は顔を青ざめさせた、だが・・・ユーリンの瞳は、ふと本物の冷たさを宿す。

「・・・まぁ、今さらそんなの関係ないけどね、この街で、これ以上、子供が泣かないようにするのが私たちの目的なんだから」
 その時、シャルルのポケットに仕込まれた魔導通信が軽く振動した。シャルルは短く応答する。

「はい、こちらシャルル。ええ・・・了解。そっちも片付いたのね」
 通信を切ると、彼女はユーリンに向かって小さく頷いた。

「これで全部のアジトが潰れたわ、残ってた連中も、デミオーガがまとめて確保したって」
「やっぱり、こういう時はデミオーガは頼りになるわね♪」
 ユーリンは小さく笑い、ベランダから身を引いた、そして、怯えるギルドボスの前に立ち、優しく、しかし逃れられない圧をこめて告げた。

「さぁて・・・これから、あなたの“処遇”を決めるわよ?」







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