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ガルド城の秘密
第89話-ユリの戦い-
しおりを挟む今の目的はバレルさんを信じて時間を稼ぐ事だ。
作戦通りバレルさんが帰って来れば2対1で有利立てる。逆にバレルさんが帰って来なかった場合……正直考えたくもない。
だからこちらからの攻撃は極力しない。倒すなら相手の攻撃に合わせて反撃。それまでは会話で持たせる。
「初日に私が見たのはあなただったんですね。こそこそと何をしてたんでしょうかね」
「お前のような小娘に見つかる様な事はしない! お前の見違いだろう」
同時に飛んでくる2本の短刀。さっきはあの軌道を変える糸にしてやられた。ただ今回は仕組みが分かっている。それなら手の打ちようはある。
軌道が変わる前の短刀を避けた。そのまま相手が手を動かす前に柄部分から伸びる糸目掛けて手元の短刀を上から下に振る。
刃が糸に掛かる。だが、糸は切れる事はなかった。振り下ろした刃と一緒に付いてくる。
フランソワ様から借りたこの短刀の切れ味は見た目から分かる。上等な物で決して鈍なんかじゃない。それでも切れないのであれば、単純に糸の性能が予想以上に強かった。
「剣で剣が切れないのと同じ理由だ。切れるはずがなかろう!」
片方の短刀は糸と共に止めた。だが逆方向の短刀を操る手が動く。
予定では片方を切断した後に反対側も切断する予定だった。だが、それが破綻した。
だから私は止めた短刀に繋いでいる糸を足で踏んで、逆側から飛んでくる短刀に向かって刃を振り上げた。
刃同士が擦れて高い金属音が響く。
弾いた短刀はまた相手の手元へと引き寄せられる様に戻っていく。
飛んでいるのを操るのは手だが、戻っていく時は手を動かしていない。あのローブの袖部分に何か糸を巻き取る仕組みでも隠しているのかもしれない。そして、今足元にあるこの糸、ただの糸じゃない。細い金属で出来た厄介な糸だ。
「その技術力を正しいことに活かせばいいのに。何故そうしないんですか!」
「『魔法』を見つけるために使う、そして『魔法』への道を邪魔する輩に使う。これが正しいことだろう」
その言葉に私の中で何かが切れた。
あぁ、そうか。骨の髄までこの考え方なんだ。『魔法』のためと言うのが免罪符に、それが魔法信者の信念でもあるのだろう。
考え方が違うことを否定するつもりはない。誰にでも違う考え方はある。私だって女性でありながら騎士になろうとしている。
でも、それで明確に他の誰かに害が及んだり、傷つけるのは間違っている。何より目の前の男は私たちに攻撃の意思がある。それを黙って受け入れる事は出来ない。
だから私はそんな時が来た時のために覚悟を決めているつもりだ。
「フランソワ様。すみません。岩陰にそのまま隠れて顔を出さないようにお願いします。戦いが終わってもそのままで。私を見ないでください」
バレルさんすみません。舌の根も乾かぬうちに私は……今の目的を時間稼ぎから変えてしまいます。
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