悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

文字の大きさ
140 / 435
ガルド城の秘密

第111話-ガルド城最後の夜-

しおりを挟む
「わー!! ユリ綺麗~!!」

 私とユリは今夜開かれるパーティーの会場の裏側にいた。
 親にはパーティーの手伝いを依頼されてると言ってこの場に抜け出している。

「そんな。フランソワ様程ではありませんよ」
「謙遜しなくていいのよ。本当に綺麗なんだから」

 ユリはガルド公が用意したドレスを身に纏っていた。理由は昼頃の戦いで腕を切って出来た傷が、持って来ていたドレスでは見えてしまうからだ。
 騒ぎの終わりからこの短時間でユリにピッタリのドレスを用意できるガルド公のネットワークには感服しかない。

「髪を束ねているユリも良いけど、私はやっぱり今の下ろしてる方が好きね」
「ありがとうございます」

 ドレスの豪華さとユリ本来の気品が混じり合って女神のようにも見えるユリを私は褒めることしかできなかった。

「おう。2人とも元気そうだな」

 遅れてやって来たのはバレルさんだ。
 声は変わらずに元気だけど、車椅子に押されてやって来ていた。

「大丈夫ですか!?」
「一応運ばれちゃいるが大丈夫大丈夫」

 元気だと言わんばかりに腕に力を込めて力こぶでアピールしてくる。

「あまり暴れないで下さい。怪我人……ですので」
「お、おう。悪い悪い」

 車椅子を押してくれているチェルさんに念を押されていた。
 ともかく無事であればよかった。

「話は聞いたぜ。石板のことな。まぁ成果があったならよかったじゃねぇか」
「はい。バレルさんのおかげです」
「照れるじゃねぇか。まぁ良かったな。お互い命があってよ。しかし、あのホースが魔法信者とは思いもしなかったな」
「そうなんですよ! もう驚きでしかないですよね」

 ユリとバレルさん、3人で話が盛り上がっているとガルド公も部屋に入ってきた。
 それはもう少しでパーティーが始まると言う合図にもなる。

「そしたら俺は戻るわ。またあんたらが下りて来たらジュースで乾杯だ」
「えっ。行っちゃうんですか?」
「俺は下で適当につまみながら2人が褒められるとこ見とくさ。どんな褒美があるから楽しみだろ」
「バレルさんも一緒ですよ!」
「そうです。あなたが居なければ私たちはどうなっていたか分からないんですから」

 ユリと2人でバレルさんを呼び止める。その言葉にバレルさんはさっきまでとは違って険しい表情になる。

「最初に同行させてもらう時言ったはずだぜ。『一切の分け前を要求しない』とな」
「でも!」
「約束は約束だ。商人が約束破るのはダメだろ」

 頑なに拒むバレルさん。怪我をしてまで私達を助けてくれた人が何もないのはおかしい。扉を見つけて開けたのも、危機を察知して助けてくれたのもバレルさんだ。

「もう良いじゃろバレル」
「ん?」
「約束を破らんのは立派じゃ、だけど、相手の心遣いを無下にするのは人間として最低じゃ。だから受け取っておけ。商人の約束も時と場合によっては変えねばならぬ時もある。それにお主がこのまま出て行っては2人が気持ちよく褒美を受け取らん」
「でも良いのか? 俺は魔法信者だった過去もあるんだが」
「それが今のお主に何か関係あるか?」
「はぁ。バレル公には逆らえねぇや。分かった。ありがたく頂戴するさ」
「そうこなくっちゃ!」

 ユリと2人でバレルさんに駆け寄って両腕にしがみついた。
 「傷が痛むから離れろ」と言いながらも笑うバレルさんを気にすることない様子にチェルさんも少し笑っていた。
 そしてそんな私達を尻目にバレル公が仕切りの幕を挙げて初日に姿を現した舞台へと踏み出した。
 それが最終日のパーティー開始の合図だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

処理中です...