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ガルド城の秘密
第110話-黒幕は……-後編
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私がガルド公に仰いだ協力。それはガルド公にホースさんへ香水の商談を持ちかけることだった。
ただ普通にじゃない。今回押収した火の付く剣に入っていた液体を少し水に溶かしたものを小瓶に入れてそれをサンプルとして確認してもらうのが目的だった。
私はそれを部屋で隠れて見ていた。
するとホースさんはガルド公の見せた香水を嗅いで見せた時に「間違いなく自分の売っている商品だ」と言い切った。
中身が元々入っていた物と違うことはもちろん言っていない。それにこの人の扱うものは希少なものと言っていた覚えもある。
そこからこの人が関わっているのではないかという推理が正解に近いものだと思って隠れていた場所から飛び出した。
「私が出てきて貴方は随分焦っていたようですが?」
「いきなり出てきたら驚くに決まってますよ」
至極真っ当な言葉だ。だけど、それなら一瞬の驚きのはずだ。でも今でもさっきまでとは違う態度なのが焦っている証拠だ。
「違いますよね。私がここにいる事が驚きなんでしょう?」
「どういうことですか?」
「貴方は自分の仲間に私達の後を追わせた。なのに、その本人が無事でここにいる。それがあなたの焦りの正体ですよね」
「意味が分からない!」
「認めようと認めまいといいんですよ。ちなみにその香水は中身が違いますよ。私達の元に来た男からの押収品の一部です。それがあなたの商品と同じなのは偶然にしては出来過ぎでは?」
「そんなこともあるでしょう!」
「希少な商品しか扱わないあなたの物ですよ。まぁそれは偶然であるとしましょう。では私は部屋を出ています。ガルド公、この人の身体を調べて見てくれませんか」
「うむ。魔法信者の印を探せば良いのかな」
「はい」
ホースさんが私達と距離を取る。
「そんなものはない! あるはずないでしょう!」
「なら大人しく確認させてください。それで私が間違っていたら謝ります」
そこからの反論はなかった。
そしてホースさんは両手を上げた
「そうだよ。俺があいつらをあんた達のとこに行くように言ったんだ」
口調が一変した。
目つきも、椅子に座る態度もさっきと見違えて見える。
「あんたが出て来た時はびっくりしたぜ。殺さないにしても今日明日くらいまでは出て来れないようにする話だったしな」
「えらく怖いこと言ってくれますね」
「そう睨むなよ。こっちはもうお手上げだ。俺は戦えないし、目の前に騎士様がいるんじゃ無理無理」
「お前さんが魔法信者だったとはな。儂も想像しとらんかったわ」
「そりゃな。こっちもバレないようにしてたし。天下のガルド公を騙せたなら満足だ」
悪びれた様子もない。ただこの状況をあるがままに受け入れている。その様子は逆に怖い。
「女の子2人だけに男3人が何してるんもんやら」
「そこにもう1人いました。その人が居なかったらあなたの想像通りだったでしょうね」
「そうか。俺の運が悪かったんだな」
何がおかしいのか分からないけど、笑いながら自嘲する。
「お前の目的はなんだったんじゃ? やはり魔法か?」
「それ以外ないでしょう。商人してるのは本当だけどさ。ガルド公がたまに人を捕まえて宝探しさせるのは昔聞いたからね。その時にガルド公が頼んだやつを監視してたんだ」
「それがたまたま私だったと?」
「あぁ、しかも今年は今までと違って外に出たからな。追いかけさせたらこの様だ」
「私達に詫びる気はある?」
「ない。俺の信念に沿ってやったことだ。だから謝罪はしない」
「そう」
「だけどな。フランソワ=ソボール。あんたの事はすごい奴だと認識しなおした」
「何よそれ」
意味のわからない言葉だった。
この男の言動はどこか読めない。
「運を身につけて、俺の予定を狂わせた。すごいな全く」
「あんたに褒められても全く嬉しくない。それに私がすごいんじゃない。他の2人がすごかっただけ」
「もう良いかの? こやつは本日地下牢で過ごしてもらう。明日は都まで搬送する」
「だろうな」
「待って。1個だけ」
ホースはこっちを向いた。その顔はどこか私に期待してるような顔つきにも見えた。
「どうやって連絡を取ってたの?」
ホースの顔から期待が抜けていった。
視線を下に外して大きくため息をついた。
「そんなことか。期待して損した。鳥だよ、後は仕草だ」
「そう。だから初日に赤毛の人がテラス近くにいたのね」
「そういうこと。隣のテラスに君達が居たのはうっすら覚えてたけど、見つかってたんだ。本当にすごいな。ご褒美に俺の持ってる商材を好きなだけ持っていくといい。今回の件抜きにしても品物は俺が納得した物しか取り扱ってないからな」
「いらないと思うわ」
その言葉を最後にホースはカルロスさんに連れられて部屋を出ていった。
これで本当に魔法信者に関する件に幕が降りた。
ただ普通にじゃない。今回押収した火の付く剣に入っていた液体を少し水に溶かしたものを小瓶に入れてそれをサンプルとして確認してもらうのが目的だった。
私はそれを部屋で隠れて見ていた。
するとホースさんはガルド公の見せた香水を嗅いで見せた時に「間違いなく自分の売っている商品だ」と言い切った。
中身が元々入っていた物と違うことはもちろん言っていない。それにこの人の扱うものは希少なものと言っていた覚えもある。
そこからこの人が関わっているのではないかという推理が正解に近いものだと思って隠れていた場所から飛び出した。
「私が出てきて貴方は随分焦っていたようですが?」
「いきなり出てきたら驚くに決まってますよ」
至極真っ当な言葉だ。だけど、それなら一瞬の驚きのはずだ。でも今でもさっきまでとは違う態度なのが焦っている証拠だ。
「違いますよね。私がここにいる事が驚きなんでしょう?」
「どういうことですか?」
「貴方は自分の仲間に私達の後を追わせた。なのに、その本人が無事でここにいる。それがあなたの焦りの正体ですよね」
「意味が分からない!」
「認めようと認めまいといいんですよ。ちなみにその香水は中身が違いますよ。私達の元に来た男からの押収品の一部です。それがあなたの商品と同じなのは偶然にしては出来過ぎでは?」
「そんなこともあるでしょう!」
「希少な商品しか扱わないあなたの物ですよ。まぁそれは偶然であるとしましょう。では私は部屋を出ています。ガルド公、この人の身体を調べて見てくれませんか」
「うむ。魔法信者の印を探せば良いのかな」
「はい」
ホースさんが私達と距離を取る。
「そんなものはない! あるはずないでしょう!」
「なら大人しく確認させてください。それで私が間違っていたら謝ります」
そこからの反論はなかった。
そしてホースさんは両手を上げた
「そうだよ。俺があいつらをあんた達のとこに行くように言ったんだ」
口調が一変した。
目つきも、椅子に座る態度もさっきと見違えて見える。
「あんたが出て来た時はびっくりしたぜ。殺さないにしても今日明日くらいまでは出て来れないようにする話だったしな」
「えらく怖いこと言ってくれますね」
「そう睨むなよ。こっちはもうお手上げだ。俺は戦えないし、目の前に騎士様がいるんじゃ無理無理」
「お前さんが魔法信者だったとはな。儂も想像しとらんかったわ」
「そりゃな。こっちもバレないようにしてたし。天下のガルド公を騙せたなら満足だ」
悪びれた様子もない。ただこの状況をあるがままに受け入れている。その様子は逆に怖い。
「女の子2人だけに男3人が何してるんもんやら」
「そこにもう1人いました。その人が居なかったらあなたの想像通りだったでしょうね」
「そうか。俺の運が悪かったんだな」
何がおかしいのか分からないけど、笑いながら自嘲する。
「お前の目的はなんだったんじゃ? やはり魔法か?」
「それ以外ないでしょう。商人してるのは本当だけどさ。ガルド公がたまに人を捕まえて宝探しさせるのは昔聞いたからね。その時にガルド公が頼んだやつを監視してたんだ」
「それがたまたま私だったと?」
「あぁ、しかも今年は今までと違って外に出たからな。追いかけさせたらこの様だ」
「私達に詫びる気はある?」
「ない。俺の信念に沿ってやったことだ。だから謝罪はしない」
「そう」
「だけどな。フランソワ=ソボール。あんたの事はすごい奴だと認識しなおした」
「何よそれ」
意味のわからない言葉だった。
この男の言動はどこか読めない。
「運を身につけて、俺の予定を狂わせた。すごいな全く」
「あんたに褒められても全く嬉しくない。それに私がすごいんじゃない。他の2人がすごかっただけ」
「もう良いかの? こやつは本日地下牢で過ごしてもらう。明日は都まで搬送する」
「だろうな」
「待って。1個だけ」
ホースはこっちを向いた。その顔はどこか私に期待してるような顔つきにも見えた。
「どうやって連絡を取ってたの?」
ホースの顔から期待が抜けていった。
視線を下に外して大きくため息をついた。
「そんなことか。期待して損した。鳥だよ、後は仕草だ」
「そう。だから初日に赤毛の人がテラス近くにいたのね」
「そういうこと。隣のテラスに君達が居たのはうっすら覚えてたけど、見つかってたんだ。本当にすごいな。ご褒美に俺の持ってる商材を好きなだけ持っていくといい。今回の件抜きにしても品物は俺が納得した物しか取り扱ってないからな」
「いらないと思うわ」
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これで本当に魔法信者に関する件に幕が降りた。
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