【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

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後宮に入れば3つの離れがあり、それぞれに向かう道の前に老婆が立っている。この光景も毎日だと鬱陶しいな。

「国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます」
「定型な挨拶は良い。今、暇な者は?」
「でしたら紅の姫か藍の姫が宜しいかと。黄の姫は今朝体調が優れないと言っておりましたので、今医者に診て貰っているところで御座います」
「そうか……ならば先にモニカの元に出向こう」
「畏まりました」

そう言って老婆は私の前を歩く。
この婆は後宮を管理する女官であり、私が初めてここを訪れた何年も前からずっといる。まるで妖怪みたいだと小さい頃は思ったものだ。




*****

その離れに近付くと何とも芳しい薔薇の香りが強くなる。中からの返事を待たずに扉を開ければ赤毛の女が迎えてくれる。

(あぁ、やっぱりモニカは側室たちの中で最も色香があるな)

「まぁ陛下、本日もお変わりなく」

ニコッと上品に微笑む姿に全身に溜まっていた苛立ちが一気になくなった。

「お前の顔が見たくなってまた来てしまったよ。退屈な会議などなければすぐに会いに来れたんだがなぁ」
「あらあら、それはお疲れでございましょう。そもそも陛下はこの国にとって唯一無二の高貴なお方、独り占めできるなど思っておりませんわ」

慎ましく微笑みながら私をソファーへと促す。

「今お茶を、庭先で育てていたラベンダーで淹れたものをお出ししますね」
「ああ、そんなことは侍女に任せておけ。モニカ」

私は茶を淹れに行こうとするモニカを抱き寄せた。

(モニカは誰よりもスタイルが良いからな、この豊満な胸元のためにやりたくもないまつりごとをやっているようなものだ)

胸元が大きく開いた薄手の服は彼女の大胆な身体を象徴している。こんなの、どんな男でも目がいってしまうに違いない。

「もぉ、陛下ったらまだ陽が出ていますわよ」
「良いじゃないか、あの女と会った時は気が滅入ってしまうんだよ。お前の身体で癒やしておくれ」
「あの女とは妃殿下のことですか?」
「ああ。……ちっ!本当に可愛げのない女だよあいつは。顔を合わせるだけで気分が悪い」
「そんなこと仰らないで?妃殿下が頑張って下さっているから私たちはこうして愛を育めるのですよ?」

するりとモニカの手が胸元から忍び込んでくる。その指先にピクッと反応すれば、満足そうに笑いながら身体を密着してくる。

(全く、どちらが発情しているのやら)

だが求められるのは気分が良い、特にモニカのような絶世の美女になら尚更。

彼女はこの国の上位官僚の娘だ。
本来ならば政治の道具として正室の座を狙って来そうだがモニカはそこのところを弁えている。大胆な見た目と違いとても頭が良い女なのだ。

「そう言えばランはどこだ?」

彼女に服を脱がされている最中に思い出す。

モニカは3ヶ月前に男児を産んだ。もちろん私の子だ。
いつもはピーピーと泣き声が聞こえていたのに今日は全く聞こえない。

「乳母に連れられ別室におります。今日はとても機嫌が良くて……後でお会いになりますか?」
「そうだな、父の顔を早く覚えさせねば」
「ふふっ、素敵なお父上でランも喜ぶでしょう」

そう話すモニカの表情はさっきとは違い完全に優しい母の顔になる。

「藍の姫の御子様も先月生まれたばかりですし、黄の姫もそろそろ産気づく頃合いでしょう?ランも母は違えど兄弟が増えて幸せですわ」
「ああ。魔力を持たぬお前との子だ、ランも非魔導師としてこの国に尽力してくれるだろう。そうなればいずれ……いや、今はよそう。跡継ぎのことなど今話したところで何の解決も起こらない」

サリファとの間に子はいない。
よって側室である3人のうち誰かの子を王に据えることになる。ほぼ同時期に3人とも子を孕んだ、もう少し子が成長すれば跡目争いが起きてしまうかもな。

「陛下、私もランも陛下のお側にいられればそれで良いのです。どうぞ次期国王の座には、藍か黄の姫の御子様を据えてくださいませ」
「モニカ……お前というやつは何といじらしいんだ!」

ガバッと彼女に覆い被さる。

「陛下、窓が開いておりますわ」
「そんなものはどうでも良い!今すぐお前を愛してやらねば気が済まんのだ!」
「ふふっ、まぁ嬉しい。お手柔らかに」

彼女の白い腕が首に回り、私は無我夢中でその魅惑の身体に食らいついた。

(あぁ愛おしいモニカ、彼女さえいれば私は何もいらない!)
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