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「陛下、お召し物が乱れておいでですよ」

モニカの元を離れれば、老婆は私の格好を見てそう言った。
たっぷり彼女を堪能し肌艶が良くなった。きっと見る者が見れば今し方まで離れで何が行われていたか分かるだろう。まぁ私だけの花園だから関係ないがな。衣服の乱れを直すことなく今度は2つ目の離れへと向かう。

「構わん。さぁ次はアズミの元だ!」
「……承知致しました」

段々と調子が戻って来たぞ!やはり美しい女を抱いた後は気分が晴れやかで気持ちがいい!さぁ次はあの子のところだ。




*****

離れへと近付けば耳触りの良い琴の音が聞こえる。邪魔をしないようゆっくり近付けば、庭先で奏でている女を見つけた。
彼女は私の姿を見つければピタッと手を止め深々と頭を下げる。

「邪魔をしてしまったな、アズミ」
「いえ、お迎えに行けず申し訳ございません。陛下」

そう言って顔をあげればはらりと長い黒髪が頬へとかかり、彼女のスッと通った目が私を見つめた。その清廉な所作と声に胸の奥に昂っていた気持ちが段々と静まっていく。

東洋の国からやって来たアズミは誰よりも控えめで奥ゆかしい。長くて艶やかしい黒髪とうっすらとした化粧がまた彼女の美しさを際立たせている。何より、"キモノ"と呼ばれる民族衣装がまた色気を引き出している。

(アズミといる時が一番心が洗われる……)

ふぅと一息つけば、お茶と茶菓子を持ってアズミが現れた。

「まぁまぁお疲れで御座いますね、甘いものでも食べてお休みになって下さいな」
「すまない。少し……その、サリファや家臣どもがうるさくてなぁ」

いかんいかん、さっきまでモニカの元を訪ねていたと言いそうになった。いくら立場を弁えた彼女でも他の側室の名前は聞きたくないはずだ。

「妃殿下ですか?」
「ああ。魔導師の特殊部隊を作れと何度も……人の話を聞かない女だ」
「妃殿下には何かお考えがお有りでしょう。私には魔力などありませんから、優秀なお方が考える事など分かりかねます」
「優秀ではないさ。アイツは自分の才能を見せつけたいだけの傲慢な女だ。……そんな事はどうでも良い、ほらもっとこっちに寄りなさい」

少し離れた場所に座るアズミに手招きすれば、彼女は頬を少し赤らめ躊躇いがちに隣へ座る。

(この恥じらいがまた何とも男心をくすぐるな)

キモノをはだけさせれば彼女の白く細い足が露わになるが、彼女は恥ずかしそうに裾を直そうとする。

「いけませんっ、陛下。まだ陽が出ております」

そっと裾を直し視線を落とすアズミ。
モニカのように誘ってくる美女もまた唆るが、こうして焦らされるのもまた一興。

「良いではないか、リンを産んでもうひと月経つだろう?そろそろ私を受け入れてもバチは当たらんだろ」
「で、ですが……」

産後すぐはやはり体に障る、だからこうしてひと月も我慢したんだ。それにこうも美味しそうな足を目の前に出されては食わぬが恥ではないか。
彼女の身体を強引に引き寄せ、タタミと言われる床に押し倒す。

「リンはどこにいる?」
「乳母が寝かしつけております。向こうの部屋に」
「なら問題はないだろ。それとも私を拒むのか?」

強めの声でそう言えば、アズミは目を潤ませ小さく首を振る。彼女のこう弱々しい姿が堪らない、征服欲が満たされる思いだ。

(たまらん、たまらんっ……アズミのように美しい女が私に喜んで組み敷かれるとは!)

「そう怖がるな、何度も愛してやったではないか」
「はい……っ陛下の仰せのままに」
「安心しろ、リンは女児だがこの国じゃ女が国王になり国を治めた歴史もある。いずれあの子も私の後継者候補になるだろう」

母であるアズミの杞憂を晴らしてやりたくてそう言えば、彼女は一瞬だけ真面目な顔をしたあと口元をそっと手で隠す。

「良いのです。私もリンもこれ以上の幸せは望みません。どうぞ後継者は、紅の姫君の御子か黄の姫君の御子をお選びください」
「アズミ、お前……」
「私たちには陛下がおりますから」

ふわっと優しく微笑むアズミ。その健気な言葉に私は勢いよく抱き着いた。そうだ、彼女はあの忌々しい女とは違う。正妻の座よりも私自身を愛してくれているのだ!
さっきまで飽きるほどモニカを抱いたというのに、自身は高ぶりすぐにでもアズミを欲する。

「お前は本当に可愛いやつめっ!今日は嫌というほど愛してやるからな!」
「へ、陛下……その、優しくお願いします」

優しく?約束はしてやれん!
私は愛らしい彼女に貪るように口付けた。
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