【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

文字の大きさ
7 / 20

しおりを挟む
サリファに離縁を申し立ててから数日後。
あの日から憂鬱だった日常はより窮屈になった。

私が離縁を申し立てた事は王宮中に知れ渡り、家臣どもや使用人たちはちらちらと私を見てきた。そして大きく変わったのが……

「あ、陛下。後宮ではなくこちらに何用です?」
「おや陛下、本日は後宮に行かれないのですか?」
「あんなにお盛んでしたのに……ふふふっ」

奴らの態度だ。
前まではこそこそと陰口を叩く程度だったのに、今では目に見えて私を軽んじるようになった。当然、まだ離縁は成立してない。私はまだ国王の座を退位してないんだぞ?!
離縁が成立すればサリファは国を出て、後見人となった私が引き続き権力を握る。そうすれば私を馬鹿にしている奴らなど全員牢に入れることも処刑することも容易い。今、媚を売っておくべき相手は間違いなく私なはずなのに。

「くそっ!」

気付けば王宮内に私の居場所はなくなっていた。……いや、元よりなかったのだ。それが離縁をきっかけに明るみに現れただけだった。

「……行かなくては」

私だけの花園に。
あの場所だけが私を肯定し癒してくれる。
モニカからする花の香り、アズミが奏でる琴の音、セリーヌが浴びせてくれるありったけの愛の言葉が疲弊している私には必要だ。

だがあいつのことだ。
恐らく3人には後宮取り壊しの話をもうしているだろう。もしかしたら離縁の話も既に聞いているかも知れん。
責任感の強い彼女たちならきっと私が退位してしまうことに心を痛めているだろう、理由は何であれ彼女たちのために選択したのだから。

「可哀想な女たち……よしよし、今からたっぷり可愛がってやらねばな!」

ああ、なんだか元気が出てきたぞ!!





*****

「ん?」

後宮に入り離れへと向かう道中、いつもは分かれ道のところにいるはずの老婆が今日はやけに手前で私を出迎えた。

「これより先にはお通し出来ません」
「は?」

老婆の顔はいつになく真面目で、私の顔をじっと見つめている。
それにしても通れないとは何事だ?

「後見人の選定に不正がないよう、何人たりとも離れにいる側室様には近付けません」

選定の不正という言葉にピクッと反応してしまう。
後見人の指名は本来であれば子自身が行う。だが、3人ともまだ生まれて数ヶ月。当然言葉など喋れるはずがない。その場合はモニカ、アズミ、セリーヌが形式上、子の代弁者となり指名をするのだ。
この婆……私が彼女たちにとでも思っているのか?

「っ、おい婆!誰に向かって口を聞いている?!まさかまたサリファの差し金じゃないだろうな?!」
「いえ、王妃殿下は関係ありません。この国の決まりで御座います」

この国の決まり?ふざけるなっ!
愛する者に会いに行ってはいけないなどという決まりが存在してなるものか!

「どけっ!邪魔だ!」
「なりませぬ!」

強引に通り抜けようとするが、婆は私の袖を握って離さない。年寄りのくせになんだこの力の強さは!

「お戻りくださいっ!どうか……」
「調子に乗りおって!お前まで私を愚弄する気か!」

ドンと突き飛ばせばよろけた老婆はそのまま地面に倒れ込む。

「なりま……せ、ぬ…」
「はぁ、はぁ、うるさいうるさいっ!お前のような低俗な人間が私に指図するなっ!」

大声で叫べば婆はうずくまったまま唸る。
こんな婆に用はない。さっさと彼女たちの元へ……


「「きゃぁぁあ!女官さまぁっ!」」


突然聞こえた女の悲鳴にビクッと肩が跳ねる。
私は咄嗟に物陰へと身を隠せば、倒れ込んだ婆の元に数人の侍女らしき女たちが寄って行った。

いやいや、何で隠れてしまったんだ。
私は王だ。そしてあの婆は私に反逆したのだから罪に問われるのはあいつの方だ!なのに……

「す、すぐに人を!医官を呼んで!」
「はいぃっ!」
「あぁ……頭から血が、!」

頭から血?
顔を覗かせれば婆の後頭部から血が出ている。

「っ!」

私は逃げ出した。
振り返る事なく急いで宮廷へ戻る。軽く振り払っただけなのに……そ、そうだ!あの婆が勝手によろけて頭を打っただけだ!私は全く悪くない!

「はぁっ、ちくしょうっ!」

飛び込むように自室へと戻りベッドにダイブする。

「くそっ……くそぉ、」

あの状況じゃ、恐らく婆を突き飛ばした犯人探しで後宮には近付けないだろう。ますます彼女たちに会う機会を失ってしまった。

ああ、神は何故私にばかり試練を与えるのだろうか。

「早く、早く時が過ぎれば良いのに」

そしたら今まで通り、私は誰よりも偉くて、美しい花に囲まれて幸せに暮らせるのに……。
しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

王太子妃に興味はないのに

藤田菜
ファンタジー
眉目秀麗で芸術的才能もある第一王子に比べ、内気で冴えない第二王子に嫁いだアイリス。周囲にはその立場を憐れまれ、第一王子妃には冷たく当たられる。しかし誰に何と言われようとも、アイリスには関係ない。アイリスのすべきことはただ一つ、第二王子を支えることだけ。 その結果誰もが羨む王太子妃という立場になろうとも、彼女は何も変わらない。王太子妃に興味はないのだ。アイリスが興味があるものは、ただ一つだけ。

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

契約結婚なら「愛さない」なんて条件は曖昧すぎると思うの

七辻ゆゆ
ファンタジー
だからきちんと、お互い納得する契約をしました。完全別居、3年後に離縁、お金がもらえるのをとても楽しみにしていたのですが、愛人さんがやってきましたよ?

処理中です...