【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

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19 side サリファ

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※ ここからは王妃サリファの視点になります。








器用貧乏、といえば聞こえはいいけど、単に私は世界で一番運がないだけだと思っている。

数多くの魔導師を輩出している最西端の国フェロン。
その国に生まれた私にも当然のように魔力が備わっていた。ただ周りと少し違うのは他よりも扱える力がいくつかあって、持続できる魔力量が人一番多い。ただそれだけだった。

たったそれだけなのに、国内の面倒ごとが次々と舞い込んで来て不眠不休の生活がしばらく続いた。おかげで大好物のショートケーキだって何年も食べれない日が続いた。両親に助けを求めても、鼻高々な彼らは私を心配するどころか『みんなのために頑張るのが貴女の使命』だなんて言い出す始末。

そんな時、ある女性の話が耳に入ってくる。

何でも非魔導師が多い国に嫁ぎ、限られた魔導師しか発動できない結界を張り続け、魔力を行使しすぎて虫の息だという。

単純に興味があった。
自分の命をかけてまで何故そんなに頑張るのか。

それから私は彼女の代わりとしてその国に派遣された。彼女の息子、いや、義理の息子であるギルバート=ルスダンの正妻という名目で。


そしてあの日、私は彼女に出会った。
痩せ細り、弱々しくて儚くて美しい彼女に。
沢山の人間に搾取され続けた彼女は、そっと微笑みながら私に話しかける。

その言葉は………





*****

「もぉーー!!聞いてるの、サリファさまぁ!」
「はいはい、聞いてますよ」

ギルバート=ルスダンが退位してはや10年。
すっかり歳を取った私の前に現れたのは、長く綺麗な黒髪の少女だった。

「でねでね、にいさまったらあたしにかあさまを見習ってしゅくじょらしくしなさいって言うのよぉ!」
「左様でございますか」
「ねぇねぇ、しゅくじょって何ぃー?」
「大声を出さない女性のことですよ」

アズミの血を引いているとは思えない天真爛漫さに苦笑する。しかしそれがリンの良いところ、私は優しくリンの頭を撫でた。

「リン様、」
「いやだ!さまって呼ばないで!」
「そうは参りません。私はただの後見人、貴女はこの国の次期国王になるかも知れない人ですから」
「えぇーリン、王様になりたくないなぁ」

駄々をこねるのは今に始まった事じゃない。
リンは他の兄弟たちに比べて、いささか好奇心が旺盛だった。
私はリンに向かって両手を伸ばせば、目をキラキラさせながら抱きついてくる。昔よりも大きくなった彼女を抱き上げ膝の上にちょこんと乗っけた。

「では、リンは何になりたいのですか?」
「んー……そうだなぁ、かあさまみたいに色んな国に行くのも楽しそう。でもにいさまやルウとはなれたくないし」

むむむと考え込むリンにクスッと笑う。

「でも一番はサリファさまみたいになりたいの!」
「私、ですか?」
「うんっ!ねぇねぇ、サリファさまって子供のとき何になりたかった?」

純粋な瞳が真っ直ぐ私を見つめてくる。

正直な話、今のリンと同じ年の頃にはもう力を使って国政に参加していたし、何なら国を出て戦争にも駆り出されたことがある。
我ながら不憫な子供時代だったからあまり教えてあげたくないんだが。

「ねぇねぇ、教えて?」
「……そうですね。実は、子供のときの記憶ってあまり残ってないんですよ」
「えぇー」
「でも大人になってから一人だけなりたいと思える女性に出会ったことがあります。その人はとても優して、とても弱い人でした」
「弱い?」
「ええ、でも心は誰よりも強い人です」

思い出すのはアイリス=ルスダン前王妃。
息を引き取る寸前の彼女は、最後の力を振り絞り私と話をしてくれたんだ。

「その人は私に言ってくれたんです。『全ての人を幸せにして欲しい。私は守ることしか出来なかったから』って」
「何それ、守ってもらえるのは幸せでしょ?」
「そうですね。でもその逆は違います、幸せは守られる事だけじゃない。共に立ち向かい乗り越えた先にも幸せはあります。彼女はそれをちゃんと分かっていたんですよ」

彼女は一生懸命守っていた。
先王様も、義理の息子も、国民全員も。それでも国が良くならなかったのは彼女一人ではどうしようもなかったと知っていたから。

「良かったですね、リン。あなたには兄弟がいて」
「?」
「一人じゃどうにもならないことも、3人力を合わせればきっと大丈夫」

ぎゅっと抱きしめあげればリンは嬉しそうに笑った。
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