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2nd フェーズ 集
No.23 なり始めたラジオ
しおりを挟むシャーロットの家で彼女は机の上に置いたラジオに目を向けていた。
「ジジジ……ジジ」
ラジオ、この世界ではもう殆ど見る事がない、骨董品屋を巡ればもしかしたらであるかもしれない。彼女はそれを持っていた、幾度となく修理し改良し小型化させていったラジオ。ここまで小さければ衣服のポケットにしまってもその存在はバレないだろう。
「ふぅ、今日もいつも通り」
シャーロットはそう言って作業用の部屋を去ろうとした。
「ザザザーッ……ピーピピ」
すると音がラジオからした。
「ッ!今音が!」
ラジオにかけよるシャーロット。
翌日の朝シャーロットはベットから起き上がる。
彼女の部屋にはつけっぱなしだったテレビの音がかすかに流れていた。
「先日高架下で発見された変死体の事件の犯人は未だ逃走中とのことで……」
彼女は流れているニュースよりも自分の体調に注意がいく。
「うーんなんか、頭いたい……」
頭痛を感じ、彼女は頭をおさえる。
「なんだろう、体だるいなぁ、昨日遅くまで起きてからかな?あれ、そう言えば昨日の夜なにしてたっけ?ダメだ、全然思い出せない」
頭痛も体のだるさもあったが彼女は支度をした。
「とりあえず行くだけ行ってみるか」
いつも通り待ち合わせ場所にはユキチカ、ジーナ、そしてウルルがいた。
「おはよッシャロ」
ユキチカが手を振る。
「やぁ、みんな……おはよ」
「おはよーシャロ、ってどうしたの?顔色悪いよ」
「あー、そうなんだよ、なんか妙に体がだるくて……さ」
シャーロットはその場で倒れそうになる。
「シャロッ!?!大丈夫」
倒れそうなところをユキチカが支える、彼女はかなり辛そうだ。
気付いたらシャーロットは自分の部屋で横になっていた。
「あれ、ここは家……?」
「大丈夫?先生に言って今日は休みにして貰ったからゆっくり休んで」
「ぼく達もかんびょーでおやすみ!」
ベットの隣にはジーナとユキチカがいた。
「キッチンをお借りしました。こちらお粥です、食べられますか?」
おかゆの入ったボウルを持ってウルルも部屋に入って来た。
まずは目を覚ました彼女の隣に座って顔や頭に傷が無いかジーナが調べる。
「倒れる前にユキチカが支えてくれたから怪我はないと思うけど……ん?」
傷があった、思わず見落としてしまう程の小さな小さな傷。
それが二つ、横に並んで彼女の首についていた。
「まるで針にでも刺されたみたい……」
不思議そうにその傷をみるジーナ。
「針?そんな記憶ないけど」
気怠そうに答えるシャーロット。
「シャロちょっとそのままでいてね」
ユキチカはそう言って空港などで金属検査をする際に用いられるような機械を取り出した。その機械は横たわっているシャーロットを照らした。
シャーロットを頭からつま先までまるでスキャナーが対象物をスキャンするように照らしていく。
「これでオッケー、シャロがなんで元気じゃないのか分かるよー」
するとピコンっと彼が持つ端末に通知が、恐らく検査結果が出たのだろう。
「アルコールが検知されたよ、お酒飲んだ?」
検査結果を見たユキチカはそう言う。
ジーナがそれを見て不思議そうな顔をする。
「お酒?」
「アルコールなんてとった覚えないよ。うちにあるのは業務用で、人が到底口に出来るようなものじゃないし」
シャーロットは頭を振って否定した。
「血の量が少ないですね。まるで大怪我を負って出血したみたいに。ですがシャロ様に目だった外傷はありませんでした」
ウルルはシャーロットの首筋に触れる。
「針でさされた傷から察するにそこから血を抜かれたと考えるのが妥当でしょう、つまり注射痕です。アルコールに関しては、血管から摂取すると微量であっても酩酊状態になるという話がありますので、もう一つ注射でアルコールを注入されたのでしょう」
「って事はこの体調不良って」
ジーナがそう言うとウルルが頷く。
「採血による貧血と二日酔いという事になりますね」
ウルルの発言のあと、ユキチカはシャーロットに駆け寄る。
「ねぇシャロ!地下のあれみたい!沢山画面があるやつ、あれで家の周り!」
「ああ、家の周りの監視映像ね。良いよ、私の記憶が飛んでいるのが昨日の夜の部分だからそこら辺をみれば何か分かるかもね」
シャーロットはジーナ達に支えられながら地下の作業場に向かう。
「あれ、これって……」
昨日の夜の映像を中心に見ていくとシャーロットはある人影に気が付いた。
それと同時に、昨日の夜何が起きたのか徐々にその記憶が甦り始める。
映像に映っていたのは黒い上下の服を着た人物。パーカーをすっぽりとかぶり顔は確認できない。
「あ!この人お探しちゅうの人だ!」
昨日ユキチカがみた人物と同じだ。
「そうだ、私……この人を映像でみて、それで何でか外に出たんだ」
その映像を見続けるとシャーロットが何者かにカメラの範囲外に引っ張られていく。
次の瞬間、強い光が。
そしてコロちゃん達に服を引っ張られ、シャーロットがフラフラと部屋に向かって歩いて行く。
「ここでもう血を抜かれて、アルコールを注入されたみたいですね」
「コロちゃんズが守ってくれたんだ」
ウルルとジーナがその様子をみて話す。
「昨日ユキチカがみたって本当?学校にいたって」
シャーロットはユキチカに話をきく。
「なぜ、あの方はシャロ様を……」
その後ユキチカはキビに連絡をした。
すぐにキビが駆けつける。
「ふん、状況は分かった……体調は問題ないか?」
キビはベットで横になっているシャーロットの側に行く。
心配そうな顔で聞いて来るキビに対してシャーロットが笑顔で返す。
「大丈夫です、みんながみてくれているので。それにこの状態もジーナとウルルに言われたのでこうなっているだけ」
その晩はキビとジーナがシャーロット宅に泊まる事に。
「あいつが来たら今度は私がガツンと返り討ちにしてやるから!」
「念のため私も今晩はここにいさせて貰うよ。この周辺を部下に巡回させてるから、何かあったらこれで呼んで」
キビは連絡用の無線機をシャーロットに渡した。
「あとはユキチカの方で調査の進展があれば報告がくるだろうから、それまでゆっくり休んでて」
「わかりました」
ユキチカはシャーロットを襲った犯人についての調査を行う為に帰宅していた。
その日の夜は3人で鍋を食べる事に。
「鍋って楽だよなぁ~具材切ってダシ入れた鍋にぶち込むだけだ」
どうやらキビが鍋を用意したみたいだ、ジーナとシャーロットは席についていた。
「さぁ!出来たぞー、鶏団子鍋だ!名付けてキビ団子鍋!」
「それだと別の物に聞こえますよ。でも美味しそう、良い匂い~」
ジーナが言う通り、ふつふつとした鍋にとり団子と野菜がたっぷり入っていて、見ているだけで体が温まる旨そうな鍋だ。キビが二人の鍋をよそって渡す。
「それじゃあ頂きます!」
「頂きまーす!」
「いただきます」
三人は出来たての鍋を口に入れる。
はふっほふっと火傷しないように口の中に空気を入れながら味わう。
「ん~この鶏団子、レモン入ってますね!サッパリしてて美味しい~」
「ああ、時期になればゆずとか入れても美味いんだ。これはユキチカも好きな奴でさ、アイツ放っておくと鶏団子ばっか食っちまってさ」
「キビさんって、ユキチカのお母さん……では無いんですよね?いつ知り合ったんですか?」
ふと疑問に思ったシャーロットが質問する。
「ああ、ユキチカに出会ったのは10年くらい前だ。あ、そう言えば2人はアイツの身体って……」
キビに聞かれた二人は頷く。
「機械で出来てる、ですよね?」
「知ってます、かなり驚いたけど」
「そうか、なら良いな。アイツが身体を機械にするまではかなり危険な状態がずっと続いてたみたいでな。私が出会った頃にはもう身体は機械になってたよ」
するとキビに連絡が。
「おっとごめん、ちょっと失礼するよ」
もう少し話を聞きたい気持ちがあったものの、シャーロットはまだ完全回復しておらず寝ることにした。
(ユキチカも色々あったんだな……また今度キビさんに話聞いてみよ)
シャーロットは目を閉じる。
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