強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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2nd フェーズ 集

No.44 恐ろしい黒い忍

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ユキチカ達が【光のシャボン玉】の中にある施設に侵入する前日。

「さあ、皆のもの!いよいよ大いなる計画の決行日だ!私達はこの被支配層から脱するのだ!」

薄暗い部屋で叫ぶものがいた。

「我々【閃光の民】は明日、男がいる宮殿に総攻撃を仕掛ける!目的は当然、男の奪取!この男を使い政府と交渉する。交渉ができる程度には男は生かしておけ!」

皆は黄色とオレンジ色のタトゥーを身体にしている、それが彼女ら団体の証なのだろうか。

「今夜は大いに飲んで英気を養うぞ!」

リーダーらしき女性がそういうと、皆が酒を持って盛大に乾杯をしようとする。
しかしその時、リーダーの腰に付けている端末に連絡が入る。

「なんだ、良いところで!なに……!?」
その者は手に持っていた飲み物を落としてしまう。

「ど、どうしたんですか!?」
端末はもう通信を受信していない。

「味方の基地が何者かに襲われた。い、今、最後の生き残りも死んでしまった……」

まだ状況を理解していない様子のリーダー。

「そ、そんな、一体、なに…が……あ?」
部下の一人、その者の上半身がズルリと滑り、地面に落ちる。少し遅れて下半身が上半身の反対側に倒れる。

悲鳴があがり、それと同時に部屋の照明が消えた。

リーダーは武器を構えるがまったく敵が見えない、震えながら周囲を見渡す。

月明かりによって辛うじて分かるのは、次から次へと味方が殺されていることぐらいだ。

味方の銃声と悲鳴が瞬く間に減っていく。
ついに最後の1人となったリーダー。

「く、クソ!!政府の連中か!!」
銃を乱射する。

しかし銃が切断されてしまう。

彼女の前に現れたのは、全身黒一色の装備をつけた者だった。
まるで昔どこかで読んだコミックに出てくる忍者のようだった。

「このぉぉぉ!!」
リーダーはナイフを取り出すがその腕ごと切り落とされてしまう。

「~~~~ッッ!?!」
腕を抑えて声にならない悲鳴をあげて倒れるリーダー。

リーダーの前でしゃがみ込む黒い忍者。

「誰だ貴様は!なぜ私達の邪魔をする!!?」
立ち上がりブーツに隠していた銃を取り出し発砲する、しかし相手はそれを難なく躱してしまう。

「私達は虐げられる日々から脱却する為に!貴様は何とも思わないのか!この不条理な世界に!!世界は平等であるべきなんだッ!!」
最後の弾丸まで撃ちきってしまう。

その直後、足首に冷たい風が吹いた。
彼女はグラっと揺れる。

「な、なんだ!地面が揺れた!?」
そのまま再び倒れてしまう。

なぜ倒れてしまったのか、足に目を向ける。足首の後側から血が出ていた、アキレス腱を切断された。もうこれでは立つことは出来ない。

苦しんでいる彼女の前に再び現れた黒い忍者、そのまま目の前でしゃがむ。
そしてヘルメットの一部を押す。

「やあ、こんにちは、今日はいい天気ですね。こんな日は……」
音声が流れ始めたが、黒い忍者は途中で止める。

黒い忍者はちょっと待ってと人差し指を立てて、再びヘルメットに触れる。

「お前の仲間がいる場所を教えてください」
別の音声が流れる、内容だけでなく先ほどとは別人の声だ。

「それで私の仲間の場所を暴く気だな!そして私を殺す気だな?!そんなマヌケな死に様を晒すと思うのか!」

この言葉に対し、ヘルメットを再度押す忍者。

「私は、人を生きたまま解体する術を知っている。当然気絶なんてさせない。死よりも恐ろしい経験をしたいのか?」

色んな人の音声を繋げたような、そんなバラバラな言葉を繋げたセリフにリーダーは恐怖した。

「仲間に連絡しろ。私のことを伝えてもいい」
この時、リーダーはようやく理解した。

この音声は全て声が震えている、更にいくつか聞き覚えのある声が混ざっていることに。

「それは、我が同胞たちか!?ああ……貴様なんてことを……!!」
リーダーは涙を流し始める。

「もう……仲間はいない、ここが最大の拠点だ。先程から味方の声もしない。こんな時間に拠点内で発砲があれば味方が駆けつけるはずなのに……貴様が全て殺したんだな……。その音声にも聞き覚えがあるものが何人かいた、各拠点のリーダー達、それで全てだ。クソッ!クソッ!なんてことを!」

そう言われた忍者はヘルメットを触る。

「そうか、ならお前が最後だ」

一瞬、リーダーの顔を月明かりの反射光が照らす。
彼女の首に一筋の線が走った。

刀を鞘に戻す忍者。

「依頼完了」


拠点から出ると忍者に連絡が入る。

「お疲れ様ですキリサメ・スズメさん、お仕事終わったみたいですね」
キリサメ・スズメ、それがこの忍者の名前らしい。

そして連絡相手の声はヒメヅカだった。

「ん、ヅカ、次の依頼は」
「今終わったばかりじゃないですか。少しは休んだら如何ですか?」

ヒメヅカの言葉に首を傾げるキリサメ。

「それは依頼?報酬は?」
「はぁ、ワーカホリックもここまで来ると治療困難ですかねぇ。にしてもあの脅し方は中々恐ろしいものでしたね。私も今度使ってみようかな」

ヒメヅカの言葉に再びキリサメは首を傾けた。

「ヅカ、恐ろしいって何?」
「ふうん、難しいですね。私もそのブレーキは緩いですからね。ただ……」

一拍おいてヒメヅカが答える。

「大切な人を裏切ったり、大切な人を失うのは恐ろしいですね」
「うーん、スズメが会う相手みんな死んでる。スズメが殺してる。これが俗に言う、失うこと?」

そう答えるキリサメに対してはため息をつくヒメヅカ。

「愛は良いものですよ。私達のような者でも人生の輝かしい部分に触れられる瞬間が生まれるのです」
「人間はみんな人間、スズメの仕事相手、標的、獲物」

「みな同じに見える、ですか。まあ、そういう価値観も尊重しますよ。私も基本そうですし」

ヒメヅカはそういってあるデータを彼女の端末に送った。

「今しがた新しい依頼が入りましたよ。ここ日本です。詳しい場所は送っておくので」
ヘルメット内部に地図などの情報が映し出される。

「分かった、ヅカ」
「ではよろしくお願いします、というかそのヅカってどうにかなりませんか?せめてヒメヅカならヒメでしょうに……ってもう連絡切れてる」

ヒメヅカの後ろからリリィが現れた。

「やあ、彼女に連絡したみたいだね」

「無事完了したようです。あの政府は私達の大口取引相手、クーデーターごときで揺らつかれたら困りますからね。まあわざと戦争を起こして両方にわが社の製品を売るのもありでしょうが」

「相変わらず君の思考は刺激が強いな。そういえば施設の護衛を頼んだのだろ?」

「連中が来ますからね。さすがに彼女一人と施設だけでは心許ないかと。その分お金はかかりますが、なにせ彼女はターゲットの始末に加えて時間分も取られますからね」

ヒメヅカは額に手を当てる。

「斬殺魔、切り裂きジャックまあ色々と呼ばれているね。恐怖をしらない、けど任務遂行の道具に使う。使えるものは全て使い、視界に映る人間の区別は2つ【仕留めるべき相手】か【仕留められる相手】しかないというじゃないか」

リリィはキリサメの経歴をみてそう話す。

「まったく恐ろしいものを生み出したものだ、私達悪い大人は」



キリサメ・スズメ、当然偽名である。あらゆる所に隠されている彼女の情報もどこまで本当で、どこが偽の情報なのか、これを全て把握しているものは誰一人いない。

しかし、ただ1つ分かることがある。
そのキリサメ・スズメが、今ジーナ達の前にいることだ。


「依頼開始」
スズメはそう呟く。

「……ッ!!」
ジーナは感じ取った、強烈な殺気を。

(この相手はマズイッ!)

そう思ってからジーナの行動は早かった。
ポケットから小さな筒を取り出す。

その筒からは一気に大量の煙が放たれ、たちまちその空間を真っ白に変える。

シャーロットを立たせる。

「シャロ!走るよ!ほら行って!」
「え、う、うん!」

そしてキビとコウノを担いでジーナは走り出した。

「ん、この煙、俗に言う、鬱陶しい?」

今キリサメが標的を定め、ゆっくりと歩き始める。

通路を過ぎて広い場所に出るジーナ達、まずは物陰に隠れた。

「はぁ、はぁ、なんとか隠れる場所があった。シャロ、まずは二人を!」
ジーナがそう言った瞬間。

バチンっと部屋の電気が消えてしまう。

「しまった!」

そこは地下、照明が無くなればもう光源はない、いま唯一の明かりはジーナ達のバリア装置が発している光だけだ。

彼女達の発する眩い光が、暗闇の中にくっきりと浮かび上がってしまう。
隠れる事は出来ない。

キリサメはヘルメットを押した。

「今から、狩る、よ」

バラバラの音声が暗闇に不気味に響く。
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