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2nd フェーズ 集
No.46 暗闇に響く不気味な声
しおりを挟む暗殺者キリサメからの襲撃を受けたジーナ達。
それによってキビとコウノは負傷し、更に二人の装置は破壊されてしまう。そんな中で彼女達は物陰に隠れていた。
すると部屋の明かりが突然消える。
(しまった、これじゃあ装置の光で私達の場所すぐバレるじゃん!)
暗闇を照らすのは彼女たちが装着している装置の光、そして非常灯。
しかしその非常灯も一つ、また一つと消えていく。
キリサメが壊しているのだ。
「今から、狩る、よ」
様々な人の声を繋ぎ合わせた不気味な音声が、その真っ暗闇の空間に響き渡る。
「まずは守らないと!」
ジーナは周囲に何か無いか探す。
「このテーブルは使えるかな」
「いや、流石にこれは大きすぎるんじゃないかな。中に色々入ってるからそれも出さないと重たすぎるよ。こっちのテーブルは?組み立て式のやつ、これなら足畳んで運べるよ!」
シャーロットも手伝って何か盾に出来そうなものを見つける。
「よし、シャロ、ロープない?」
「あるよ、コロちゃん」
コロちゃんがロープを出した。
ロープで複数のテーブルを繋げて身も守る盾を作るジーナ。
それを同じく周囲にあった台車に乗せる。
「とにかく今は守って時間を稼がないと、じゃあ壁沿いに進もう」
ジーナは盾を構えて、シャーロットと背中合わせの状態になる。
「私達も……動くくらいはしないとな」
「ええ」
キビとコウノが立ち上がる。
「ごめんなさい、私ひとりじゃ二人を運べなくて」
「気にすんな、君は私達の装置を直すっていう大事な仕事があるだろ」
キビがそう言ってシャーロットの頭を撫でる。
すると盾にいくつもの飛来物が衝突した衝撃が走る。
「っぐ!来たか、皆!そのまま先に進むよ!」
ジーナ達は一方向を先ほど作成した盾で守り、その上で壁沿いを歩いていた。
壁側からは当然攻撃はこない、そして盾の方からの攻撃も防ぐことが出来る。
あとは正面にだけ意識を向けておけばよい状態を作った。
「私達ってどれくらいの間大丈夫か、シャーロットちゃん分かる?」
「うん、恐らく数分は問題ないはず。でも二人は怪我してるから装置だけでも治さないと。ここに満ちてるエネルギーのせいか、さっきから全然……」
キビに質問されたシャーロットは彼女達の傷口をみてそう話す。
「ああ、血が全然止まらないな。止血するために抑えてんのにまったくだ」
「血行がよくなって、こんなに嫌な気分になるなんて思いもしませんでしたよ」
コウノが冗談まじりにそう言う。
「はっはっは、おいやめろよ。笑うと傷口が開いちまうだろ」
「すみません、ちょっと先輩の真似したくなっただけです」
二人は気丈に振舞ってはいるが、血は止まらない、一刻も早く手を打たないとならない状況な事には変わりなかった。
それを聞いてジーナは質問した。
「シャロ、二人の装置直せそう?」
シャーロットは二人の装置に目を向けて頷く。
「直せる、二人は別々のパーツが壊されてるから、互いのを合わせればなんとかなる。でもこの状況だと」
「そうだよね、修理に集中できないよね」
ジーナはそう言うとシャロの肩に乗っていたコロちゃんに目を向ける。
「そうだ、シャロ、コロちゃんって今いくつ連れてるの?」
「1つだけ、そうだ!コロちゃんに相手を探させれば!暗闇でもコロちゃんには関係ないし、相手を見つけて電撃を打てば!」
ジーナとシャーロットがそう話すとコウノが話に入って来た。
「確かにその手も良いですが。相手の装備は、一瞬しか見えませんでしたが、かなり特殊なものにみえました。もし電撃に耐性があったら、また振り出しに戻ってしまいます。ちょっとシャーロットさん、お耳貸していただけますか」
そう言ってコウノはシャーロットに耳打ちをした。
「確かに!やってみる、コロちゃん!」
シャーロットがそう言うとコロちゃんが暗闇の中に駆け出して行った。
その後もなんどか攻撃が飛んできた。壁で守れてはいるが相手からこの彼女達の位置は完全にバレているようだ。
「相手がまだ攻め込んでこないから良いけど。でもどうして襲ってこないんだろ。場所は分かってるはずなのに……」
「恐らく待っているんだろう。獲物を狩る確実なタイミングを。2流ならここで踏み込んで来る。だが相手はそれをしない、嫌に冷静な奴だ、一番やりづらい相手だ」
キビがジーナの疑問に答えた。
それを聞いたジーナは、キリサメがキビとコウノを襲ったときのことを思い出す。
(あの一瞬でこの二人をここまで追い込むなんて。それにさっき感じた殺気……あの時と同じ感じがした。まるで身体が焼き焦げるような熱と背筋が凍る感覚)
ジーナの脳内にはオニツノが浮かんだ。
すると次の瞬間、あの時感じた強烈な熱と悪寒が走った。
彼女はとっさに体を逸らす。
直後、刃が盾を貫通してジーナの脇腹をかすめた。
「ッ!!」
刃はすぐに抜き出される。
音もなく起きたこの出来事。
ジーナの後ろにいる三人は気付くまで時間がかかった。
「大丈夫!?ジーナ!」
「うん、かすっただけ。きっとこれもこの状態を崩す為にやったんだと思う。キビさんの言う通りです。相手はまだ攻め切ろうとしてこない、冷静だ、でも同時にまだ逆転されるかもって考えてる証拠でもある。相手は1人、武器はナイフと刀、確実にこちらを仕留めるには近づかないといけない。でも相手はまだ警戒していて……」
話しているとジーナは自分の発言内容に引っかかる。
「あれ?なんでそんなに近づく事を警戒してるんだろう。相手から見たら警官二人に学生二人。ここに侵入した時点で普通じゃないと認識されてても、刀やナイフを持った自分に近づかれてどうこうできるとは思わなくないですか?」
それを聞いたシャーロットやキビが頷く。
「確かに……」
「じゃあ奴が近づいて来る時は、こっちの状況がかなりヤバイ時って事だな」
「このままじゃ、ジリ貧。今の私達に相手を遠距離から見つけて叩く手段はない。そこで考えたんだけど……」
何かを思いついたジーナは3人に話しかけた。
「私達は別にいいが、君の負担がデカすぎないか」
「そうですよ。この作戦だと少なくとも私達二人はジーナさんの援護が一切できません。余りにも無茶ですよ!」
「大丈夫です。なんとかしてみますから」
止めようとする二人にジーナはそう返す。
(多少の無理は承知でいかないと、この状況を脱する事はできない!)
キリサメは暗闇の中を一切迷うことなく、ゆっくりと標的へと近づいていた。
既に部屋の非常灯は全て破壊している。唯一の明かりは、ジーナとシャーロットが身につけている装置が発する光だけだ。
(ん?動きが止まった、この血の匂い、もう動けない)
そう考えたキリサメは一気にジーナたちの盾に近づく。
(何か作業してる?機械をいじる音がする)
闇を進むキリサメは盾を飛び越える。
飛び越えるとシャーロットがいた。
彼女は装置の修理を行っているようだ。
目標に狙いを定めるキリサメ。
(いつスズメに襲われてもおかしくないのに、ここまで集中して作業ができるの?)
迫るキリサメに全くシャーロットは目を向けない。
不思議に思い一瞬止まるキリサメ、そんな彼女の背後からジーナが現れた。
彼女は装置を外し、闇に紛れていたのだ。
「に、げ、ない、のか?」
シャーロットに顔を向けヘルメットから音声を出すキリサメ。
(やっぱり来た!)
背後から近づき、相手の背中めがけて左拳を放つジーナ。
しかし拳は空を切った。
「グッ!!なんで……?」
気付いた時には既に、ジーナの左肩にナイフが刺さっていた。
背後からの攻撃に対し、キリサメは後方に大きく飛び上がり躱した。ナイフはその時投擲したのだ。
「あ、ま、い」
キリサメの不気味な音声がそう告げる。
暗闇の死闘はまだ続く。
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